「ギガ時代」を迎える通信速度 上りも「100Mbps」超に:5分で知るモバイルデータ通信活用術(1/3 ページ)
キャリアアグリゲーション(CA)の導入や変調方式の変更によって、モバイル通信の理論上の最高速度がどんんどん上がっています。特に下り通信(受信)の理論上の最高速度は1Gbps(128MB/秒)に迫り、光回線並みの速度になりました。
2018年夏商戦向けのスマートフォンがおおむね出そろってきました。NTTドコモとau(KDDIと沖縄セルラー電話)の新機種の中には、下り最大通信速度が「ほぼ1Gbps」となっているものがあります。上り最大通信速度についてもドコモは75Mbps、auは国内最速の112.5Mbpsと、高速化した機種が出てきました。
今回の「5分で知るモバイルデータ通信活用術」では、高速化するモバイル通信の動向をチェックしていきます。
(特記のない限り、記事中の通信速度は全て理論値)
「ギガ時代」に突入した下り通信速度
ドコモの2018年夏商戦向けスマートフォンでは、6機種が下り最大988Mbpsの通信に対応しています。
これは東名阪(関東・甲信越、東海、関西)エリアにおける最大通信速度で、同エリア限定の「1.7GHz帯(Band 3)」の電波と、全国の混雑エリアを中心に整備されている「3.5GHz帯(Band 42)」の電波2波をキャリアアグリゲーション(CA)を使って束ねることで実現しています。
2016年6月に発売されたモバイルWi-Fiルーター「Wi-Fi STATION HW-01H」でも同じ電波の組みあわせでCAに対応していましたが、下りの最大通信速度は370Mbps。2018年夏のハイエンドスマホの半分以下です。
理論値でおよそ2.6倍の高速化を達成できたのは、変調方式(データの転送密度)を「256QAM」に変更し、電波送受信時のアンテナを増やす「4×4 MIMO」を対象の周波数帯で適用したからです。数値上の効果のほどは……。
- HW-01H:3.5GHz帯(110Mbps)+3.5GHz帯(110Mbps)+1.7GHz帯(150Mbps)=350Mbps
- 2018年夏ハイエンドスマホ:3.5GHz帯(294Mbps)+3.5GHz帯(294Mbps)+1.7GHz帯(400Mbps)=988Mbps
こんな感じです。だいぶ速くなっています。
下り最大988Mbps対応のスマホは「5波CA」にも対応しています。これにより、東名阪の4×4 MIMO非対応エリアでも下り最大794Mbpsで通信で通信できます。その他、CAで組みあわせられる周波数帯の組みあわせを増やすなどして、東名阪エリア以外も含めてより快適に通信できる工夫を行っています。
ただ、これらの通信速度はあくまで“理論値”。「実測値はどうなんだ?」という声もあると思います。
ドコモの発表会で行われたデモでは、メディア関係者がたくさんいて、モバイルデータ通信をするデモ端末も多数存在する環境にも関わらず、実測ベースで下り500Mbps以上の速度を記録しました。
理論値の向上は、基本的には実効速度を底上げするという意味でも大きな意味を持ちます。スピードテストアプリで見られる数値的な面だけではなく、通信の体感面(レスポンスなど)でも与える影響は少なくありません。
通常、「このエリアは下り最大○○Mbpsで……」とか理論速度を意識することはないとは思いますが、「何だか通信が遅いなぁ……」と感じる機会は減るでしょう。そういう意味では、CAや4×4 MIMOといった高速化技術は重要なのです。
一方で、通勤・通学時間帯に都内の地下鉄に乗って移動すると、TwitterなどのSNS利用にもストレスを感じるほどに通信速度が遅くなることがあります。これは最新機種でもそれほど変わりありません。
屋外で基地局を増設・増強するのとは異なり、駅構内やトンネル区間では物理的な制約(基地局装置やアンテナの設置場所の確保)はもちろん、時間的な制約(工事時間の確保)もあります。それゆえに、通信品質の改善に時間がかかる傾向にあります。
移動しながらでも快適な通信を行うために、地下鉄における通信品質改善にも期待したいです。
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