ソフトバンクの5G戦略を読み解く エリアが“超限定的”なのはなぜ?:石野純也のMobile Eye(1/3 ページ)
ソフトバンクは3月27日に「SoftBank 5G」のサービスをスタートさせる。しかし開始当初のエリアや夏以降に拡大するエリアは、お世辞にも広いとはいえない。むしろ東京23区ですら、超限定的な“5Gスポット”でしかない印象を受ける。
5Gの商用サービス開始を一番乗りで発表したのは、ソフトバンクだった。同社は3月27日に「SoftBank 5G」のサービスをスタートさせる。それに伴い、5G対応のスマートフォン4機種も一斉に発表した。一方で、開始当初のエリアや夏以降に拡大するエリアは、お世辞にも広いとはいえない。むしろ東京23区ですら、超限定的な“5Gスポット”でしかない印象を受ける。ここからは、既存の基地局や周波数を最大限活用したいソフトバンクの思惑が垣間見える。
端末は4機種展開、目玉として用意されたOPPOの「Reno3 5G」
5Gのサービス開始に合わせ、端末はまず2機種が発売される。シャープの「AQUOS R5G」と、ZTEの「Axon 10 Pro 5G」がそれだ。4月には、デュアルスクリーンケースで2画面化できるLGエレクトロニクスの「LG V60 ThinQ 5G」が、7月にはソフトバンクとして初採用となるOPPOの「OPPO Reno3 5G」が発売を控える。初の5Gスマートフォンとして重視したのは、「安定感のあるものと、ちょっと新しいもの」(常務執行役員 菅野圭吾氏)というラインアップだ。
例えば、AQUOS R5Gは「ユーザーに安定した形で喜んでいただける」(同)鉄板の端末という位置付けになる。過去の経緯もあり、ソフトバンクには特にシャープ端末のユーザーが多い。5Gでも、“いつもの1台”を選びたいユーザーに向けたのが、この端末といえる。一方で、AQUOS R5Gは高機能な半面、オンラインショップでの価格が約13万円と、4Gのときより割高になっているのも事実。残債の半額を免除する「トクするサポート+」を使っても、6万円台半ばだ。
より安価な5Gモデルを求めるニーズに応えるのが、同時に発売される、Axon 10 Pro 5Gだ。同モデルも、プロセッサはSnapdragon 865を採用しており、背面にはトリプルカメラを搭載するなど、スペックは高い。ただし、おサイフケータイや防水・防塵(じん)といった機能、仕様には対応していない。その分、価格は9万円をわずかに下回り、トクするサポート+を使えば、4万円台半ばで購入できる。ソフトバンクの5Gを一番乗りで体験したいユーザーが、より気軽に購入できる端末といえそうだ。
とはいえ、それでもAxon 10 Pro 5Gはハイエンドモデルであることに変わりはなく、ミドルレンジモデルと比べて価格は高い。改正電気通信事業法以降、ハイエンドモデルの販売には急ブレーキがかかっている状況を考えると、より安価な端末が必要になる。こうしたニーズに応えるのが、OPPOのReno3 5Gだ。同モデルは「ソフトバンクが国内独占で販売する」(代表取締役 副社長執行役員兼COO 榛葉淳氏)ラインアップの目玉だ。価格も「エントリーモデルという位置付けで、驚くような低価格」(同)だという。
菅野氏によると、OPPOとは、同社が日本に参入して以降、「ずっと議論をしてきた」。ソフトバンクにとっては新たなメーカーになるため、ネットワークの世代が代わるタイミングで導入を決めたという。2019年12月に発売された「LG G8X ThinQ」は、ハイエンドモデルながら5万円台という低価格で話題を集めたが、これは新たなメーカーを導入するにあたり、「ユーザーベースを作っていこうと、思い切った価格でやらせていただいた」からだ。詳細な価格は明かされなかったが、同様に新規参入メーカーとなるOPPOのReno3 5Gも、攻めた価格になることが期待できそうだ。
一方で、菅野氏が語る「新しいもの」にあたるのが、LGのV60 ThinQだ。「新しいコンテンツ(5G LAB)も一緒に発表したが、それを十分に楽しめる端末として、LGのV60 ThinQ 5Gを発表した」というのが投入の狙いだ。マルチスクリーンで多視点の映像を楽しめるのは、確かに5Gらしい先進性がある。12月に投入したG8X ThinQと同様、片側をゲームのコントローラーとして使うこともできるため、5G LABに含まれるクラウドゲームサービスの「GeForce NOW Powered by SoftBank」とも相性がよさそうな端末といえる。
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