「ホーム画面」と「アプリの在り方」が変わる iOS 14が“飛躍的な進化”といえる理由:石野純也のMobile Eye(2/2 ページ)
iOS 14は、iPhoneやiPadが10年以上かたくなに守ってきた“ホーム画面の流儀”を変えた。アプリを自動でまとめる「App Library」や、QRコード、NFCのスキャンで呼び出せる「App Clip」など、アプリの在り方を徐々に変えていこうとしているAppleの思惑も垣間見える。iOS 14から見えてきた、Appleの戦略を読み解いていきたい。
App Clipで変わるアプリの配布スタイル、リアルなサービスには朗報か
iOS 14では、App Clipという新方式のアプリも用意されている。これは、いわばミニアプリのようなもので、本体にインストールせずに利用することが可能。フェデリギ氏によると、アプリのサイズは10MB以下に抑える必要があるという。同氏が「軽くて速く、簡単に見つけられるので、必要なときに素早く使える」と語っていたように、外出先などで使う、リアルなサービスと相性がいいアプリといえそうだ。
WWDCで紹介されていた電動キックボードのサービスはその代表例。通常であれば、こうしたサービスは事前にアプリをインストールし、ユーザー登録を済ませた後、アプリを起動して利用しなければならない。街中で電動キックボードの本体を見つけても、すぐに利用できないというわけだ。
これに対しApp Clipの場合、電動キックボードに掲載したQRコードやNFCを読み取ると、即座にアプリの一部がダウンロードされ、利用することができる。サービスへの導線が大きく変わるというわけだ。ユーザー登録には「Sign In with Apple」が利用でき、Apple IDがあればログインは不要。決済はApple Payで行える。
電動キックボード以外では、カフェのテークアウトやレストランの予約といった事例も紹介されていた。Webやマップなどのアプリからだけでなく、先に挙げたようにQRコードやNFCもトリガーにできる。小売店などがマーケティングツールとして独自のアプリを作るケースは多いが、App Clipを上手に活用すれば、そのハードルを大きく下げることができそうだ。もちろん、App Clipからフルバージョンのアプリをダウンロードさせることも可能だ。
スマートフォンは正面から見ると、ほとんどがディスプレイになるため、ホーム画面のデザインやUIの変化は、文字通り“顔”が変わることにつながる。同時に、アプリの強力なエコシステムは、iPhoneやiOSの“顔”になっていた。iOS 14は、その顔を大きく変えるOSといえる。基調講演の冒頭では、CEOのティム・クック氏が「本日はそれぞれのプラットフォームを飛躍的に進化させる」と語っていたが、iOS 14を見ると、その言葉が誇張ではなかったことがよく分かる。
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