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スマホカメラのトレンド考察:新鮮だった「Xperia 1 II」のアプローチ、一番面白かった「Galaxy Z Fold2」荻窪圭の携帯カメラでこう遊べ(1/2 ページ)

2020年のスマートフォン向けカメラは「コンピューテーショナルフォトグラフィ」全盛だった。複数の撮影を行い、それらをコンピュータによって解析し合成して1枚の写真を作り出すこと。そんな中で逆のアプローチをしてきた「Xperia 1 II」が面白かった。

 技術がある程度まで熟成すると、そこから先の進化は緩やかになっていく。緩やかになると買い替えのサイクルも長くなり、最終的には5年くらいで落ち着くかなと思っている(個人の感想です)。

 スマートフォンのカメラもそろそろその域に近づいてきたかな、と思いきや、まだまだ進化の道は残されているようで、実に面白いのである。

 そんなわけで、2020年のスマートフォンカメラ界を振り返りつつ、2021年への展望を述べたい。

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コンピューテーショナルフォトグラフィ!

 やっぱ最初はこれだよね。コンピューテーショナルフォトグラフィ(やたら文字数が多いのは難点だけど)。時々「コンピュテーショなるフォトグラフィ」って変換されたりしてそれはそれで悪くないなと思ったりするくらい。

 コンピューテーショナルフォトグラフィという言葉自体はそう新しいものではないし、広義では「光学的に得た信号」に「コンピュータが処理をして」作り出した写真ってことになるので何でもかんでも含まれてしまう。そんな中で最近、GoogleやAppleが言う「コンピューテーショナルフォトグラフィ」とは、複数の撮影を行い、それらをコンピュータによって解析し合成して1枚の写真を作り出すこと、というニュアンスでいいかと思う。


Appleが発表会でやたら強調していた「コンピューテーショナルフォトグラフィ」

 代表的なのが、1回のシャッターで設定を変えたり変えなかったりしながら超高速連写して合成することで、1枚の写真に広い幅の明暗さを閉じ込めたり(HDR)、合成によるノイズ低減とHDRを合体させたり(夜景モード)が代表的だ。他にもAIを使ってシーンを解析して人物や青空や森など、それぞれに最適な処理を施したり、顔を明るくしたりといった細かい処理をして1枚の写真を作り出している。背景ぼかし処理もその1つだ。

 今は処理が高速化されたことで、内部でそういうややこしいことをしているなんて気にせず普通に撮れる。

 2020年に出た製品ではiPhone 12系やPixel 5なんかがそうだけど、もちろん夜景モードを流行らせたHuaweiのハイエンド機もバリバリにやっているし、Galaxyも得意だ。

 Xperia 1 IIも通常のカメラアプリではオートHDRやっているし。

 で、こういう視点で見ると、複雑なことをやっている感あってすごく優秀なんだけど、時々やりすぎてわざとらしい絵になることもあるのがiPhone 12系。HDRの使い方がうまいのがGalaxy系。比較的ナチュラルな絵を出してくれるのがPixel系、というイメージ。

 侮れないのがOPPO。2020年モデルは随分安定度が増して全体にレベルアップしたと思う。

Xperia 1 IIのアプローチも新鮮だった

 コンピューテーショナルフォトグラフィ全盛期にあって、逆のアプローチをしてきたのがソニーのXperia 1 II。といっても、Photography Proという専用アプリを使った場合の話。

 すごくデジタルカメラっぽい写真を撮れる、という言い方ができちゃうのも不思議な話ではあるのだが、コンピューテーショナルフォトグラフィ的な写真の難しさは、無理にダイナミックレンジを広げるなどすると、わざとらしい絵になりやすいところで、逆にPhotography Proで撮るときは露出補正などを使って撮る側がコントロールする必要はあるし、背景が白飛びしちゃったり肝心なところが暗く写ったりしがちだけど、写真を見慣れている人にはその方が自然だと感じる。


Photography Proの画面。シャッタースピード優先AEや動物瞳認識が使える

 難しいところなので、標準カメラアプリとデジタル一眼のように自分でコントロールして撮影をしたい人向けのPhotograpy Proとアプリを分けたのは良いことだと思う。端末任せでさっと撮りたいときと、きっちり撮りたいときでアプリごと切り替えちゃうってのはアリだ。

カメラの数はいくつあると良い?

 ハイエンド機はトリプルカメラが当たり前になったが、その内訳はそれぞれ。基本は「超広角」「広角」「望遠」だが、それぞれの画角は端末によって異なる。


トリプルカメラがやたら目立つiPhone 12 Proと12 Pro Max

 GalaxyとiPhoneは超広角が35mm判換算で「13mm」相当と一番広い。Xperia 1 IIやPixel 5が「16mm」相当。面白いのがHuaweiのP40 Proで、超広角カメラだけアスペクト比が「3:2」なのだ。

 広角は35mm判換算で「26mm」相当の端末が一番多いが、Xperia 1 IIは24mm相当とちょっと広角気味。広角カメラは最もよく使うカメラであり、各社ともそこに一番性能の良いセンサーとレンズを持ってきている。

 常用する画角としては、24mmはちょっと広角過ぎるかなという気がする。26〜28mmくらいが使いやすいだろう。

 望遠カメラはバリエーションがグッと増えた。広角カメラの2倍だったり2.5倍だったり3倍だったり、中には5倍なんてものもある。

 一見、望遠に強いと思うと魅力的だが、実際には広角カメラと望遠カメラの間が空きすぎるとちょっと使いづらいし、望遠になればなるほどカメラをきちんと保持しないとブレやすくて狙いも付けづらくなる。「スマホでこんなの撮れるなんてすげー」と思うにはいいけど、実用性は微妙だ。広角カメラの2〜3倍くらいが扱いやすい範囲かと思う。

 むしろデジタルズーム時のクオリティーを上げる方がいいだろう。個人的にデジタルズーム時のクオリティーが高いと感じたのはPixel。デュアルカメラだけれども、デジタルズーム時のクオリティーが高いのでそれを感じさせない。


Pixel 5の2xデジタルズームで撮影。デジタルズームの中ではクオリティーが高い

 コンピューテーショナルフォトグラフィを駆使してデジタルズーム時のクオリティーも高めてほしい。連写した画像の微妙なズレを利用して補完するとか。で、デジタルズーム時の操作だけど、指先の微妙な操作ってまだるっこしいので、Galaxyが採用したように「2x、3x、4xとボタンを並べる」方式が使いやすいかなと思っている。30xまではいらんけど。


Galaxy S20のカメラ画面。30xまではいらんと思うけど、細かく刻んだ倍率を表示してくれると選びやすい

 2020年は「マクロカメラ」を搭載する端末も幾つか登場した。近距離撮影専用カメラである。レンズ前数センチという至近距離で撮影できるのは面白いが、どれもマクロカメラの画素数が他に比べて少ないのは残念。

 カメラはAFのためにレンズを微妙に動かすのだが、至近距離まで撮ろうとすると、レンズの移動量が大きくなり、難しくなるわけで、例えば20cmより近い被写体はマクロカメラに任せるというのはアリだと思う。もちろん他のカメラと画素数をそろえた上で。

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