中国5Gの開始前夜祭となった「MWC19上海」 主要メーカーの5Gスマホも集結:山根康宏の中国携帯最新事情(2/2 ページ)
6月26日から28日まで開催された「MWC19上海」では、中国通信市場の最新動向が披露された。2019年は中国の5Gに関連した展示で会場が埋め尽くされていた。中国3キャリアは5G端末や5Gのサービスをブース全体に展示しており、5Gの開始がもはや秒読み段階であることをアピールしていた。
5Gのキラーアプリは映像系やスマートシティー
China Unicom、China Telecomの5Gは3.5GHz(n78)で展開予定。ブランドはUnicomが「5Gn」、Telecomが「5G hello」となっている。
China UnicomブースではChina Mobile同様に5Gスマートフォンを多数展示して5Gのライブデモを行っていた。ほとんどの端末がChina Mobileと同じもので、いずれの製品もChina Mobileのn41と、China Unicomのn78という2つの5G周波数に対応している。Lenovoの「Z6 Pro 5G」やNubiaの「mini 5G」なども展示されており、5Gスマートフォンは好みのメーカー、好みの機能で自由に選べるほど種類は多い。
China Unicomは2022年の北京冬季オリンピックスポンサーにもなっており、会場にはオリンピック競技場をイメージしたネットワークの展開レイアウトが展示されていた。大規模なスポーツ大会は新しいネットワークのテスト場としても最適であり、2018年の冬季オリンピック会場だった韓国の平昌も競技場を中心に5Gのテストが展開された。しかし2022年は中国で既に5Gの商用化が始まっている年であり、オリンピックのあらゆるスポーツ中継が5Gを使ったものになるだろう。
5Gによる放送の改革はChina Mobileブースにも展示があった。5Gモデムを搭載したテレビカメラを使い、現場から4K映像をリアルタイムで配信したり、VRを使った解説映像を流したりする他、スマートフォンやスマートTVの画面で複数のカメラからの配信を自分で切り替えて、好きなアングルや特定選手にフォーカスした映像を視聴する、といったことが可能になる。スマートフォンの高性能化と大画面化もあいまって、5G回線を使った動画視聴は4G時代よりもリッチな体験ができるようになるだろう。
今はまだ一般消費者が日常的に使うまでには普及していないVRも、リッチなゲームや映像配信と組み合わせることで「使いたい」と思わせるサービスになるだろう。例えば自宅の椅子に座ったままで海外旅行気分を味わえるバーチャルトリップサービスは、海外へ行かずとも現地の雰囲気をリアルに感じられる。しかしその体験で消費者は満足せず、「実際に行ってみたい」と興味をより高めるだろう。コンテンツから旅行会社へのECの誘導を進めるといった新しいビジネス展開が期待できるわけだ。
ARはコンシューマー向けだけではなく、B2B向けの展開が期待されている。例えば産業界が注目しているのが工場などのスマートファクトリー用途で、機器のメンテナンスや修理も紙のマニュアルを不要にできる。AR眼鏡を通して現場の機器にバーチャルな指示を表示できるため、誰もが的確な操作を行えるというわけだ。5Gの高速・低遅延といった利点が大いに生かされるフィールドである。
China Telecomブースには5Gスマートフォンの展示はなかったものの、5Gによる具体的なサービス事例のデモが目立った。もちろんいずれのデモもブース内の5Gのテスト電波を使ったリアルな体験だ。
5Gの特性は前述したように高速・低遅延、そして同時多接続である。それに加え、クラウドやサーバ側ではなく、基地局側でデータ処理を行う「エッジコンピューティング」を組み合わせることで、さらなる高速化、遅延速度の低減が実現できる。例えばクラウドゲームもエッジサーバを組み合わせれば、家庭にゲーム機本体を設置せずとも5G回線を使うだけでスマートフォンをゲームコンソールにできるのだ。もちろん自動運転もリアルタイム処理の多くをエッジ側で処理することで、緊急時の反応を限界まで縮められるだろう。
5Gはまだ一部の国の一部ユーザーしか利用しておらず、現状では4Gの延長的なサービスにとどまっている。しかし8Kストリーミング放送や5Gドローンによる無人配送が当たり前になれば、これまで考えられなかったサービスが登場するだろう。人口13億をかかえる中国で5Gが本格的な普及を始めれば、5Gの特性を生かした全く新しいサービスが次々に生まれてくるに違いない。
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