「LINEMO」の戦略を読み解く ヤフーとLINEの経営統合がサービス強化のカギに:石野純也のMobile Eye(3/3 ページ)
ソフトバンクオンライン専用ブランドが「LINEMO」に決定した。料金も改定し、5分間の音声通話定額をオプションにすることで、最低料金を月額2480円に下げた。MVNOとして展開しているLINEモバイルを発展的に継承する形で、LINEとのサービス連携が最大の特徴になる。
Y!mobileとLINEMOの両輪で相乗効果を狙うソフトバンク
LINEMOは、Y!mobileを率いてきた寺尾氏が担当役員として統括する。MNOとして再スタートを切るにあたり、「LINEMOにはY!mobileのノウハウは相当入れた」(同)。Y!mobileは、「店舗中心のブランドに見えているかもしれないが、倍々でオンラインが増えている」(同)と言い、その知見がLINEMOに生かされているという。Y!mobileのノウハウは、入力フォームの書式など細かなところにまで及ぶ。
「あるときにはWebでのストレスを測るため、脳波測定まで行ったが、住所を入力するときに、1-1-1のようなところで全角しか受け付けないと、それだけで(ストレスの反応が)真っ赤になる。そういう1つ1つの改善をずっと積み重ねてきて、それをLINEMOに移植している」
LINEMOが売りにするeSIMやeKYCも、その1つだ。Y!mobileではeSIMこそ未提供だが、eKYCは楽天モバイルに先立ち、Apple Storeなどの一部販路に導入されていた。eKYCのシステムや実装の準備は、Y!mobileでできていたというわけだ。先に挙げた、LINEギガフリーやLINEクリエイターズスタンプの無料提供も、ヤフーとのサービス連携をブランドの軸にしてきた、Y!mobileの成功例をなぞっているように見える。いち早くトリプルブランドでユーザー数を伸ばしてきたソフトバンクだけに、サービスごとのすみ分けは明確だ。この点は、他社にない強みといえそうだ。
一方で、LINEMOで得た新たな知見は、「Y!mobileにも注入していく」(寺尾氏)という。例えば、eSIMは、新ブランドでユーザーの少ないLINEMOで投入して実戦データを集めた上で、より規模の大きなY!mobileで提供する可能性がある。また、LINEMOは「UI、UX(ユーザー体験)も、Day1から進化させていく」(同)というが、LINEならではの素早い改善サイクルで使い勝手を磨いたあと、その成果をY!mobileに反映させることもできる。
LINEと合弁会社で運営していたMVNOのLINEモバイル時代には、ここまでのシナジー効果は出せていなかった。総務省の要請に沿いつつ、ドコモのahamoに対抗する流れで生まれたLINEMOだが、寺尾氏が「大きな進化だったと思う」と語っているように、今の形の方がソフトバンクにとってのメリットが大きいように見える。金額的にはほぼ横並びになった3社のオンライン専用料金だが、サービスやブランド、ユーザビリティには、3社の立ち位置がしっかり反映され、差別化ができていることもうかがえた。
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