エストニアに住む日本人が見た電子投票の実態と課題──ネット経由で本当に透明性を保てるのか:tsumug edge(3/3 ページ)
「電子国家」として世界の注目を集めている北欧のエストニア。その実態について、エストニアに移住した筆者が見た電子国家のリアルをお届けする。
不正のない選挙の先にあるもの
「電子投票をしているエストニアは不正がないから先端、以上」としたいところだが、その先にはさらなるステージがある。確かに選挙の不正、疑惑の発生する可能性は格段に減った。しかし今のエストニアの政治には、別の課題がある。
選挙の透明性はかなり高く、各選挙の結果が公開されているので是非見てほしい。2019年の議会選挙の結果はこちらの通りで、Eesti Reformierakond(Reform Party:改革党)が首位で議席を占めることになった。
選挙直後、改革党の党首であるKaja Kallas氏が、どのような連立政権を作るのか注目が集まっていた。ところが実際は連立与党を作らず、2位のKESK(中央党)と3位のEKRE(保守党)が連立与党を作り、中央党の党首が首相となった。これは現職の中央党の首相がその地位を維持するために保守党を巻き込んだ、という見方が大きいが、選挙で勝っても政権が取れない、ということもあるのだ。
IT大臣は着任早々、DVの疑いでわずか1日で辞任した。5月にはビールを買いに来るフィンランド人を誘致すべく酒税を減税したラトビアに対抗し、教育予算を削ってビールの減税を行い教育関係者を「教育の葬式」と題したデモ活動に至った。内務大臣はつい先日、世界最年少の女性首相となったフィンランドのマリン首相を中傷し、外交問題に発展。政治を機能させるためには選挙以外にも監視の目が必要である。
透明性の高いシステムを作ってきたエストニア人の気質には、冒頭のサウナの文化に通ずるところがある。お互いを信用しなければ透明にはできないし、透明でなければ信頼はできないのだ。その一歩を踏み出しているエストニアの政治にはいろいろと学ぶことが多い。
ちなみに、透明と言ってもサウナでは水着を着る。同性でも裸になるのはさすがにハードルが高いとのこと。もしかしたら、透明性の文化は日本の方が上かもしれないし、今後それがテクノロジーに反映されてくるのかもしれない、と少し期待している。
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