ヤフーとLINEはなぜ提携したのか? 2トップの川邊氏と出澤氏が語る(2/2 ページ)
既報の通り、11月18日に、ヤフーを子会社に持つZホールディングス(ZHD)とLINEが経営統合の基本合意を発表した。統合の背景には、強力な海外勢に対する強い危機感があった。お互いの弱い分野を補うことで、世界をリードする“AIテックカンパニー”を目指す。
オールジャパンと日本向けサービスを強みに
GAFAの脅威については問われると、川邊氏は「最大の脅威は、ユーザーから支持されていること」と答える。「日本からGAFAに出ていってほしいとは全く思っていない。私もYouTubeをよく見ているし、Kindleを読んでいる。われわれは国産プラットフォームとして、もう1つの選択肢を提供したい。GAFAが日本の課題にフォーカスしたサービスはあまり提供しないと思うが、われわれはそこに思い切ってフォーカスする」と、日本企業ならではのサービスで差別化を図ることを強調した。
海外勢に対する強みは「全てのサービスで共通したユーザー体験、(アプリ1つで生活の全てをサポートするという)スーパーアプリ化すること」だと川邊氏は話す。同氏は「ユーザーファースト」も強調し、「統合したのに、サービスが手前勝手な理由で使い勝手が悪くなってはならない。(ヤフーとLINEで)シームレスなユーザー体験につなげる」と話す。
今後はヤフーとLINEの2社にとどまらず、出澤氏は「オールジャパンでさまざまな協業を呼び掛けていきたい。非ITの会社ともお付き合いをしている」と、さらに勢力を拡大する意向も話した。
ソフトバンクとのシナジー効果にも期待
親会社に通信キャリアの「ソフトバンク」を持つことも強みになりそうだ。例えばPayPayで行っているような、ソフトバンクとY!mobileのユーザーにポイント還元率を上げるなどの施策が、LINE関連のサービスでも行いやすくなる。
ソフトバンク自体も、通信以外の領域を拡充させる「Beyond Carrier戦略」を掲げており、ヤフーとLINEを掛け合わせた相乗効果が期待できる。中でも川邊氏が注目しているのが、ソフトバンクグループが力を入れているMaaS(移動系サービス)だ。「移動の部分でMONET(モネ)、DiDiなどで戦略的な取り組みをしている」と評価する。
なお、ソフトバンクグループの孫正義代表は、今回の経営統合にはほとんど関与していないことも明かされた。「事前の報道で孫さん主導という話が出ていたが、両当事者で話をして、その後ソフトバンクの宮内さん(宮内謙社長)とNAVER幹部に話をして、4社で進めてきた。孫さんはあまり関与していない。9月に、統合の検討をしたいと、私から(孫氏に)プレゼンしたところ、100%賛成であると。スピーディーにやれというお言葉をいただいた」と川邊氏は振り返る。その際、孫氏から「2つのサービスが連携することで、前よりも使いやすくなったとならないと、誰からも支持されない」との助言があったことも明かした。
2社のサービスの整理、すみ分けは「統合後に検討」
ニュースや決済などで両社が競合するサービスは多いが、統合後に個別のサービスがどうなるのかについては「統合が果たせた後に考える」(両氏)と述べるにとどめた。
ニュースについては「現時点でこうしてくという方針はない。(ニュースのサービスは)多くのユーザーに愛されているので、切磋琢磨指定やっていけばいいのではと思っている。日本のジャーナリズムが健全で発展的になっていく場として、2つのニュースサイトが貢献してくれれば」と川邊氏は述べた。
決済については、2社も含めてキャンペーン消耗戦が続いており、PayPayとLINE Payが統合するのが現実的な路線だが、これも未定。川邊氏は「政府がキャッシュレスの後押しをしているが、まだキャッシュ7割、レス3割という状況。その中でも圧倒的にクレジットカードが多く、続いてSuicaやWAONなど(の非接触決済)が続く。コード決済はまだ3~5%くらいなので、切磋琢磨して伸びていかないといけない」と課題を語った。
なお、2社の足並みがそろわず意見が対立するようなことが起きた場合、「プロダクト委員会で徹底的に議論する。そこで合意がない場合は、CPO(Cheif Product Officer)が決定する」と出澤氏。「両社の事業に関するすみ分けは、徹底的に議論をして決めていく」とした。
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