総務省がアンケートをもとに「解除料1000円」を密室で議論――果たして、6月18日開催の「最終回」でどんな結論に落ち着くのか:石川温のスマホ業界新聞
総務省が携帯電話の定期契約の解約金を「上限1000円」とする案を取りまとめているという。非常に重要な会合にも関わらずあえて非公開で行った総務省は何を考えているのだろうか。
6月11日、総務省はモバイル市場の競争環境に関する研究会(第14回)/ 消費者保護ルールの検証に関するWG(第12回)合同会合を開催した。しかし、これまですべて公開で行われていたにもかかわらず、今回は「非公開」。しかも、今回は解除料の金額を決める大事な会合であったにもかかわらず、総務省は密室で議論を進めるという姑息な手段を使ってきた。
この記事について
この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2019年6月15日に配信されたものです。メールマガジン購読(月額540円・税込)の申し込みはこちらから。
6月8日には、一部報道機関が「解除料は上限1000円」という総務省からのリークを伝え、一般紙やテレビが後追い。もはや、上限1000円は既成事実と化した。
しかし、その「上限1000円」という根拠が実に頼りない。総務省では、一般にアンケートを取り、「解除料が1000円であれば他社に乗り換える」という結果を得た上で、有識者にお伺いを立てた。
だが、今回ばかりは有識者もちゃんと有識があったようで、総務省からの提示を突っぱねた模様だ。確かに、アンケートをとって、そのとおりの金額で省令が改正されるようでは、そもそも行政機関の存在意義などないのではないか。
アンケートで解除料の金額を自在に変えられるのであれば、ぜひとも総務省は各キャリアに対して「電波利用料はいくらならいいか」というアンケートを取ってもらいたい。それで限りなく無料に近い金額が回答されたとき、総務省は何も言えなくなるのではないか。
ユーザーの立場からすれば、もちろん解除料は無料に近いほうが望ましい。
今回の問題は、議論にまともな時間を費やすことなく、姑息な手段で、非公開の議論で世間を欺き、早急に金額を下げようとしたことが卑怯であるということだ。
しかも、はじめから「上限1000円」という金額ありき、さらには楽天が参入する10月までに省令を改正するというゴールが設定された上での、拙速な動きだからこそ、業界内から反発の声が上がるのだ。
次回は6月18日に開催される予定だ。しかし、これが会合の「最終回」となっている。つまり、10月の省令改正までに間に合わせるには、このタイミングで最終回にして結論を出してしまわなければならないというわけだ。
こんなにまでして、大した議論もせずに結論を急ぐ必要があるのか。まさに参院選と消費増税を睨んだ、政府による国民に対するポーズでしかなく、それに振り回される通信業界と、結果として混乱に巻き込まれる国民が不憫でならない。
関連記事
解約金の値下げ、端末割引と長期利用割引の規制――総務省の新政策は何が問題なのか?
総務省が研究会で提案した「解約金1000円」「端末割引2万円まで」「長期利用割引の規制」は、寝耳に水という印象。「1000円」「2万円」という数字はいずれも根拠に乏しく、構成員からも疑問の声が多く挙がった。総務省が提示した制度案の問題点を整理する。解約金は1000円、端末割引は2万円まで、長期利用割引も規制へ 総務省が新制度案を公表
第15回の「モバイル市場の競争環境に関する研究会」にて、総務省がモバイル市場の競争促進に向けた制度案を発表。2年契約の解約金は9500円から1000円にし、通信サービスの継続利用を条件としない端末割引は2万円を上限とする。長期利用割引にも一定の規制を設ける考えだ。「2年契約の解約金1000円」「端末割引2万円まで」の根拠は? 総務省に聞く
総務省が6月11日に開催した有識者会議で、2年契約の解約金を1000円にすること、端末の割引額を2万円までにすることを提案した。「1000円」と「2万円」の根拠はどこにあるのか。総務省の料金サービス課に疑問点を聞いた。「解約金値下げ」と「端末割引の制限」、キャリアはどう考える? ドコモ料金制度室長に聞く
総務省の有識者会議で、2年契約に関する話題が議論されている。この会議で、端末購入補助について踏み込んだ提案をしたのが、NTTドコモだ。同社は上限を3万円までと明記し、その根拠も明かした。なぜ3万円なのか? 解約料の値下げも含め、ドコモの料金制度室長の田畑智也氏に話を聞いた。
関連リンク
© DWANGO Co., Ltd.