DMM mobile買収の衝撃 “MVNOの楽天モバイル”はどこに向かうのか?:MVNOに聞く(3/3 ページ)
楽天モバイルのMNO事業開始から3カ月を切ったタイミングでのDMM mobile買収は、業界に大きな衝撃を与えた。楽天モバイルは買収の理由として「顧客基盤の強化」を挙げている。MNOへの新規参入を控えたこの時期に、なぜあえて他のMVNOを買収したのか?
新たな電気通信事業法への対応は?
―― 参入と同時に電気通信事業法の改正で、既存のスーパーホーダイなども影響を受けるようになると思います。ここは、どうされていくのでしょうか。
大尾嘉氏 影響は受けます。今は僕らの組み合わせプランも、1年の縛りがある。1年後以降の縛りはありませんが、解約金が9800円(税別)です。スーパーホーダイも1年、2年、3年と選んでいただく形ですが、それも難しくなってしまうので、変えなければなりません。端末値引きについてもそうで、法に抵触してしまうので変えざるを得ない状況です。
―― 一時は、楽天モバイルが除外されるという報道もありましたが……。
大尾嘉氏 あれは何だったんでしょうね(笑)。三木谷は「正々堂々とやる、そんなのはいらん」と言っています。特別扱いされてというより、正々堂々とお客さまのハートをつかんだ上でやりたい。
ただ、(除外されるとすれば)ありがたい話ではあるんですけどね。今の産業構造だと、大きい会社は大きいままでいられます。資金力があり、縛りをつければ、1人だけ大きな利益を得て、その資金でマーケティングにお金をガンガン使えます。
楽天にはそこまでのお金があるわけではありませんが、力で来るところに対し、ちょっとでも認知されるところまで支援していただければ、ありがたい話ではあります。仮に(除外などが)あったら、多少は楽になっていたかもしれません(笑)。でも、それがなくても勝負はできると思っています。その証拠に、今のMVNOの状態でもしっかり勝負ができている。数字で言えば、4月、5月、6月も契約数は落ちていないどころか、去年(2018年)よりもよくなっています。お店が増えているというのはありますが、おかげ様で認知度も上っています。
楽天市場など、いろいろなところともコラボしていますが、もともと顧客基盤があるだけに、そこに(楽天のMNO)を紹介できるのは、僕らのアドバンテージです。
取材を終えて:ドコモとどう折り合いを付けるのかがカギ
DMM mobileの買収は、事業規模だけでなく、ポイントシステムやユーザー層の親和性が高いことも決め手になったようだ。確かに買収しても、最低利用料で維持しているだけのユーザーばかりだと、将来的なMNOへの移行も難しくなる。
その意味で、ユーザー層の質はかなり重視しているように感じた。楽天モバイルが、さらなる買収に意欲的なのも驚きだった。ただ、MNO開始後に同じスキームが使えるかどうかは未知数だ。回線を貸し出すドコモなどのMNOと、どう折り合いを付けていくのかも、注目しておきたいポイントといえる。
関連記事
DMM mobile買収で契約増の楽天モバイル ただしMNOとMVNOの両立は不可に? ドコモ吉澤社長は不快感
楽天モバイルが、DMM.comのMVNO事業であるDMM mobileを買収する。事業の移管は9月1日を予定しているが、不透明な部分も大きい。一方、MVNOとMNOの両方を展開することについて、ドコモの吉澤社長は「MVNOは解消してもらいたい」と不快感をあらわにした。「DMM mobile」「DMM光」を譲り受ける楽天モバイル 両サービスの今後は?
楽天モバイルが、DMM.comのMVNO事業とFVNO事業を譲り受けることになった。今後「DMM mobile」や「DMM光」を契約している人は、今後どのような扱いとなるのだろうか。楽天モバイルに聞いた。楽天モバイルがDMM.comから「DMM mobile」「DMM光」を譲受 9月1日付で
MNO事業への参入準備を進める楽天モバイルが、DMM.comからMVNO事業とインターネット接続事業を承継する。基本的には承継後も同じサービスを受けられるが、ポイントサービスは変更される予定だ。楽天モバイルがMNO回線への移行を案内 3月14日10時以降の契約者にはSIMカードを発送
楽天が「楽天モバイル」のMVNO→MNO回線への移行に関する案内を掲載。3月14日10時以降に新規契約したMVNO回線は10月以降に順次MNO回線のSIMカードを発送するという。既存ユーザーへの対応は、今後改めて案内するという。楽天はなぜFREETELのMVNO事業を買収したのか? 楽天 大尾嘉氏に聞く
業績が低迷したFREETELのMVNO事業を承継した楽天。これにより、楽天モバイルの回線数は140万を超える。楽天はなぜ、FREETELの買収を決めたのか? 同社のMVNO事業を率いる執行役員の大尾嘉宏人氏に聞いた。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.