「ドローン無線中継システム」で災害時のエリア復旧や遭難者特定を ソフトバンクがデモを披露(3/3 ページ)
ソフトバンクは、双葉電子工業、東京工業大学 工学院 藤井輝也研究室とともに、「ドローン無線中継システムを用いた遭難者位置特定システム」を開発。災害時に土砂やがれきの下の遭難者などの救助に活用できる。ソフトバンクが開発した「係留気球無線中継システム」にはないメリットとは?
遠隔運用システムでより素早く対応
遭難現場でドローンの中継システムを運用するには、システムの運搬者、無線中継システムの運用者(携帯電話事業者)、ドローン操縦者の3者が現地に集合する必要があり、運用までに時間がかかっていた。
そこで、より迅速に運用できるようにするため、中継運用者とドローン操縦者は作業を遠隔でできる遠隔運用システムを開発。現地にはシステムの運搬者のみが出向けばいいようになり、運用開始まで大幅な時間短縮が可能になるという。
ドローンの遠隔操縦には、Raspberry Piで開発した携帯端末をコントローラーやドローンに搭載し、通常、Wi-Fiでやりとりしている情報をモバイル通信経由でやりとりする。なお、スマホでテザリングしてもいい。
VPNサーバを介して認証し、ドローンとコントローラーの端末をペアリング。接続されたら、VPNの通信経路を通してドローン飛行制御信号が安全に送信される。遠隔操作は遅延が心配だが、ドローン制御信号は、通常のトラフィックより優先して通信でき、ほぼ現地にいてWi-Fiで接続して操作しているのと変わらないくらい、リアルタイムに操縦できるという。また、Wi-Fiから移動通信網を使った操縦、現地から遠隔操縦への切り替えなど、自在に操縦モードを切り替えることが可能になっている。
電波法改正で商用運用が可能に
携帯電話システムを運用するには無線局の免許が必要だ。これまで、気球やドローンを使った無線中継システムについて、電波法で規定がなかった。ソフトバンクは総務省と話し合いながら電波法の改正を働きかけてきたという。
係留気球の無線中継システムについては、くしくも東日本大震災からちょうど5年後の2016年3月11日に、電波法関係審査基準が改正され、実用で使えるようになった。ただし、従来の基地局は地上に固定されたものではくてはいけないという決まりがあり、気球の無線中継システムについては、自然災害と利用訓練時にしか使えないという条件が付いた。
ドローンの無線中継にかかる制度は2020年6月22日に、係留気球と同じ電波法関係審査基準が改正され、係留気球と同じ無線装置をドローンに載せて使うことができるようになった。ただ、耐風速が係留気球は25m/秒だが、ドローンは10m/秒になっている。
関連記事
ソフトバンクがイベント対策に「車載係留気球Wi-Fiシステム」を開発――コミケ86で出動
ソフトバンクモバイルが、Wi-Fi基地局を地上数十メートルの高さに揚げる「車載係留気球Wi-Fiシステム」を屋外の大規模イベント会場向けに開発。「コミックマーケット86」で初めてサービスを提供する。災害時にドローンを利用した「移動通信中継局」 京セラらが開発
京セラとブルーイノベーションは、1月9日にドローンを利用した「移動通信中継局」の共同開発で合意。災害現場などの携帯電話の電波が届かないエリアへ通信中継局機能を持つ複数のドローンを飛行させ、平常時と変わらない通信を可能とする。5G、ドローン、ARスマートグラスを活用した遠隔ビル外壁点検 NTTコムウェアらが実証実験
NTTコムウェアら5社は、5GでのドローンとARスマートグラスを活用した遠隔ビル外壁点検の実証実験に成功。点検熟練者が作業現場へ赴く移動時間の削減や、熟練者による複数現場の並行対応による効率的なノウハウ継承などへ寄与できるとしている。KDDIや富士通、災害対応で「ヘリコプター基地局」の実証実験
KDDIらは、小型携帯電話基地局を搭載したヘリコプターを用いて通信エリア外のでの通話やSMSを行う実証実験に成功。災害時における携帯電話の利用が困難なエリアでの通信手段確保と迅速な救助要請対応が可能になるとしている。5Gドローンで山岳登山者の見守り実証実験 KDDIら
信州大学、長野県駒ヶ根市、KDDI、プロドローン、中央アルプス観光は、10月16日に駒ヶ岳ロープウェイの千畳敷駅周辺で5Gドローンを活用した山岳登山者見守りの実証実験を実施。5Gタブレットなどを搭載したドローンが自律飛行で飛来し、現場の状況を把握・伝送する。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.