音声で買い物ができる「Vコマース」のインパクト 日本でどこまで普及するか(2/2 ページ)
キャッシュレス決済を加速させる手段として、海外では音声で買い物ができる「Vコマース」が注目を集めている。2020年1月に全米小売業協会が開催した「NRF2020」でも、Vコマースは大きく取り上げられていた。日本の小売業界の課題を踏まえ、Vコマースがどのようなインパクトを与えるのかを解説する。
日本の小売業界がVコマースを活用するために必要なこと
消費者はより便利な購買チャネルに流れる傾向があるため、中長期的にはVコマースの利用率が高まっていくことが想定される。そんな中、日本企業がVコマースを活用していくためには、以下の2点が求められる。
- Vコマースが自社のビジネスに与える影響の可視化
- 先進テクノロジー企業との協業
日常的に消費するもので、かつ実物を見なくても購入できるものがVコマースとの相性がよく、ニーズが高い。Amazon Payや英国の決済サービス「PaySafe」による、「Vコマースをどのような用途で利用したいか」という調査では、フードデリバリー、食料品、音楽・映画などのストリーミング、ホテル予約、チケット購入などが上位に挙げられている。このように、自社の事業ポートフォリオから相関性が高い領域を特定することが重要だ。
Vコマースを自社の顧客接点に取り込んだ際の、プラスの効果とマイナスの効果を、数値で可視化することも有効だ。
プラスの効果は、新規顧客獲得や既存顧客のロイヤリティー向上による効果にとどまらず、音声データを含む購買データによる経済的な効果を指す。マイナスの効果は、競合他社によって囲い込まれてしまった場合の損失を算出していく。
先進的なテクノロジー企業と協業することも重要だ。大手IT事業者であれば、独自の音声認識技術を開発し、プラットフォーム化することによって上述の通り音声データの獲得を目指すことが考えられる。LINEがAIを基軸にした音声認識に投資をしていたことは記憶に新しいが、非IT系の事業者の場合、自社技術として開発することは少々難易度が高い。
まずは有識者とともにAVS(Alexa Voice Service)などのSDK(ソフトウェア開発キット)によって既存のプラットフォームを活用しながら開発していくことが現実的だ。AVSを活用した国内の事例では、ジャパンネット銀行による残高確認サービスや、スシローによる持ち帰りすしの音声オーダーなど、多様なサービスが既に登場している。
現時点では日本国内での認知度が低いVコマースだが、国内の消費スタイルを変える可能性を秘めている。Vコマースという新しいチャネルが確立する前に、市場動向を見極めながら今後の戦略を検討していく必要があるだろう。
著者プロフィール
アビームコンサルティング 製造・コンシューマビジネス ビジネスユニット リテール&サービスセクター シニアコンサルタント 永澤英之(ながさわ ひでゆき)
金融、通信を経て2016年にアビームコンサルティングに入社。リテール業を中心としたコンシューマービジネス事業者に対し、経営計画策定、経営管理の高度化、業務改革、ITグランドデザイン等の多様なプロジェクトを経験。
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