内閣府調査に見る青少年のスマートフォン利用(1):小寺信良「ケータイの力学」
内閣府が発表した平成25年度の青少年ネット利用実態調査。中高生のスマホ利用率が年々高くなっているが、小学生では子供向け端末の利用が広がり、その有用性が広がりつつあるようだ。
今年もまた、内閣府による「青少年のインターネット利用環境実態調査」の平成25年度版が発表された。昨年度の結果なので、今年の現状はさらに傾向が加速している可能性は十分あるのだが、毎年毎年定点観測的に子供のネット利用傾向を俯瞰していくことは重要であろう。
調査としては、携帯電話とスマートフォン、ゲーム機・タブレット・音楽プレーヤー、PCの利用実態と、保護者の意識調査から成っている。今回はこの中でスマートフォンと、ゲーム機その他のネットデバイスに関する項目を取り上げてみる。
まず携帯電話・スマートフォンの所有状況だが、全体の所持率としては、高校生が97%前後でほぼ飽和状態、中学生がざっくり50%程度という傾向は、ここ数年変わっていない。今回の調査で明らかになったのは、小学生の所持増加だ。平成23年度から24年度でおよそ7ポイント、25年でさらにおよそ9ポイント増加と、伸びが顕著である。
その内訳を見ていくと、前年は半分程度しかなかった高校生のスマホ率は、すでに8割を超えている。ほぼ成人の所有比率に匹敵するか、それ以上の普及を見せていることが分かる。中学生も、子ども向けスマートフォンまで含めるとほぼ5割に達している。
そもそも各キャリアの新モデルに携帯電話(フィーチャーフォン)のラインアップがほぼないことを考えれば、新規購入や以前から持たせていたケータイの買い換え時期を迎えると、もうスマートフォンにならざるを得ないという状況が見えてくる。
小学生では、平成24年度に初めてスマートフォンの所持が観察されたが、現状はそこからさらに普及が進みつつある。しかしその一方で、子供向け携帯電話の利用も非常に盛んで、衰える傾向は見られないところから、小学生ではむしろまだそれが主流であり、ようやくその有用性が認知されてきたとも言える。
またスマートフォンの無線LAN利用状況としては、中高生は利用率が拮抗しており、スマホユーザーである限り、もう半分以上は無線LANも使うということだろう。
ただこの調査では、無線LANの利用を「家庭やお店等」とひとまとめにしている。ここは家庭内無線LANのフィルタリングや、家庭内での指導状況もあるはずで、一概に無線LANの利用を問題視はできない。ここは家庭内外の利用に分けた調査が必要だろう。
一方で注目しておくべきは、ゲーム機やタブレット、音楽プレーヤーでのネット利用である。調査結果を見ると、いずれかの機器を所有しているのは、小・中・高校生ともに8割を超えている。内訳としてはゲーム機が最多で、タブレットは低調、音楽プレイヤーは、音楽に興味を持つ中学生ぐらいから急に増加という傾向が見られる。
ゲーム機は、保護者側もあまり用心せずに買い与えている面もあり、小学生の所持率は高い。その中でインターネットの利用率はやはり小学生がかなり大きく伸ばしており、中学生を抜いている。ただ、ニンテンドー3DSなどの利用を見ていると、どの程度をインターネット利用と見なすのか、幅があるように思う。
例えばすれ違い通信や同一ゲーム内のアドホック通信程度でも、本人的にはネットを使っているという感覚かもしれないし、親がパスワードで保護していて、許可を得てオンラインストアでゲームを買ったことがあるというケースも入っているかもしれない。小学生がネット利用で高いのは、そのあたりの区別が曖昧だからという可能性も否定できない。
一方タブレットはそこそこの価格であるので、子供が自分で買うという可能性は低い。おそらく保護者が買い与えたか、うちもそうだが親のお古のタブレットを子供用にするというケースも多いのではないだろうか。
ただ昨今は学習塾や通信教育で、タブレットの導入が盛んに行なわれている。一部自治体では、学校へ全面導入という動きも見られる。それも今年度の調査結果に反映されてくるだろうから、来年公開の調査結果では、このあたりが大きく変わってくるかもしれない。
小寺信良
映像系エンジニア/アナリスト。テレビ番組の編集者としてバラエティ、報道、コマーシャルなどを手がけたのち、CGアーティストとして独立。そのユニークな文章と鋭いツッコミが人気を博し、さまざまな媒体で執筆活動を行っている。最新著作は、ITmedia Mobileでの連載「ケータイの力学」と、「もっとグッドタイムス」掲載のインタビュー記事を再構成して加筆・修正を行ない、注釈・資料を追加した「子供がケータイを持ってはいけないか?」(ポット出版)(amazon.co.jpで購入)。
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