複雑過ぎるスマホ「実質0円」 問題点をあらためて考える(3/3 ページ)
総務省のやり玉に挙げられている「実質0円販売」の仕組みを解説。
総務省は実質0円に「値上げ」で対処
なるほど、確かに実質0円というのはそんなに安くないし複雑で面倒くさい、これで契約したくはない、というのが消費者として当然考えるところ。総務省の「スマートフォンの端末購入補助の適正化」はここを改善してくれるのだろう、と総務省で検討が始まった当時私は期待していたのだが、ふたを開けてみればその指導内容は「割引額を減らして、実質0円を潜らない価格設定にしなさい」という事実上の値上げだった。
総務省は、「公平性の観点」や「MVNOの新規参入の阻害」を理由に高額な割引をやめなさいとキャリアに要請しているが、一方でこのガイドラインの趣旨である「利用者にとって現在の契約形態の正確な理解が困難」という問題点に対し、現在までに有効なアプローチは見受けられない。
このガイドラインは、廉価端末や発売から時間がたった端末の在庫処分に関しては値引きを許してはいるものの、基本的な方針として一括0円はもちろん実質0円も認めないものとしている。
確かに、値上げをすることで実質2万円や実質3万円といった表記に変わり、実質「0円」ではなくなっている。しかし、そもそも「実質」という表記自体をなくさなければこの複雑さは改善されまい。また、「公平性の観点」から長期利用者向けの割引も新設されたが、消費者側からすればこれもまた契約形態がややこしくなったという印象のほうが大きい。
値段は上がる、複雑さは変わらない(あるいはもっと複雑に)、という現状に不満を持つ消費者は私だけではないだろう。このガイドラインの本来の目的であるはずの「利用者の料金負担の軽減」と、実質0円など正確な理解が困難な契約形態の解決を迅速に実現してほしいと願うばかりだ。
関連記事
総務省の「ガイドライン」がもたらした混乱――スマホの購入補助はどこまで許されるのか
スマートフォンの価格をめぐる、総務省とキャリアの駆け引きが激化している。総務省は3月25日にスマートフォンの販売を適正化する「ガイドライン」を策定。これを受け、大手キャリア3社がキャンペーンを見直す事態となったが、その基準は曖昧だ。総務省が3キャリアに行政指導――“不適正な端末購入補助”で
総務省が、ドコモ、KDDI、ソフトバンクに対して行政指導を行った。同省が3月25日に発表したガイドラインに反して、不適正な端末購入補助を行っていたという。3キャリアで何が起きていたのか。「運用が徹底されていなかった」――KDDI田中社長、総務省の行政指導にコメント
総務省が、「スマートフォンの端末購入補助の適正化に関するガイドライン」に違反したとして3キャリアを行政指導。KDDIはクーポンを減額することでこれに対応。冬モデルについて、田中社長は11月に追加の発表があることを予告した。総務省「料金値下げタスクフォース」が終盤に突入 ――有識者会議は、いったい何が「有識」なのか
総務省の「携帯電話の料金その他の提供条件に関するタスクフォース」の第4回会合が行われた。気になるのは、「有識者」の通信環境に対する認識だ。総務省で「実質ゼロ円」「SIMロック解除」を睨んだ有識者会議スタート――標的になりつつあるソフトバンクが空気を読んで改善策を発表
総務省が、2015年に実施した「タスクフォース」をフォローアップする会合を実施することになった。その第1回会合では、NTTドコモ・KDDI・ソフトバンクから現状報告と要望がプレゼンされたのだが、その中でもソフトバンクの提案がまともに映った。総務省が3キャリアに「不適正な端末販売補助」で行政指導――「クレカ高額決済者優遇」までやり玉に挙げる総務省の理不尽さ
10月7日、総務省が大手キャリアに対し端末価格に関する行政指導を行った。内容を精査すると、その妥当性には疑問を持たざるを得ない。この指導は、果たして消費者のためになるのだろうか。一括648円の驚安スマホ「MONO」は買いなのか?
購入サポートを付けると一括648円という驚きの安さを実現したドコモの「MONO MO-01J」。安いだけでなく品質や性能にもこだわったという。実際の使い心地をチェックした。他社から横やりが入り、NTTドコモが「実質0円」を断念――今後は毎月1円払いの「実質24円」が主流になるか
当初、FOMAからの契約変更時に「実質0円」になる予定だったドコモのiPhone SE。ところが、他社からの横やりで総務省が動き、わずか3日で撤回した。総務省のキャリアへの“にらみ”は、果たしてユーザーのためになるのだろうか。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.