DMM mobile買収の衝撃 “MVNOの楽天モバイル”はどこに向かうのか?:MVNOに聞く(2/3 ページ)
楽天モバイルのMNO事業開始から3カ月を切ったタイミングでのDMM mobile買収は、業界に大きな衝撃を与えた。楽天モバイルは買収の理由として「顧客基盤の強化」を挙げている。MNOへの新規参入を控えたこの時期に、なぜあえて他のMVNOを買収したのか?
いずれは楽天モバイルに統合する
―― 料金プランや名称も維持するとのことですが。
大尾嘉氏 そうですね。9月1日以降も当面は残すことにしています。その先はまだ決まっていませんが、取りあえずはDMM mobileのままです。
―― 当面ということは、逆に言えば、いつかは楽天モバイルに統合するということですよね。
大尾嘉氏 いつかは、そうですね。FREETELのときも、翌年変えています。DMM mobileについては、まだいつかは決まっていませんが、同じようにしていくのではないかと思います。
―― 最終的に、楽天のMNOに切り替えることもできるようになるのでしょうか。
大尾嘉氏 楽天モバイルのお客さまになるので、大きな方針として、ゆくゆくは楽天MNOの方に移行していただきたいとは思っています。今年(2019年)の3月14日から、新規契約したお客さまには、回線の準備ができ次第、しかるべきタイミングでSIMカードをお送りすることになっています。MVNOのままか、MNOに移るかはお客さまに決めていただけますが、できればMNOに移ってほしいということは盛り込んでいます。
DMM mobileも、1ユーザー1万円ほどで獲得
―― 少々テクニカルな話になりますが、DMM mobileは以前からIIJをMVNEにしていることを公言していました。一方で、楽天モバイルはドコモと直接続していると思いますが、これは楽天モバイル側に一本化していくのでしょうか。
大尾嘉氏 当面、そういうこともありません。SIMの交換などにも手間をかけてしまいますから……。
―― 今回の買収額は23億円で、計算すると1ユーザーに1万円という金額になります。FREETELのときも負債込みで1万円でしたが、そのぐらいが相場とお考えでしょうか。
大尾嘉氏 計算をするとそうなりますが、相場というわけではありません(笑)。ただ、それより上か下かというと、やはりそのぐらいになるのではないでしょうか。事業承継のお話をするときは、承継する事業の価値と、お支払いする金額を比べて判断しますが、それぞれ独立したお話の中で決まっています。
―― 1ユーザー1万円で楽天モバイルに事業を売りたいというMVNOがいたら、今後も同じような買収をする可能性もあるのでしょうか。
大尾嘉氏 あればウエルカムです。MVNOをやってからも、日本のMNOがやってきたことが正しいのかという疑問は常にあります。寡占状態で消費者目線ではなく、産業を守るために同じ値段でユーザーを縛る――三木谷が「携帯電話事業の民主化」と言っていましたが、あの精神は全くブレていません。規模が大きくない、会社の主要な事業ドメインとちょっと違うなど、いろいろな理由で僕らと一緒なった方が、意思を強固にできるというのであれば、一緒にやっていきたいというのが本音です。DMM mobileに関しては、先方も同じ思いでした。
MNOとMVNOを同時にやるのはおかしい?
―― ただ、MNOとして参入するからには、MVNOを同時にやるのはおかしいという論調もあります。特に楽天モバイルに回線を貸すドコモは、吉澤和弘社長が率先して「いかがなものか」と発言しています。今後、ドコモ回線はどうされていくのでしょうか。
大尾嘉氏 何でそういうことをおっしゃるのか、という思いがあります。ダイレクトにMNOを契約していただく方には、当然僕らのインフラの上で快適なサービスを提供したいのですが、今、この状況でそれを言われても……。「本当にガサっとユーザーを動かしてもいいんですか」と言いたい。MVNOの中で1位ということは、ドコモの中のMVNO事業も一気に縮小してしまうことになります。
楽天MNOの端末も使えるよう案内する
―― そんな中でのDMM mobile買収でしたが、10月のMNOに間に合わせたということでしょうか。
大尾嘉氏 狙ってこのタイミングになったわけではありません。お互いにお話をしていた中で、やりましょうとなったのが、偶然このタイミングだっただけです。言わされているようなセリフですが、本当にそんなことはないんです(笑)。ポツポツとそういったお話がある中で、DMMとは何回かお話をして、一緒にやりましょうとなりました。間に合わせたというわけでもありません。
―― ソフトバンクに対するLINEモバイルのように、楽天モバイルのサブブランドをDMM mobileにするということもありえるのでしょうか。
大尾嘉氏 10月以降のお話になってしまうのでなかなか難しいのですが、今、それは考えていません。
―― かなり先の話になるかもしれませんが、DMM mobileのユーザーが持っている端末が、楽天のMNOの回線で使えないということが出てくると思います。その際はどうしていくのでしょうか。
大尾嘉氏 今すぐにではありませんが、それは分かっていて、お客さまが不利にならないよう、案内をしていくことになると思います。ただ、それを言うと、楽天モバイルのお客さまの中にも(端末の買い替えが必要なユーザーが)います。今年出した端末はほとんどが(MNOの回線に)対応していますが、3月より前のものに関しては、対応していないものもあります。DMM mobileのお客さまより、もっと大規模なところをどうするのかという話ですね。ここはまだ検討し切れていないのですが、最終的に、利便性が保てて「いいね」と言っていただける方法で移行を進めたいと思っています。
ただし、どちらかと言うと、まずはローンチです。10月に向けてやることをやり、それから徐々にという感じです。
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