5G時代にMVNOはどう戦っていくべきか 業界の識者がディスカッション:モバイルフォーラム2020(2/3 ページ)
日本でも間もなく5Gの商用サービスがスタートする。5Gが通信業界にどんな影響を及ぼし、MVNOのビジネスはどうなるのか? ジャーナリストの石川温氏、MM総研 常務取締役研究部長の横田英明氏、インターネットイニシアティブ 取締役の島上純一氏が議論した。
総務省が作ったルールは一貫性に欠ける
クロサカ氏も、競争環境、市場のデザインをどうするかで「政府や総務省の役割は大きい」としたものの、石川氏は政府や総務省に対し、「市場のデザインは、できていないといわざるを得ない」と手厳しい。総務省が作ったルールは一貫性に欠け、結果としてMVNOの足かせになっていると指摘する。
例えば、楽天モバイルは月額2980円の1プランをアピールしているが、「低容量のユーザー向けプランを作れと、総務省が言ったからキャリアは作った。ソフトバンクはそれがなければ『ウルトラギガモンスター+(現在のメリハリプラン)』1本で勝負し、Y!mobileと差別化していたと思う。大手キャリアが大容量プランの方向に進めば、大容量のMNOと低容量のMVNOですみ分けもできた」との考えを石川氏は述べ、「総務省は、もっとしっかり考えてほしい」と苦言を呈した。
4社目のキャリアが本当に必要かも、もっと議論した上で決めるべきだったと石川氏。「アメリカは4社体制から3社になろうとしている。通信料金も、4社体制のアメリカが一番高い料金という状況」であり、「4社だからMNOの料金が安くなるわけではない」と切り捨てた。
分離プランがIoTビジネスの足かせになる
横田氏は、楽天・三木谷社長の「MVNOはMNOの奴隷」という発言を挙げて、現時点での「MVNOのサービスの自由度は低い。勝負のポイントは価格だけになっている」と述べた。
ただ、5Gになると、「顧客のニーズに寄り添うような形でMVNOがサービスを提供していく環境が生まれてくるようになる」と横田氏は見ている。そうなれば、ライトMVNOとして続ける事業者とすみ分けができる環境になる。
島上氏は「MVNOには、さまざまな事業形態がある。コンシューマー向けのMVNOは厳しい状況だが、通信以外のサービスで特色を出すこともできる。通信を社会インフラとして、MVNOがより使いやすく提供していくようなこともできる」と、MVNOの可能性を語った。
5Gでは、MNOが対応できないようなサービスを、小回りの利くMVNOが担うことも考えられる。例えば、「ポケトーク」のように通信が入ることで便利になるモノやサービスが、5Gでさらに増えていく可能性もある。ただし、そのときに通信料金と端末代を分ける分離プランがネックになると石川氏は懸念する。
「端末の中に通信が入っているからこそ、いろんな可能性がある。ユーザーが通信契約を意識せず、端末を買えば2年なり3年なりの通信が付いてくる手軽さが魅力になり、それによっていろんな市場が広がると思う。分離プランの考えとは矛盾する」(石川氏)
この指摘に対し、クロサカ氏は総務省の研究会に参加した当事者としてコメントした。
「石川さんの指摘は非常に正しいと思っている。消費者保護ワーキンググループでも、IoTデバイスの話をした際に何度か議論した。IoTはまだ黎明(れいめい)期の市場なので、今回の規制とは別枠にしようと申し上げた。品行方正に正しくすることばかり重視すると、イノベーションを止めてしまう。先回りして規制することは絶対しないということは、総務省に理解してもらったと思う」(クロサカ氏)
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