iPhone導入の布石か?――ドコモ「ツートップ戦略」の効能と課題:神尾寿の時事日想(1/3 ページ)
最新の2013年の夏モデルから販売方針を大きく転換したNTTドコモ。すべてのモデルを公平に、“護送船団”形式で売ってきた同社が初めて、ソニー・サムスンの2社を特別扱いしている。その先に見えるのは2年以内の「ドコモ版iPhone」ではないかと筆者は指摘する。
「これがドコモのツートップ」
5月15日の新商品発表会で、NTTドコモの加藤薫社長は、そう強調しながら右手で「2」を作った。まるで「ビクトリー (勝利)」のVサインのように。
スマートフォンの普及が進み、購入ユーザー層がこれまでのハイエンド層から一般ユーザー層に変化する中、最大手のNTTドコモが打ち出した販売戦略により国内スマートフォン市場に波紋が広がっている。ドコモのツートップ戦略とは何か。そして、どのような影響を及ぼすのだろうか。
大量調達と重点的な広告宣伝で、売りやすい環境を構築
既報のとおり、NTTドコモがこの夏商戦に投入した「ツートップ戦略」は、同社の端末販売戦略を抜本から変えるものだ(参照リンク)。
ドコモはこれまでメーカー / モデルごとに大きな差を付けないことを良しとしてきた。“結果的に”その時々によってヒットモデルが生まれ、商戦期ごとにメーカーの勝ち組・負け組が分かれることはあっても、建前としてはすべてのメーカーを公平に扱い、商品ラインアップ全体が「護送船団」を組むように配慮した販売戦略をとってきたのだ。
しかし、今回は違う。ドコモがこの夏商戦に掲げた「ツートップ」の販売戦略では、特定メーカーの特定のモデルを優遇する方針に転換した。今期ツートップに選ばれたのは、ソニーモバイルコミュニケーションズ製の「Xperia A SO-04E」とサムスン電子製の「GALAXY S4 SC-04E」。両モデルは新商品発表会で加藤社長自らツートップと評して大々的にPRしたほか、この2機種だけに適用される様々な特別割引が設定される。ドコモを挙げて販売を後押しするのである。
端末の調達規模もケタ違いに大きい。日本の携帯電話 / スマートフォン業界では、通信キャリアがメーカーから端末を仕入れて(調達)、ユーザーに販売する方式が主流だ。この際にメーカーの業績を左右するのが、「キャリアがどれだけの調達を行うか」である。
複数の関係者によると、今回ツートップに選ばれたGALAXY S4 SC-04EとXperia A SO-04Eに対し、ドコモは100万台前後の調達を行う方針だ。少なくともツートップのうち1機種は、100万台以上の調達になる模様である。一般的には「100万台が売れれば大ヒット」の国内市場において、すでにこれだけの規模の調達が計画されているのは破格のことだ。しかも、年間を通じて最もスマートフォンが売れる春商戦ではなく、夏商戦のモデルでこれほど大規模な調達を行うのは異例である。
特別扱いは広告宣伝やマーケティング、販売の現場でも行われる。前出の加藤薫社長が「どのスマホを買うか決めかねているユーザーにおすすめできるのがこの2機種」と話すとおり、ドコモは大量調達したこの2機種を大々的にプロモーションし、イチオシ製品としてユーザーに勧める。販売価格も安く設定しているため、店頭でも「薦めやすく、売りやすい環境が整っている」のだ。
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