iPhone導入の布石か?――ドコモ「ツートップ戦略」の効能と課題:神尾寿の時事日想(3/3 ページ)
最新の2013年の夏モデルから販売方針を大きく転換したNTTドコモ。すべてのモデルを公平に、“護送船団”形式で売ってきた同社が初めて、ソニー・サムスンの2社を特別扱いしている。その先に見えるのは2年以内の「ドコモ版iPhone」ではないかと筆者は指摘する。
ドコモの「ツートップ戦略」は、iPhone導入の下地にもなりうる
ドコモは今回のツートップを販売戦略の大きな転機と位置づけており、MNPによる顧客流出を止めるための切り札としている。とりわけドコモの顧客流出の原因になっている“iPhone 5対抗”という意味合いが強い。最初のツートップに、グローバル市場でのAppleのライバルであるサムスンと、国内市場ではAppleに比肩するブランド力を持つソニーを持ってきたのもそのためだろう。ツートップ戦略が、まずはiPhone 5に対抗するための措置であることは間違いない。
その一方で、今回のツートップ戦略は、ドコモがiPhoneを受け入れるための下地にもなる。
Appleは、iPhoneの取り扱いキャリアに対して、「iPhoneを他社製スマートフォンよりも優遇して販売すること」を前提条件としていることで知られる。Appleのブランド力を最大化するために、あらゆる場面で“特別扱い”を求めているのだ。
これまでのドコモであれば、すべてのメーカーを公平に扱うことが建前だったため、この「iPhoneを優遇すること」は受け入れにくい条件であった。だが、今回のツートップ戦略で、ドコモが推すメーカー / モデルは、大手を振って広告宣伝から販売価格まで特別扱いで優遇することができるようになった。そのため近い将来、ドコモがiPhoneを導入することになった時に、今回のツートップ戦略を前例にしてAppleを優遇することが可能になったという見方もできるのだ。
ドコモがiPhoneをいつ取り扱うのか。
筆者は千里眼ではないので、その正確な時期は分からない。しかし今回のツートップ戦略の導入を始め、ドコモがiPhoneを取り扱うためのハードルは、次第に低くなってきている。他方でApple側にとっても、ドコモの持つシェアの価値が相対的に上がってきているのは確かだ。2年以内に「その日」が来る可能性は、これまでよりも飛躍的に高まっていると筆者は予想している。
月々サポートの割引を最大限受けるためには、24カ月間、同一の機種を使い続ける必要がある。ドコモ版iPhoneを待っているユーザーにとっては、悩ましい状況になってきていると言えそうだ。
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