変わったようで変わっていない? 懐かしの料金プランを振り返る(2/2 ページ)
総務省が2015年末から是正に身を乗り出している携帯料金プラン。実は、それと似たプランが10年前にもあったことを覚えていますか?
高い本体代金に戸惑うユーザーを「救済するプラン」登場
しかし、それまでの購入方法と全く違う分離プランに、多くのユーザーは戸惑いました。
電話番号やメールアドレスは買い替えたら連絡をすればいい、いわゆる「アド変」のメールを一斉に送る文化が当たり前になっている背景もありました。そのため、解約新規で買い換えることに抵抗のないユーザーが多く、最新機種への買い替えは解約新規なら1円から1万円ほど、機種変更でも3万円に慣れていたユーザーからの反発はかなりのものでした。
そこで、分離プランとは別に用意されたのが「端末代金を割り引く代わりに、一定の利用期間を設けるプラン」でした。
これをNTTドコモでは「ベーシックコース」、auでは「フルサポートコース」と呼んでいました。ソフトバンクはボーダフォンを買収し参入した直後であり、サービスイン当初から今でこそ当たり前となった「実質0円」を掲げた分離プランのローンチに成功していましたので、ここでは特に触れません。
NTTドコモのベーシックプラン、auのフルサポートコースは
- 月額料金は従来の金額
- 本体代金から一定の金額を割り引く
- 2年間の継続利用が条件だが、途中で機種変更や解約を行うと解除料が発生する
という仕組みでした。
例えば、ハイエンドな5万円前後の機種を購入した場合は、分離プラン以前の3万円程度で機種変更が可能でした。新規契約の場合にローエンド~ミドルレンジの機種や型落ちの機種であれば、1万円前後、中にはお店独自のキャンペーンで今まで通り1円や0円といった金額で購入できたため、分離プランに反発するユーザーの受け皿として機能していたのです。
乗り換えや新規の優遇に「解除料」設けたプラン 今でも
冒頭でも触れたように、飽和した国内の携帯電話市場でユーザーを他社から奪うために「高額なキャッシュバック」や「本体代金の大幅値引き」が行われ、それを是正する動きが2016年に活発化したことは記憶に新しいでしょう。
是正される前は「最新機種が一括0円。月々も2年間2000円。パケットも使い放題」のようなうたい文句で、同じ会社・同じ機種を使い続けるユーザーの半額以下の月額で利用できるため、乗り換えをしないユーザーからは不公平だという声が上がりました。
その結果として是正が活発になったわけですが、是正後も「乗り換えのユーザーを優遇する」仕組みとして、本体代金を大幅に値引くキャンペーンが台頭しています。
NTTドコモであれば「端末購入サポート」、auであれば「au購入サポート」、ソフトバンクであれば「一括購入割引」と呼ばれるそれらキャンペーンは、本体代金こそ一括で安価に購入できますが、月額料金への割引は適用されず、月額料金は既存ユーザーと比べて大幅に安くなることはありません。
同時に、これらのキャンペーンを適用して本体を安価に購入した場合、一定期間、機種変更や解約、指定料金プラン以外へ変更を行うと解除料が発生するようになっています。
10年前に登場した「ベーシックコース」「フルサポートコース」といった“救済プラン”は、ユーザーが徐々に分離プランに慣れたことで廃れ、受付もだいぶ前に終了したはずでした。それなのに、現在も似た仕組みで「端末購入サポート」などが行われていることは、携帯電話業界を見ていく上で1つの“視点”になるのではないでしょうか。
最近は大手携帯電話会社だけでなくMVNOという選択肢もあり、今まで使っていた機種をそのままに月額料金を安くできるようにもなりました。SIMフリースマートフォンの存在も認知され選択肢に加わったことで、今後は「携帯電話会社を変えるのに、本体を買わなければならない」という従来の仕組みの重要性が薄れていくかもしれません。
せっかくキャリアを変えるのだから、新しい機種に併せて買い替えたいという需要も存在する中で、時代を繰り返すようなプランやキャンペーンが、また5年後、10年後にも出てくるのか。筆者としては興味の尽きない、読者の皆さまにも是非チェックして欲しいポイントです。
関連記事
番号ポータビリティ開始──携帯3社の代表、量販店で火花散らす
10月24日より始まった番号ポータビリティ。東京・千代田区の大手量販店に携帯3社の代表らが集結し、健闘をたたえあうとともに互いを牽制した。──ただし、会場では“予想GUY”も乱入し、笑いをとる一面も。月々安いか、購入時安いか──KDDI、新料金・携帯購入制度「au買い方セレクト」開始
KDDIはau携帯向けの新たな料金・携帯購入方法を11月12日に導入。ユーザーは、同社が購入金額の一部を負担する代わりに月額利用料金がやや高い“フルサポートコース”、月々の利用料金を抑える代わりに購入時の金額補填がない“シンプルコース”の2種類から選択できるようになる。ドコモ、選べる購入制度を発表――月々安い「バリューコース」、買うとき安い「ベーシックコース」
NTTドコモは、携帯電話の新たな販売方法として「バリューコース」と「ベーシックコース」を発表した。11月より順次発売する905iシリーズから、どちらかのコースを選んで端末を購入する。機種変せずに長く使うと割安に──ボーダフォンが「スーパーボーナス」を導入
ボーダフォンは、新機種が1万500円引きで購入できる新サービス「スーパーボーナス」を9月1日から開始した。同じ端末を長期間使うとより割安になる新しい販売モデルとなる。ソフトバンク、ボーダフォンを1兆7500億円で買収
ソフトバンクはVodafoneの日本法人・ボーダフォンを買収することで合意したと正式発表した。買収総額は1兆7500億円。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.