ローカル5Gの課題は「コスト」と「ノウハウ」 ローカル5G普及研究会の活動で見えたもの(2/3 ページ)
NPO法人のブロードバンド・アソシエーションが、「ローカル5G普及研究会」を設立した。ローカル5G導入プラットフォームの成功モデルを確立することを目的としたもの。研究会とその下部組織となるワーキンググループの活動から、ローカル5Gの課題が浮き彫りになった。
「ローカル5G オープンラボ」で実証実験
ローカル5Gオープンラボについては、実証試験ワーキンググループの主査を務めるNTT東日本 ネットワーク事業推進本部 高度化推進部長の伊藤陽彦氏が詳しく紹介した。
ローカル5Gオープンラボでは、さまざまな参加企業、自治体、大学と共創し、ローカル5Gの実証に向けて活動するとともに、AIやIoTと組み合わせた社会実証に向けた「Smart Innovation Lab」とも連携し、実証実験を行っている。
現在使っている設備は、28GHz帯の周波数を使ったノンスタンドアロン5Gの構成。東京・調布市にあるNTT中央研修センタと東京大学 本郷キャンパスに基地局を設置し、EPC装置からデータセンターへとデータを転送している。これらの設備を参加企業と共創しながら使い、新しいサービスを実現しようと試みている。
ローカル5G オープンラボに関する問い合わせ、参加の応募はWebサイトから行える。利用料は基本的には無料で、互いに持ち寄り、足りないものは購入していくスタイルだ。実際、数十という多くの自治体、大学などから問い合わせがあるという。
求められているものの多くは、安定していて高速な通信環境だ。また、映像を撮り、それをデータセンターで分析したいという要望も多いという。中尾氏が実験したように送信側の帯域を増やし安定的に送る方法が求められており、これについては「ローカル5Gのやり方が有利」だと伊藤氏は述べている。
コロナ禍であまり試験ができない状態ではあるものの、発表会では、ローカル5G オープンラボで行われた電波伝搬試験について紹介された。隣のビルのガラス越しに電波を吹いて、電波がどのように飛ぶかを見たものだ。
電波強度は、やはり基地局に近い部分で大きな利得を得ている。しかし壁があっても電波は結構回り込んでいるという。なお、受信時のスループットは電波の利得と同じではなく、「装置によって違いがあり、速かったり遅かったりと安定しない」(伊藤氏)。傾向としてはアンテナに近いところが高速だが、「28GHz帯は減衰が激しく、安定的に送るためには反射などを考慮して設計する必要がある」(伊藤氏)
NTT東日本のラボでは屋外でも測定している。実験装置は最大通信速度が400Mbpsの構成だったが、見通しさえよければ最高速度に近い数値が簡単に出ることが分かったという。「やはり見通しがもっとも大きなポイント。反射の仕方を工夫すると、ビル陰でも速度が出るかもしれない」(伊藤氏)と手応えを感じている。
将来的に、ローカル5Gは公衆5Gではカバーできない場所、もしくは提供までに時間がかかる、主にルーラルエリアに展開されていくと伊藤氏は予想。そうした地域で行われる農業や畜産などで、例えば映像を使った技術を導入するにあたってローカル5Gは有利だとしている。
それ以外にも多くの分野での利用が考えられ、伊藤氏は「設備を作って、さまざまな人たちと新しいビジネスを考えている。ローカル5Gの特徴、さらにユーザーごとにカスタマイズできるというメリットを生かして新しいものを作っていきたい」と意気込みを語った。
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