総務省の研究会が「端末購入補助の完全禁止」に本腰――高額キャッシュバックにしか目線が行かない不毛な議論:石川温のスマホ業界新聞
総務省が「モバイル市場の競争環境に関する研究会」の第3回会合を実施した。「分離プラン」の導入を軸に検討を進めると思われるが、それは果たしてユーザーのための議論といえるのだろうか。
11月14日、総務省にてモバイル市場の競争環境に関する研究会(第3回)が開催された。今回はNTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの渉外担当者がプレゼンを行なった。
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この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2018年11月17日に配信されたものです。メールマガジン購読(月額540円・税込)の申し込みはこちらから。
議論のなかで、槍玉にあげられたのが分離プランで、すでにKDDIやソフトバンクが分離プランを導入しているものの「完全に分離したプランとは言えないのではないか」というツッコミが入っていた。ただ、実はKDDI、ソフトバンク共に、機種を持ち込んでの契約はできるため、そう言った点では分離プランと言える。
そんななか、ソフトバンクからは「いまは完全な分離ではなく、準分離プランみたいなイメージだ。どこまで徹底して分離するのか、丁寧に議論させていただくと、今後に役立つのではないか」と意見があった。そもそも「分離プランとは何なのか」という定義から議論する必要がありそうだ。
世界的に見ても、完全に分離している国はないようで、このまま総務省の議論が進めば、日本では完全に分離したプランが導入される懸念もでてきた。
分離プランを導入するだけでなく、研究会としては「端末購入補助の完全禁止」の導入を視野に入れている雰囲気がある。いつまでたっても、高額キャッシュバックを締め出そうという視点でしか議論ができておらず、あまりに不毛だ。
その点に関しては、ソフトバンクとKDDIはかなり警戒しているようで、ソフトバンクは「完全禁止は過剰規制だ」としている。
総務省の検討会では、有識者が上から目線で議論を進めているが、本当にその意見が国民のためになっているのか、しっかりと検証する必要があるだろう。
特に、数年前に「毎月、少ないデータ容量しか使わない人向けのプランを作るべき」と主張していた有識者がいて、その結果、各キャリアで1GBのプランができたが、いまでは意味のないプランと化している。そもそも、1GBで収めることは結構、難しいし、それくらいしか使わないのであれば、キャリアでなく、MVNOで契約した方がいいだろう。
いまのソフトバンクの料金プランを見ると、ウルトラギガモンスター+に加えて、ミニモンスターというのが存在するが、このプランは2GBを超えた場合はウルトラギガモンスター+のほうがお得になるという謎の設定になっている。
おそらく、総務省対策として1GBからのプランとして設定されているようだが、2GBを超えるとウルトラギガモンスター+のほうがお得になるというプランに誰が契約するというのか。
本来であれば一本化できた料金プランが、総務省の意見によって有名無実化しているプランがひとつ存在していることになる。
総務省の検討会は、現場をかき乱し、混乱させているだけのように思えてならない。もう少し、現場のことをしっかりと理解している人たちの議論にならないものだろうか。
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