公約を果たしたドコモ、果たせなかった楽天/スマホは二極化が進む――2019年のモバイル業界を振り返る:石野純也のMobile Eye(1/3 ページ)
改めて振り返ってみると、2019年は携帯電話の「料金」や、スマートフォンの「端末代」に大きな注目が集まった。ドコモは公約通りに分離プランを提供したが、楽天モバイルの公約は果たされなかった。分離プランの拡大に伴い、端末の価格は見かけ上、高額化するようになった。
改めて振り返ってみると、2019年は携帯電話の「料金」や、スマートフォンの「端末代」に大きな注目が集まった1年だった。2つをまとめると「お金」と言い換えられるかもしれない。
一方で、2020年の5G商用化を目前控え、その全体像が徐々に明らかになった1年でもある。ドコモが9月に5Gのプレサービスを大々的に開始した他、KDDIやソフトバンクも5Gで実現できる世界観を全面に打ち出した訴求を行っている。商用化の免許も各社に付与され、エリア展開の仕方や基地局数が明らかになるなど、前哨戦が本格化した。
海外では、一足先に5Gが商用化しているため、グローバルで見ると5G対応端末も多数発表された。そのほとんどがスマートフォンだが、サムスン電子の「Galaxy Fold」やHuaweiの「Mate X」など、フォルダブルという新機軸を打ち出した製品も印象に残っている。2019年最後の連載となる本稿では、1年流れを振り返りつつ、モバイル業界の動きをまとめていきたい。
料金値下げや楽天の新規参入が大きな注目を集める
本稿の執筆にあたり、2018年末の連載記事に改めて目を通してみたが、驚くほど2019年の状況を言い当てていることに気付かされた。菅義偉官房長官の「4割値下げ」発言に端を発した総務省の政策が、各社の料金プランやサービスに落とし込まれた1年だったからだ。本当に公約通り、4割の値下げになったかはともかくとして、料金プランそのものは大きく変わった。
中でも影響が大きかったのは、分離プラン未導入だったドコモだ。2018年に最大4割の料金値下げを実現する新料金プランを導入することを先行予告していたドコモだが、その結果として4月には「ギガホ」と「ギガライト」が発表された。分離プランの導入に伴い、ハイエンドモデルの負担感を抑える「スマホおかえしプログラム」も開始した。
5Gの導入に向け、ドコモはギガホも段階的に強化している。12月からは、AmazonプライムやDisney+の料金が1年間無料になるバンドルキャンペーンを開始。12月27日には、容量を30GBから60GBへと倍増させる終了時期未定のキャンペーンも発表した。ドコモは、5Gの商用化に合わせ、無制限のデータ容量と特定のサービスをセットにしたプランを投入することを示唆しているが、ギガホにさまざまな特典を追加しているのは、その先行テストと捉えることができそうだ。
ドコモの新料金プランには、競合他社も対抗することを示唆していたが、真っ先に動いたのはKDDIだった。KDDIはauの新料金プランを5月に発表。既に導入していたauピタットプランを「新auピタットプラン」に改定するとともに、容量無制限の「auデータMAXプラン」や、月7GBまで利用できるゼロレーティング対応の「auフラットプラン7プラス」を追加した。中でも、auデータMAXプランは、5G時代を先取りする料金プランと位置付けられ、8月にはNetflixの利用料をセットにした「auデータMAXプラン Netflixパック」も発表した。
例年と比べて異例だったのは、10月に改正された電気通信事業法に合わせ、各社が料金プランのディテールを変更せざるをえなかったことだ。これは、総務省の定めたルールにのっとるために行われたもの。2年契約の解除料が最大1000円に、2年契約あり、なしの差額が月額170円までに定められたことを受け、これに対応した料金プランを各社が発表している。大手3社の対応は、明確に分かれた。
ソフトバンクは、改定した料金プランで2年契約そのものを撤廃。対するauは、auデータMAXプランを「auデータMAXプランPro」、新auピタットプランを「新auピタットプランN」などに改定しつつ、総務省の要請通りに2年契約がないときの料金を170円高く設定。2年契約を途中で解除した場合の違約金は、1000円に定めた。ドコモはこの中間で、auと同様の料金改定をしつつ、「dカードお支払割」を新たに追加することで、dカードで料金を支払っている場合のみ、事実上、2年契約がないプランに一本化している。
分離プランの導入までは、ある意味、既定路線で2018年のうちに予想できたことだが、2年契約の解除料や2年契約あり、なしの差額は、ドコモの新料金プラン発表後に突如、総務省が求めてきたもの。大手各社だけなく、100万契約超えるMVNOや、大手傘下のサブブランドも、急きょこれに対応しなければならなくなった。
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