ケータイメールは死ぬのか:神尾寿の時事日想(2/3 ページ)
かつて「メアド教えて」と言われたら、教えるのはiモードに代表されるケータイメールだった。しかし今や携帯電話メッセージの主役はLINEに取って代わられている。2013年の1月、ある象徴的な出来事があったのだ。
パーソナルコミュニケーションの王座に座るLINE
キャリアメールが凋落する中で、それに取って代わるコミュニケーションサービスとなったのが「LINE」である。
LINEは2011年6月に登場したメッセンジャーサービスだ。スマートフォン/ケータイ/PCと端末を選ばず使え、LINEユーザー同士であれば通信キャリアに縛られることなく無料で音声通話をしたり、メッセージ交換ができる。
LINEの「トーク」画面。LINEはスマートフォンのタッチパネル環境に最適化し、スタンプや写真を組み合わせて簡単にリアルタイム性の高いコミュニケーションが取れるようになっている。LINEに慣れるとメッセージはどんどん短くなり、スタンプの組み合わせで会話ができるようになってくる。これは"文章の飾り"としての用途が多かったキャリアメールの絵文字文化を、スマートフォン時代にあわせてさらに進化・発展させたものだ
LINEの最大の特徴といえるのが、スマートフォンに最適化されたUI(ユーザーインタフェース)とサービスのデザインだろう。LINEは初期からスマートフォンでの利用を前提にデザインされており、小気味よくサクサクと動く動作速度の速さ、タッチパネルでの使いやすさにこだわったシンプルな操作体系、そしてキャリアメールの絵文字やデコメに代わる「スタンプ」機能など、"スマートフォンで使いやすいコミュニケーションサービス"であるための工夫が随所に凝らされていた。これらの点が評価され、サービス開始からわずか2年で全世界のユーザー数が1億3000万人を突破している(2013年4月時点)。
とりわけ日本では、LINEにとって"追い風"が吹いた。
まず、NTTドコモのスマートフォン向けキャリアメールサービスである「spモードメール」の使い勝手が、著しく悪かったこと。周知のとおりドコモは国内最大手のキャリアであり、5000万人以上のキャリアメールユーザーを抱えているのだが、そのスマートフォン版アプリ/サービスが、あまりにも稚拙でひどいものだったのだ。
ドコモは従来のiモードメール(ケータイ向けキャリアメール)で提供されていた機能を移植する形でspモードメールを設計したのだが、その際に徹底した「スマートフォンへの最適化」を行わなかった。その結果、spモードメールはスマートフォンのタッチパネルで使うには操作が複雑で使いにくく、動作速度は遅く、デザイン性も最悪という三重苦を抱えることになった。これまでケータイでiモードメールを使っていたように、サクサクと気軽に使えないものだったのだ。結果として、spモードメールよりも快適かつ気軽に使えるLINEへ、ユーザーが流れる原因を作ってしまった。
そして、もう一つの追い風が「MNP」(番号ポータビリティ、携帯電話の番号をそのままで異なるキャリアに移行できる)だ。スマートフォン時代になってキャリア間の販売競争が激しくなり、ケータイからスマートフォンへの買い換えを機に、利用するキャリアを変えるユーザーが急増した。
これまでのケータイ(フィーチャーフォン)の時代は、MNPを利用する際には「電話番号は変わらないが、キャリアメールのアドレスは変わってしまう」ことがユーザーにとっての面倒だったのだが、LINEの登場でその状況が一気に変わったのだ。なぜなら、LINEでは「自分の電話番号」でユーザー認証をしており、友達同士の登録も「電話番号」もしくは独自の「LINE ID」で行う。キャリアメールのように「キャリアを変えたらメールアドレスが変わる」ということがないので、MNPでキャリア変更をしても連絡が途切れることはない。
キャリア同士がMNPの販売競争で乗り換えを促した結果、どのキャリアを使っていても連絡先が変わらないLINEの存在感が増し、一方でメールアドレスが変わってしまうキャリアメールの利用が減ってしまったのだ。若い世代を中心に、MNPを機にキャリアメールを捨てて「LINEばかり使うようになった」という層が増えているのである。
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