iPhoneを扱えない事情も MVNOとSIMフリースマホの関係:MVNOの深イイ話(1/3 ページ)
MVNOの多くは、通信サービスとセットでスマートフォンの本体も販売しています。そのスマホのほとんどは「SIMロックフリー」です。今回はSIMロックフリースマホにまつわるあれこれを取り上げてみたいと思います。
MVNOの多くは、通信サービスとセットでスマートフォンの本体も販売しています。ここで取り扱われているスマホのほとんどが「SIMロックフリースマホ」であることは皆さんご存じのことかと思います。今回はSIMロックフリースマホにまつわるあれこれを取り上げてみたいと思います。
SIMロックフリースマホと大手キャリアのスマホ
SIMロックフリースマホが、その名前が示す通りに「SIMロック※がかけられていない(ロックフリー)」スマホであるということは、多くの皆さんがご存じのことかと思います。
ですが、日本でSIMロックフリースマホとして流通しているスマホと、大手キャリアが販売しているスマホとでは、SIMロックの有無以外にも幾つかの違いがあります。
まず、販路の違いが大きいでしょう。大手キャリアのスマホは原則として特定のキャリアからしか販売されません。最近では、同一製品名のスマホが複数のキャリアから販売されていますが、それぞれの製品に割り当てられている型番はキャリアごとに異なり、厳密には別製品と言えます。
例えば、ソニーモバイルが製造する「Xperia XZ2」は、NTTドコモでは「SO-03K」、auでは「SOV37」、ソフトバンクでは「702SO」として販売されています。
そしてこれら3機種は仕様も異なります。例えばSO-03Kでは、ドコモがメーカー横断で採用しているホーム画面「docomo LIVE UX」を搭載していますが、他キャリア版は異なるホーム画面を搭載するなど、販売キャリアによって標準搭載のアプリが異なります。それだけでなく、対応する電波の種類(バンド、周波数)も各社によって異なっており、アプリだけでなくハードウェアについても異なる仕様の製品であることが確認できます。
これに対して、SIMロックフリースマホでは、同じ型番や仕様のスマホが複数の販路(MVNOや量販店)から販売されます。例えば、ASUSの「ZenFone 5」では、メーカーの新製品発表会で、14のMVNOと16の量販店で取り扱われることが公表されました。
問い合わせや修理対応のサポート窓口にも違いがあります。大手キャリアのスマホの場合、問い合わせ先として掲載されているのはキャリアの窓口で、メーカーは窓口として掲載されていません。一方、SIMフリースマホではMVNOが販売している場合でも問い合わせ窓口としてメーカーが指定されることが大半です。
このような違いは、スマホの企画・販売について主導権を持っているのがキャリアなのか、メーカーなのかの違いが影響しています。
SIMロックフリースマホの場合、製品の企画をして仕様を決めているのは一般的にメーカーです。商品の売れ行きやユーザーの需要についてメーカーとMVNO、販売店が意見を交換することはあるかと思いますが、あくまで市場調査の一環であり、製品の仕様をMVNOや販売店が決めることは通常ありません。
これに対して、キャリアのスマホは、先述のようにキャリアの指定するアプリの搭載や周波数への対応が図られており、仕様決定についてキャリアが深く関与している様子がうかがえます。
日本の大手キャリアがスマホの企画、販売に強く関わっているのは、携帯電話黎明(れいめい)期の影響があると考えられます。
黎明期の携帯電話はシステム自体が開発途上であり、国際的な標準規格も未整備でした。そのため、各通信機器メーカーは、キャリアが提示する仕様に沿って携帯電話端末を開発する必要がありました。
また、初期の携帯電話は大変高価で個人で購入することは難しく、キャリアがレンタルで提供する形をとっていました。利用者にとって携帯電話端末は、通信サービスを契約に伴って貸し出されるもの、という扱いだったのです。
このような経緯から、携帯端末は利用者が直接購入するものではなく、キャリアがメーカーに対して仕様を提示して発注し、納品されたものを利用者に提供するという流れが定着しました。その後、携帯電話の買い切り制度がとられるようになり、携帯端末は利用者が購入する形になりましたが、先に述べたような枠組みはその後も維持され、スマホでも継続したものだと思われます。
海外メーカーのスマホの流通
ところで、現在日本で流通しているSIMロックフリースマホは、海外メーカーが企画、製造したものが大半です。ニュース記事やSNSの投稿を見ても、「海外で発売された○○という機種は日本では発売されないのか?」といった話題が多く見られています。
先ほど紹介したように、日本ではMVNOや販売店がSIMロックフリースマホの企画、販売の主導権を持っているわけではないため、海外のスマホを日本で販売する際には、海外メーカーの日本支社や日本の代理店の動きが重要になります。
日本で既に一定のシェアを獲得している海外メーカーの場合、日本に支社(子会社)を設置していることが多いようです。本国のビジネスの規模が小さかったり、日本への進出途上だったりする会社の場合、商品の輸入販売に長けた日本の会社を代理店として起用する場合もあります。
日本支社や代理店は日本市場を調査し、本国で取り扱っているモデルの中から日本での販売に適したモデルを選び、販路であるMVNOや販売店に紹介します。また、日本でスマホを販売するためには電波法やPSE法などの各種法令に準拠し認証をとる必要がありますので、そういった作業も支社や代理店の役割となります。
その一方、MVNOや販売店がスマホを仕入れる場合には、メーカーや代理店直接ではなくコンピュータ関連製品を扱う販社(商社)を経由して仕入れることが多いようです。販社は大量の商品を全国に流通させるためのインフラやノウハウを持っているため、特に多数の販路で販売されるメジャーなスマホの場合、商品の仕入れが販社経由になることが一般的です。
また、キャリアの窓口がサポートを担当するキャリアのスマホと異なり、SIMロックフリースマホの場合販売後のサポートもMVNOではなくメーカーが担当します。多くのメーカーが電話やメールと宅配便を使ったサポートを行う中、いくつかのメーカーはサポートのための自社店舗を展開する動きを見せています。
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