公約を果たしたドコモ、果たせなかった楽天/スマホは二極化が進む――2019年のモバイル業界を振り返る:石野純也のMobile Eye(2/3 ページ)
改めて振り返ってみると、2019年は携帯電話の「料金」や、スマートフォンの「端末代」に大きな注目が集まった。ドコモは公約通りに分離プランを提供したが、楽天モバイルの公約は果たされなかった。分離プランの拡大に伴い、端末の価格は見かけ上、高額化するようになった。
大手3社も肩透かしを食らった楽天モバイルの「無料サポータープログラム」
一方で、果たせなかった公約もあった。楽天モバイルだ。2月には、コアネットワークと基地局側の双方を仮想化した「完全仮想化ネットワーク」の実験が成功したことを発表。2月にスペイン・バルセロナで開催された「MWC19 Barcelona」で、楽天の代表取締役会長兼社長の三木谷浩史氏や、楽天モバイルのCTO(チーフ・テクノロジー・オフィサー)を務めるタレック・アミン氏らが、大々的にその構想を披露した。三木谷氏いわく、完全仮想化ネットワークは「携帯電話業界のアポロ計画」だという。
ただ、当時から基地局の展開計画には疑問符もついていた。いくら完全仮想化ネットワークとはいっても、最後は電波をアンテナから飛ばさなければならず、物理的なスペースはどうしてもなくならない。そこからコアネットワークに接続するのも有線で、工事が必要になる。特に都市部はビルの屋上などに基地局を密に設置していかなければならず、サービス開始までに十分な用地を確保できるのかどうかが注目を集めていた。
その遅れが表面化し始めたのは、夏ごろのこと。総務省は楽天モバイルに対し、3月、7月と口頭で行政指導を行っていたが、3回目となる8月に、その事実が公表された。サービス開始までに行政指導が3回も続くのは異例の事態。結果として、9月には事実上のサービスイン延期を発表し、10月には5000人を抽選で集めた無料サポータープログラムを開始した。大手3キャリアにはできない低料金で新規参入し、料金値下げの起爆剤になるといわれていた楽天モバイルだが、その公約は果たされなかった。
楽天モバイルの料金プランについては、既存の大手3社も警戒感をのぞかせていた。ドコモの代表取締役社長、吉澤和弘氏は、7月に筆者のインタビューに応じた際に、10月1日の改正・電気通信事業法に合わせた料金プランの改定に向け、楽天モバイルへの対抗施策を加味することを語っていた。
KDDIの代表取締役社長、高橋誠氏も8月に開催された決算説明会で「楽天が秋に参入し、新た強い料金を発表する。そういうものを見ながら、下期の対応を進めていきたい」と、対抗を示唆している。サービス開始の事実上の延期は、ユーザーだけでなく、大手キャリア3社にとっても、肩透かしだったといえる。結果として、先に触れたように、3社とも、料金プランの改定は契約解除料の引き下げなどに止まっている。
もっとも、エリアに関しては、実際に使ってみると、予想を上回っている部分もあった。筆者はあくまで東京で試しただけで、他の地域まで同じとは限らないが、屋外のカバー率は思いのほか高く、「圏外」の文字を目にする機会は非常に少なかった。1つの基地局のカバー範囲を広げているためか、通信速度が低下する場所が多々あるうえに、屋内はauローミング頼りになってしまうものの、少なくとも東京都内では、それなりにつながるサービスにはなっていた。2020年に、本サービスへの早期移行ができることを期待したい。
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