富士通のローカル5G戦略を聞く ユースケース開拓、導入ハードルを下げる取り組みも:5Gビジネスの神髄に迫る(1/3 ページ)
富士通は日本で初めてローカル5Gの商用無線局免許を獲得するなど、ローカル5Gの市場開拓に向けた取り組みに力を入れる。総務省の「第5世代モバイル推進フォーラム」など、ローカル5Gの普及を後押しするための会合などに積極的に参加していた。パートナー企業と、ローカル5Gを活用した具体的なユースケース創出とソリューション開発を進める「ローカル5Gパートナーシッププログラム」も打ち出した。
富士通は日本で初めてローカル5Gの商用無線局免許を獲得するなど、ローカル5Gの市場開拓に向けた取り組みに力を入れる企業の1つだ。ローカル5Gの事業化に向けては課題が多く存在するが、富士通ではそうした課題をクリアするため、どのような取り組みを進めているのだろうか。5G Vertical Service室 シニアマネージャーの宮本共殖氏に話を聞いた。
28GHz帯と4.7GHz帯は場面に応じて使い分け
通信事業をはじめ、幅広い事業を展開する富士通も、ローカル5Gに参入した企業の1つ。同社は2020年3月27日に国内初となる商用のローカル5G無線免許を取得し、「富士通新川崎テクノロジースクエア」でローカル5Gシステムの運用をいち早く開始するなど、ローカル5Gのビジネス活用に向け積極的な取り組みを見せている。
富士通はもともと、総務省の「第5世代モバイル推進フォーラム」など、ローカル5Gの普及を後押しするための会合などに積極的に参加していた。そうしたことから国からの後押しもあり、ローカル5Gの制度化以前から参入に向けた準備を進めていた。
また富士通は、通信事業以外にもさまざまなICT関連事業を手掛けており、多くの業界に関するノウハウを持っている。同社が持つ技術や知見が、ローカル5Gによる業務変革の実現に役立つということも、参入の狙いとしては大きいようだ。
とはいえ、現在ローカル5Gに割り当てられているのは広範囲をカバーしにくいミリ波の28GHz帯のみで、4Gと一体で運用するノンスタンドアロン(NSA)運用が求められることから事業化のハードルが高いとの声も少なからず聞かれる。だが宮本氏によると、同社では既に28GHz帯を活用したビジネスを始めているというのだ。
契約上の理由もあって具体的な事例を話すことはできないそうだが、「必ずしもSub-6でなくてもいい環境では利用シーンがあると考えている。特に帯域幅を広く取れ、高速大容量を実現しやすいという特徴を生かし、利用環境やユースケースを考慮した選択をしている」とのこと。高速大容量を生かした高精細映像の伝送と、映像のAI分析に関するニーズは高いことから、ローカル5Gの通信環境を用意した「FUJITSU コラボレーションラボ」で検証を重ね、ノウハウを蓄積しながらビジネスを進めているという。
一方で、2020年内にはローカル5Gの本命とされるSub-6の帯域である4.7GHz帯の割り当てが決まる予定であり、割り当てに期待する声は非常に多い。富士通でも4.7GHz帯の免許獲得を視野に入れており、4.7GHz帯の基地局は自社開発を進めているという。
ただ、4.7GHz帯のメリットは、エリアよりも5G単体での運用となるスタンドアロン(SA)構成になることの方が大きいという。SA構成であれば4Gの設備が不要になるため導入・維持コストを減らせるというのが、その大きな理由だ。
もっとも顧客からしてみれば、ローカル5Gを導入して業務改善などやりたいことが実現できればよく、「NSAかSAかという構成にこだわることはない」(宮本氏)とのこと。それゆえ周波数帯や運用方式によらず、顧客のニーズに応じた最適なシステム構築を重視するとしている。
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