なぜβ版でスタート? 独自プランは? IIJに聞く「eSIM」戦略:MVNOに聞く(2/3 ページ)
国内のネットワークを使った初のeSIMサービスが、IIJから登場した。当初はβ版という位置付けで、料金プランは月額契約が必要な「ライトスタートプラン(eSIMベータ版)」のみ。なぜ、このタイミングでコンシューマー向けサービスの提供にかじを切ったのか?
提供開始から数日で1000を超える申し込み
―― 先ほどユーザーやメディアの声のお話がありましたが、反響はいかがでしたか。
矢吹氏 ありがたいことに、反響は大きかったですね。実際に買っていただけた数も、初日から数えて1000を超えています(インタビューは7月下旬に実施)。そのまま右肩上がりというわけにはいきませんが、今も数は順調に伸びています。
意外なことに、買っていただいているお客さまの多くが新規の方です。以前IIJmioを使っていた方が戻ってきたケースもありますし、別の契約をしている方が新規でIDを取得したケースもありますが、約7割が新規の方です。
亀井氏 これは意外でした。MVNOに詳しく、どこのMVNOがどういう性質のサービスをしているのかを分かっている方が、久しぶりにIIJmioに戻ってきたのかもしれません。
―― その分、ユーザーが増えたと思いますが、帯域は大丈夫でしょうか。
矢吹氏 何十万、何百万のうちの1000なので、そこの影響はありません。速度の問題については、どちらかというと、春先に想定したよりお客さまが多かったところと、法人回線が順調に伸びているところが響いています。需要と供給のバランスが崩れているのに対し、G20や参院選で工事に抑制が入ってしまった。そのバランスが取れない影響の方が大きいですね。
―― ドコモの接続料が想定を下回る下げ幅だったことは、影響していないのでしょうか。
矢吹氏 もちろん、利益率には影響しますが、外から見られるよりは影響していません。総務省が発表しているトラフィックの伸びは年率で1.X倍ですが、われわれのお客さまのトラフィックはそこまで伸びていないからです。いろいろな分析をしていますが、1つの仮説としてあるのが、MVNOに来る方はデータ通信を節約することが多いということです。キャリアを使っている方のような自由奔放な使い方をしないため、伸び率が違ってきています。
iPhoneの利用者が圧倒的に多い
―― eSIMは、iPhone以外にもiPadやSurfaceなどのデバイスに対応していますが、やはり数が多いのはiPhoneでしょうか。
亀井氏 iPhoneが圧倒的ですね。iPhone XSがトップで、XS MaxとXRが同率で2位ぐらいの数になっています。
―― キャリアが割引付きで販売している主力端末が対応しているのは、やはり影響が大きいですね。
矢吹氏 ただ、僕らもまだプロモーションにはお金をかけていません。まだ、そういうものがあるということが届いていない方はたくさんいます。これは、これからしっかりやっていかなければいけないところです。
―― キャリア版は、SIMロック解除も必要になりますが、ここはスムーズにいきましたか。
亀井氏 初日は(問い合わせが)多かったですね。中には、SIMロックを解除せずに来る方もいました。当然書いてはありましたが、なかなか伝わらないものです。SIMロックを解除していない方には、そこから教えなければならず、(サポートに)少し時間がかかりました。
―― 機種変更すると再発行の手数料がかかってしまいます。端末の使用期間を考えるとレアケースかもしれませんが、次のiPhoneを発売後すぐに買うと、また手数料がかかってしまうことになります。ここは、なぜ有料なのでしょうか。
亀井氏 eSIMを消したかどうかの担保が取りにくいからです。ネットにつながっていない環境で削除してしまうと、それが私たちの側に伝わらない仕組みになっています。iPhoneだとネットにつながっていれば通知が来ることは分かっていますが、他のデバイスでは、それぞれでテストしなければなりません。(通知が来ないと)電話番号も、それぞれに発行しなければならなくなります。
矢吹氏 デバイス移行というものを考えなければいけないのは、eSIMを出してみての発見でした。ただ、これだと普通にSIMを買った方がいいことになってしまい、そういったお声もいただいています。1回買っていただいた方に、eSIMならではの特典をどう付けられるのか。今は、まず出してみたというのが本音です。
関連記事
キャリアの脅威になる? IIJmioの「eSIM」が業界に与えるインパクト
IIJは7月18日から、個人向けのeSIM対応データ通信サービスを開始する。6GBプランしかなく、対応端末も限られるが、オンラインで気軽に“2回線目”を追加できるのは魅力だ。サービス詳細や、市場に与えるインパクトを検証する。“L”再び――iPhone XSでIIJmioの「eSIM」を使ってみよう(設定編)
インターネットイニシアティブ(IIJ)が、β版ながら個人向けのeSIM通信サービスを始めました。使ってみないわけには行かないので、IIJの協力のもと試してみることにしました。この記事では、iPhone XSで通信できる状態にまで持って行きます。IIJmioの「eSIM」サービスは、どんな人に向いているのか?
「IIJmio」向けのeSIMサービス(β版)が7月18日にスタートする。β版で使えるのは6GBのプランのみ。IIJは、毎月7GB程度使う人が、キャリアで低容量の回線を使い、6GBをeSIMで使うというスタイルを想定している。IIJmioで「eSIM」サービス(β版)を7月18日に開始 月額1520円で6GB
IIJが、コンシューマー向け「IIJmio」でeSIMサービスのβ版を7月18日に開始する。加入者管理機能を使ったフルMVNOの仕組みを使ったもの。月額1520円で6GBの高速データ通信が可能。新iPhoneも対応した「eSIM」とは何か メリットと課題を解説
eSIM搭載のスマートフォンやノートPCが市販されるようになり、今改めてeSIMについて注目が集まっています。今回はスマートフォンでのeSIMについて解説します。eSIMでは何が行われていて、どんなメリット、課題があるのでしょうか。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.