中国Gioneeの新スマホ8機種 全モデルのディスプレイが18:9の理由:山根康宏の中国携帯最新事情
アスペクト比が18:9のワイドディスプレイを採用するスマートフォンが増えている。中国のGionee(ジオニー)は11月に2018年向けの新製品を大量に発表。全てのモデルが18:9のアスペクト比を持つディスプレイを採用している。
iPhone XやGalaxy Note8、そしてHuawei Mate 10 Proなど縦長のワイド画面を採用するスマートフォンが増えている。中国のGionee(ジオニー)は11月に2018年向けの新製品を大量に発表。全てのモデルが18:9のアスペクト比を持つディスプレイを採用した。
8機種の新製品を一気に発表
中国の中堅メーカーであるGionee(ジオニー、深セン市金立通信設備)は2017年11月26日に深センで新製品発表会を行った。発表会は中国向けに行われたものの、インドなど新興国を中心とした関係者やメディアも招待され、グローバルモデルの発表も行われた。しかし今回は1製品の発表ではない。中国向けに6機種、グローバルは8機種と大量の新製品が紹介されたのだ。さらにはこの全製品がアスペクト比18:9のワイドディスプレイを搭載する。
発表会でGioneeの劉立榮取締役は「ワイドディスプレイの採用は業界のトレンド」であり、Gioneeは他社に先駆けて積極的に採用していくと説明した。18:9のディスプレイはゲームの利用やコンテンツ閲覧にも優位であり、ユーザーにもメリットが大きい。ユーザーニーズをいち早く取り入れることがGioneeの製品開発戦略の基本概念であり、今回はイン、アウトのどちらもデュアルカメラを採用した4カメラモデルもラインアップに加えている。今回はシリーズモデルを全て18:9にしているが、これは「業界でも最初」と劉立榮氏は力説した。
今回の新製品で一番の目玉は4つのカメラを搭載し、高品質な本体仕上げとした「S11S」だ。4つのカメラ搭載モデルは5月に「S10」を発表しており、そちらのマイナーチェンジモデルとなる。カメラはアウトが1600万画素+800万画素、インが2000万画素+800万画素。セルフィーを重視した設計だが、このカメラスペックはS10と同じだ。
ディスプレイが18:9となったことで、本体サイズは72.6(幅)×155.8(高さ)×7(奥行き)mmと、S10(16:9)の76.8(幅)155(高さ)×7.4(奥行き)mmよりもスリムになった。ディスプレイサイズは6.01型で、S10の5.5型より大型化した。実際に手にすると、S11Sは片手でも十分に持ちやすい。
しかし4カメラはHuaweiが「Mate 10 lite」でも導入するなど、中国の他メーカーも採用を始めている。S10を出した5月は珍しかった4カメラも、今では差別化要素になりにくい。そこでGioneeはS11Sの本体素材を変更し、背面はガラス仕上げ、側面はメタルフレームという高級感あふれる製品に仕上げている。中国の消費者が好みそうなゴールドの本体カラーも、ガラスパネルに覆われると美しく光り輝く。
この質感と4つのカメラを武器に、S11Sは3299元(約5万6200円)という高めの価格が設定された。中国のスマートフォンは1000元以下の低価格機、1999元以下の普及モデル、2999元以下の高性能機がよく売れている。逆に3000元を超える製品は性能、品質、ブランド力がなければなかなか売れない。中国で今勢いのあるOPPOの最新モデル「R11s」が3299元ながらヒット商品になっているのは、これら3つがそろっているからだ。
GioneeのS11Sは製品そのものの仕上げを価格相応とし、高性能なカメラを搭載することで、高価格帯の製品に仕上げたというわけだ。そしてこのS11Sの下には普及価格帯モデル、1799元(約3万600円)のS11も投入される。本体のデザインはS11Sとほぼ変わらないが、本体素材は樹脂製であり同じゴールドカラーでも輝き具合は大きく異なる。カメラもアウト1600万画素+500万画素、インカメラも同様に1600万画素+500万画素でS11Sよりも劣る。プロセッサもS11SがMediatekのHelio P30に対し、S11はP23だ。
他の多くのメーカーは標準サイズと大型サイズの2つのモデルを展開しているが、Gioneeはその路線ではなく本体の品質とカメラ性能で製品を作り分けた。同じデザインで複数のモデルを展開した方が、ワイドディスプレイを搭載して生まれ変わったS11シリーズを消費者に認知してもらいやすいと判断したのだろう。そしてS11シリーズの売れ行きを見ながら今後大画面モデルが追加されるかもしれない。
今回の新製品のもう1つの柱がビジネスユーザーをターゲットにした「M7 Plus」だ。こちらは既に発売中の「M7」のアップグレードモデルという位置付けで、Plusの名称はサイズアップではなく本体質感を高級化させたという意味合いだ。革張りかつ一部に21金を採用。しかも本体内部にはセキュリティ専用のチップを2つ搭載している。ディスプレイサイズも6.43型と大型だ。
中国の調査機関である第一手機界研究院が2017年11月16日に発表したデータによると、中国の端末出荷台数でGioneeは6位にランク付けされた。1位がHuawei、2位がOPPO、3位がVivo、4位がApple、5位がSamsungだった。一時は勢いのあったXiaomiは6位でGioneeに抜かれている。各社の競争が激しい中国国内市場で生き残りを図るためには、今回のように思い切った製品ポートフォリオの入れ替えは必須なのである。
Gioneeは中国から新興国へと販路を広げているが、今後S11SやM7 Plusのように性能だけではなく品質も高い製品を送り出していけば、いずれ先進国への製品展開の道も開くだろう。2018年2月にバルセロナで開催されるMWC 2018など、国際展示会でGioneeがどのような動きをするか注目したい。
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