平昌五輪で「5G」をプレビュー そこで見えた課題と、東京五輪への要望(2/2 ページ)
2019年以降の商用サービス開始を予定している次世代通信「5G」の実証実験が各所で行われている。「インダストリー4.0」の土台となるといわれている5G技術で、何が変わるのだろうか。平昌五輪でその一端を見てきた。
足りないのはキラーコンテンツ
「韓国の国策」といわれるように、5Gというキーワードは各パビリオンに表れ、ゲーム感覚のVR体験は子どもたちにも伝わっているようで、よいブランディングになっている。
しかし、ワクワクするような5Gのメリットが、いまひとつ伝わってこないのだ。5GとVRの体験は離れすぎているのだろう。スキージャンプの体験もいまではVRで体験できるが、そこにライブやモバイルであることの意義が伝わってこない。5Gが少々盛り上りに欠けるのは、「明確な未来を見せるキラーコンテンツがないからだ」とも言われるが、どうだろうか。4Gのときには、スマートフォンがあった。5Gは私たちに何を与えてくれるのだろうか?
東京オリンピックでやるべきこと
今回の実証実験で残念なことがあるとすれば、こうした肝心の映像やシーンは「録画」でしか見られなかった点だ。そのため、リアルタイムに画像を送り出し、それを番組やプログラムとして加工し、ユーザーがリアルタイムに受け取る仕組みが欲しい。2020年の東京オリンピックでも5Gを生かしたサービスを展開するのなら、以下の提案をしたい。
1.大量の5G端末を貸し出してほしい
平昌オリンピックでは、Samsungが1100台の5G端末を提供して、主にパビリオンでのデモ機として使われていた。それでも、いかんせん台数が足りない。東京オリンピックでは、リアルタイムで楽しさやメリットを享受するためには、先行した5G端末を販売またはレンタルするために、1万台以上は用意してほしい。またタブレットでは大きすぎるので、スマートフォンも欲しくなる。
2.パブリックビューイングでVR体験をしたい
実際に見に行った人が5Gの端末を操作してくれるのか考えると、少々難しい。座って観戦する屋内競技場ならともかく、屋外で直射日光のあたる観客席や、マラソンなどの沿道では、端末を操作する余裕があるのか、見えても十分使えるのか疑問だ。
そのため、VRシアターと題したパブリックビューイングを幾つか設置すべきだ。そうすれば、聖火リレーにも伴走として参加できるだろうし、キムヨナと一緒にあの聖火台に上り、一緒に火をともすことだって可能だろう。またカメラ撮影許可さえクリアできれば、一緒に高飛び込みの台に上がったり、100m走を並んで走ったりすることも不可能じゃない。
3.競技の映像を振り返って見たい
せっかくの新しい映像体験だが、今回は放映権の問題で、NHKなど一部のサイトでしか見られない。5G映像として分類していないので、直感的に分かりにくいのも不満だ。
会場は混雑しているため、余裕をもって試合の振り返りなどしていられない。せめて過去のゲームを簡単に見せるアプリや案内コーナーがあってもいい。公式アプリなどとしっかり連動すれば使いやくなるだろう。
私にとっては少々、不完全燃焼気味だった5Gオリンピックだが、新しい時代の兆しは見え始めている。5Gが生む新しいサービスへのアイデアを問い続ける私に対して、KTのCSR担当のジンホン・キム氏が答えてくれた。
「3Gから4Gに変わったときにも同じような疑問が出ました。新しい技術が生まれても、それを何に使えばいいか、すぐには誰も分からない。だから、時間をかけて考え続けることが大事なんです」
関連記事
「5G」でクルマ、コミュニケーション、スポーツ観戦が変わる――ドコモの最先端技術イベント
5Gのライフスタイルを体験できるイベントをドコモが開催。5Gの特性を生かすことで、クルマ、コミュニケーション、スポーツ観戦が変わる。離れた場所で音楽セッションをしたり、スムーズにロボットを操作したりもできる。「5G」でクルマ社会はどう変わる? 3キャリアに聞く
次世代通信規格の「5G」を生かした新しいビジネスモデルとして期待されている「コネクテッドカー」や「自動運転」。5Gでクルマ社会はどんな変化を遂げるのだろうか。ドコモ、KDDI、ソフトバンクの3社に聞いた。5Gで何が変わる? ソフトバンクが「高速通信」「低遅延」のデモを披露
ソフトバンクが5G通信のメリットを体感できるデモを実施。ロボットアーム遠隔制御、超高精細リアルタイム映像伝送、エッジコンピューティングを用いたGPUサーバによる遠隔レンダリングなどを披露した。高速通信や低遅延を体感できた。10Gbpsの高速通信にも実現のめどが――ドコモが5Gの最新技術やサービス像を披露
NTTドコモは11月17日から18日にかけて、同社の最新技術などを展示する「ドコモR&Dオープンハウス」を開催。同イベントの開催に先駆けて、11月16日にはドコモは次世代の通信技術とされる「5G」に関する取り組みを報道陣に公開した。2019年に登場する5Gスマートフォン 「高速通信」だけでなく「低消費電力」もメリットに
2019年からの商用サービスが見込まれている5G通信。同年に5G対応のスマートフォンも登場する見込み。5Gスマホで必要な設計について、米Qualcomm Technologiesの担当者が語った。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.