ソラコムがコンシューマー向けeSIMサービスを提供する狙いは? 玉川社長に聞く:MVNOに聞く(2/3 ページ)
ソラコムが、コンシューマー向けeSIMサービス「Soracom Mobile」を提供開始した。iPhone用にアプリを提供しており、プランの購入からプロファイルの発行までを、端末内で完結できるのが特徴だ。IoT向けの回線を提供してきた同社が、なぜこのタイミングでコンシューマー向けのサービスを提供するのか。
Appleと協業してUXをシームレスに
―― Androidという意味では、日本で発売されている端末として、Pixel 4シリーズもeSIMに対応しています。現状、Soracom MobileはiPhoneとiPadだけの対応になっていますが、Pixelはいかがでしょうか。
玉川氏 今後考えたいですね。Android端末も技術的にはできます。一方で、Androidの場合、多種多様な端末が次々と出てくるため、対応の仕方はしっかり考えなければなりません。そのため、現時点では要望次第で、出すことは決めていません。iOSの場合、(端末の違いは)Appleが吸収している部分がありますが、Androidはそこが結構難しい。われわれ自身ではアプリを出していませんが、弊社のeSIMを使ってやってくださっている会社があり、その声を聞いても、やはり挙動が読めず、サポートが難しいという話があります。
また、eSIMにはアプリからシームレスに書き込みまでできるパターン以外に、アプリはあってもそこにQRコードを表示するだけというパターンもあります。ここをシームレスにやれるのは、現状だとiOSしか選択肢がほぼありません。iOSですら、シームレスにできている会社は非常に少ないですからね。
Soracom Mobileをやるときに意識したのは、UXをいかにシームレスにするかです。その1つとして、Appleと協業することでアプリからeSIMを書き込めるようになりました。ここが実は、簡単に見えて簡単ではありません。iOSでは、モバイル通信の設定からeSIMを書き込めますが、この部分を触れるのが、通常だとAppleだけだからです。最初はQRコードをアプリで出し、裏側でそれをコピーして書き込めばいいと思っていましたが、それすらできませんでした(笑)。
それができるならということで、差別化のため、UXを洗練させるポイントとして、Apple IDやApple Payとも連携したら、うまくできました。iPhoneユーザーであれば、アプリを入れ、Face IDの認証だけでIDを登録し、購入までできます。これは結構、価値があることだと思います。調べた中では、Apple IDやApple Payだけで完結できるものは、他にまだ1つもありません。ちなみに、Appleのサイトにも、eSIMサービスを提供している会社として、Soracom Mobileが入っています。
―― (AppleのeSIM対応通信事業者のサイトを見つつ)あ、本当だ。「グローバルなサービスプロバイダ」の中に、Soracom Mobileが入っていますね。ということは、「不明なキャリア」のアラートも出ないということですね。
玉川氏 はい。APN設定もローミング設定も不要です。テザリングもAPN設定なしで利用できます。ちなみに、ピクトのキャリア名には「Soracom」と表示させることもできましたが、どのキャリアに接続しているのかが分かるようにするため、接続先のキャリア名を表示します。Soracomの表示を失うのはちょっと寂しいのですが(笑)、ユーザーのことを考え、そのようにしました。
ある程度速度は絞っているが、遅延は抑えられる
―― 確認ですが、eSIMのベースになっている通信サービスは、グローバル向けのIoT SIMと同じという理解でよろしいでしょうか。とすると、あちらは速度をIoT向けに絞っていたと思いますが、Soracom Mobileはフルでスピードが出ないのでしょうか。
玉川氏 はい。IoT SIMはIoT向けということで、あえて速度を絞っているところがあります。歴史的経緯で言うと、ドコモ回線のサービスは速度によって値段を変えていました。IoTの用途の中では、速度はいらない、むしろ出ない方がいいというサービスもあったからです。ただし、Soracom Mobileは別ラインとして出しているので、その速度設定には引きずられないようになっています。
―― そこはスマートフォン向けにチューニングしているということですね。もう1つ、グローバル向けのIoT SIMでは、日本や海外にランデブーポイント(通信の接続拠点)を設置することで、遅延が低下するという仕組みがあるとうかがっています。これはSoracom Mobileでも同様でしょうか。
玉川氏 そこは継承しています。現時点では、日本、欧州、アメリカに出口があり、そのエリアで使っているお客さまはそれぞれのランデブーポイントを抜けるため、遅延に対して恩恵があります。コネクティビティはグローバルでありながらも、日本と欧米では、ローカル並みのレイテンシ(遅延)で使うことができます。
―― 国際ローミングだと日本を経由してしまうので、意外と遅延が大きく、体感が悪くなってしまうことがあります。地域限定ですが、それがないのはうれしいですね。
玉川氏 グローバル用のIoT SIMを発売したのは2016年ですが、これまでの蓄積が生きています。例えばPOCKETALKは海外のお客さまにも使っていただいていますが、対応する国やキャリアを増やしてほしいというニーズがありました。日本では、3キャリアのカバレッジがかなり広く、分かりにくいかもしれませんが、欧米だと、この場所だとこちらのキャリアはいいが、こちらはダメというようなことが普通にあります。1キャリアだけだと、場所によってはつながらないこともあり、IoT SIMは244キャリアに対応しています。欧州では2Gにまで対応していますし、今後は5Gにも対応していく予定です。こうしたIoTでのフィードバックが、Soracom Mobileにも生きています。
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