ローカル5Gの課題は「コスト」と「ノウハウ」 ローカル5G普及研究会の活動で見えたもの(3/3 ページ)
NPO法人のブロードバンド・アソシエーションが、「ローカル5G普及研究会」を設立した。ローカル5G導入プラットフォームの成功モデルを確立することを目的としたもの。研究会とその下部組織となるワーキンググループの活動から、ローカル5Gの課題が浮き彫りになった。
一般の民間レベルで免許申請は身近ではない
ローカル5G普及研究会の下部組織、技術ワーキンググループの主査を務めるNEC デジタルネットワーク事業部 上席事業主幹の藤本幸一郎氏は、技術ワーキンググループの活動について紹介した。
ローカル5Gを実際に構築するには多くの課題があり、「各プレイヤーが利用するプラットフォームは、まだまだいろいろな試作をやっている段階。技術ワーキンググループがプラットフォームを作っていきたいと思っている」と藤本氏。始まったばかりでコストもかかるローカル5Gだが、技術ワーキンググループが「最適なシステムを提供し、技術的に検討をしてノウハウをためていく。課題を具体的に解決する場所」になるという。
藤本氏は、ローカル5Gは「自分たちでネットワークを作ること」が長所だという。「自分たちでシステムを作れば信頼性も調整できる」。
例えば、ソフトバンクが提供を予定している「プライベート5G」のように、大手キャリアにはキャリアの設備をプライベートユースに貸し出してくれるサービスもある。「非常にプライベートで、ローカルで使いやすいようなネットワークが使える可能性はある」と藤本氏も述べている。一方、ローカル5Gは「自営のネットワークで、自分が所有者。自分の持ち物になる。手作りでカスタマイズできるところに大きな意味がある」。
ただ、中尾氏、伊藤氏も言う通り課題は多い。「そもそも新しい分野なので、適合した機器が提供されているのか。あるとしても分からないことが多く、難しい。しかも高価」(藤本氏)
ローカル5Gが使う周波数についても、今まで携帯電話で使われてきた電波より高い周波数で、実証試験は全て新しい経験だ。
また、ローカル5Gの免許が交付されるのは、これまで免許の申請経験のない人たちだ。「一般の民間レベルで免許申請は身近ではない。何ができなくてはいけないのか、何を用意すればいいのか、買ってくる道具は何か、何が必要なのか」など、分からないことばかりだ。
そして最後はコストの問題になる。「機器の価格、設置コスト、維持するランニングコストがいくらになるのか。また、免許も数年に1回更新があり、それもコストになる。そういったことを課題として認識して、解いていくことになる」(藤本氏)
技術ワーキンググループでは、技術的な問題をクリアにし、価格の妥当性も担保した、ユーザーが使いやすいプラットフォームを提示していきたいと藤本氏は語った。「場合によっては少し高いかもしれないけれど、非常に高い要求条件を満たすということは、それだけ大きな価値がある。そういう大きな価値を生み出すローカル5Gのプラットフォームを提供していくことをゴールにしたい」(藤本氏)
そのプラットフォームは「オープンなハードウェア、ソフトウェアでなくてはならない」、開発中に出てくる技術は「価格の低廉化に結びついていくので、標準化もしていかなくてはならない」とも語っていた。
基地局の数で金額が変わる
5Gは大手キャリアが3月末にサービス提供を始めたばかりで、ローカル5Gも始まったばかりだ。注目度は高く、このローカル5G普及研究会のオンライン設立発表会も1000人以上が視聴したとのことだが、課題も多いと感じた。その中でも最大の課題、興味はやはりコスト。視聴者からの質問でも、ローカル5Gはどれくらいのコストで導入できるのかという興味、心配が強い印象を持った。
技術ワーキンググループの主査を務める藤本氏は、「Wi-Fiネットワークの構築でも、アクセスポイントの数でコストが大きく変わるように、ローカル5Gでも基地局の数で金額も変わると思う。いくらでできるということは言いにくい。将来的には、Wi-Fiネットワーク構築のコストに近づいてくれるといいなと思っている」と回答していた。
課題は多いが、自分好みの5Gネットワークを所有できることには大きな魅力がある。大手キャリアの5Gサービスの展開拡大とともに、ローカル5Gの普及にも注目していきたい。
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