なぜβ版でスタート? 独自プランは? IIJに聞く「eSIM」戦略:MVNOに聞く(3/3 ページ)
国内のネットワークを使った初のeSIMサービスが、IIJから登場した。当初はβ版という位置付けで、料金プランは月額契約が必要な「ライトスタートプラン(eSIMベータ版)」のみ。なぜ、このタイミングでコンシューマー向けサービスの提供にかじを切ったのか?
eSIMならではの施策も検討中
―― プランに関しても、3GBの「ミニマムスタートプラン」があると、お試し感覚で契約できていいなと思いました。
矢吹氏 実は、当初はミニマムスタートプランの料金で出そうとしていました。eSIMを買っていただける方はIIJのことをご存じで、それなりにデータ通信を使う方です。そういったニーズを踏まえ、ミニマムスタートプランの料金で、ライトスタートプランぐらい使えるようにしようと思っていたのですが、電気通信事業法の改正でそれがセーフになるのかが分かりませんでした。その辺がグレーだったんです。
―― 今は、法改正の中身も具体的になり、白黒はっきりつけやすいと思います。
矢吹氏 iPhoneの発売に前後して、もう少し積極的なことができないかは検討しています。一方で、IIJmio全体でサービススキームをもう1回作り変えていくという話もあります。どのタイミングでアクセルを踏んだらいいのか、われわれ自身がまだジャッジしきれていません。iPhoneのときだけバーンとアクセルを踏むのではなく、そこから後に続かなければなりません。
どういうタイミングがいいのかは、今、プロモーションチームが検討を進めています。われわれとしては、一過性のものではなく、焦らずしっかりと成長させていきたいという思いがあります。短期で獲得するための武器というより、お客さまとしっかり対話しながら、じっくり考えていきたいですね。
―― 近いタイミングで、中古iPhoneの販売も開始しました。これもすぐに在庫がなくなっていますが、タイミングを合わせたのでしょうか。
矢吹氏 eSIMの企画と中古iPhoneの企画は別々に進んでいたもので、たまたまローンチが重なったというのが本当のところです。今回は、リファービッシュ品ではなく、中古を扱いましたが、仕入れるたびに売り切れています。流通在庫が少ないので、すぐに枯渇してしまう状況です。ただ、これがeSIMの影響かというと、あまり関係はなさそうです。iPhoneを買っているのは既存のユーザーだからです。
―― IIJとしては、MVNEも事業の柱ですが、今後はeSIMもメニューに加えていくのでしょうか。
矢吹氏 お声もいただいているので、考えなければという状況です。ただ、本当にやるのかという問題もあります。マーケットの規模として考えると、今はそんなに大きくはありません。僕らにとってはフルMVNOらしい、新しいものに対する投資になるので、そこまで気になりませんが、まだ対応端末が少なすぎる中で、他のMVNOがiPhoneのためだけにやるのかとなると、ちょっと難しいのではないでしょうか。先ほど1000を超えたというお話をしましたし、しばらくすれば1万はいくと思いますが、1万ユーザーのための投資としては高すぎるからです。
―― 逆に言えば、時間がたち、端末が広がればありそうということですね。
矢吹氏 大学生のiPhone所有率は非常に高く、彼らが社会に出始めるのが来年(2020年)、再来年(2021年)ぐらいです。そのとき、こういったサービスが有効になってくるのではないかと思います。もうちょっと大きなマーケットが見えてくれば、「ぜひやりたい」となるのではないでしょうか。
取材を終えて:eSIMならではのサービスと対応機種の拡大に期待
iPhoneで利用できる国内回線初のeSIMサービスということで、話題性もあり、スタートダッシュは順調だったようだ。一方で、矢吹氏、亀井氏の双方が認めているように、まずは出してみたという状態で、料金プランの選択もできない。機種変更で手数料がかかってしまうなど、運用面でも細かな課題がある。短期間だけ利用できるプリペイドプランも含め、eSIMならではのサービスが登場することにも期待したい。
IIJがサービスインしたことで、今後、徐々に対応端末が拡大する可能性もある。大手キャリアは二の足を踏んでいるため、キャリアモデルでの対応は難しいかもしれないが、SIMロックフリーのスマートフォンとは相性もいい。iPhoneだけでなく、Android端末のバリエーションも、もっと増えてほしいと感じた。
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