HarmonyOSで独自エコシステム構築を図るHuawei 協業が大きなカギに:山根康宏の中国携帯最新事情(1/2 ページ)
Huaweiが発表した「HarmonyOS 2」は、スマートフォンを中心にタブレットやスマートウォッチ、家電やIoT機器に搭載することで、エコシステムの強化を目指す。HarmonyOS 2は発表直後の1週間で1000万ダウンロードを記録したという。一方、スマートフォンの展開には他社に後れを取っており、「P50」シリーズだけで関心を集めるのは厳しそうだ。
2021年6月3日にHuaweiは「HarmonyOS 2」を発表した。スマートフォンを中心にタブレットやスマートウォッチ、家電やIoT機器などあらゆるIT製品に同OSを搭載することで、Huaweiは独自のエコシステムを強化しようとしている。
デバイス間のシームレスな体験が可能に
HarmonyOS(中国語では「鴻蒙OS」)は2019年8月に最初のバージョンが発表され、まずはHuaweiのスマートTVに搭載された。日本ではいまだに地上波放送が主流だが、海外の多くの国ではテレビはインターネットに接続し、オンラインで放送を視聴するIPTVが主流だ。スマートTVはネットワーク接続機能のみならずIPTV事業者からのコンテンツをアプリとして追加できる、いわば巨大なタブレットのような製品になっている。
スマートTVのOSにはAndroidも利用されるが、LGはwebOS、SamsungはTizenなど、スマートフォンやタブレットよりハードウェアリソースの少ない機器向けのOSを搭載する例もある。Huaweiは自社スマートTVの性能を高めるためにHarmonyOSを搭載したのだ。
HarmonyOSは登場時からスマートフォンへの搭載がうわさされてきたが、米国政府によるHuaweiへの制裁が(政権交代後も)変わらないことから、前倒しして進めたと推測される。
HarmonyOS 2はスマートフォンのUI(ユーザーインタフェース)の改善が1つの目玉として紹介されたが、同OSを搭載した端末同士でシームレスなユーザー体験を提供できる点も大きな特徴だ。スマートウォッチで取得したユーザーデータを元に健康状態を解析し、最適なレシピを検索、スマートオーブンに転送して料理を作れば健康的な食生活を送ることができる。このような未来体験をHarmonyOS 2は提供できるのだ。
発表直後の1週間で1000万ダウンロードを記録
Huaweiは2021年いっぱいで過去モデルを含む100機種以上にAndroid OSからHarmonyOS 2へのアップデートを提供する予定だ。6月末時点ではまだスマートフォンとタブレット10機種程度にとどまっており、スマート家電はまだ登場していない。新しいOS、新しいエコシステムの発表直後にそれをフル体験できる状態にすべきだっただろうが、Huaweiとしてはこれ以上HarmonyOS 2の発表を先送りできない状況に追い込まれていたのだろう。
HarmonyOS 2は発表直後の1週間で1000万ダウンロードを記録したという。とはいえ、CNNIC(中国インターネット情報センター)の発表によると、中国のスマートフォンによるインターネット利用者数は2020年12月時点で9億8900万人に達しており、1000万という数字は0.1%にすぎない。現時点ではまだアーリーアダプター層のみが興味を示しているという状況だろう。
Huawei関係者によると、2021年中に3億台以上のHarmonyOS 2へのアップデートを予定しているという。しかしそこまで数を増やすためには、スマートフォンとタブレットだけではなく、スマート家電のHarmonyOS 2対応は必須だ。HarmonyOS 2はスマートフォンの使い勝手を高めるためのOSではなく、ユーザーの生活を豊かで便利なものにするためのものであり、家電連携抜きにHarmonyOSの普及は考えられない。
Huaweiは既にスマート家電向けのプラットフォーム「HiLink」を多数の家電メーカーと共同で展開しているが、早急にHarmonyOS 2対応製品へのリプレースが求められる。
HarmonyOS 2上ではAndroidアプリも動作する
ところで、HarmonyOS 2上ではAndroidアプリも動作する。そのため、HarmonyOS 2へアップデートしてもスマートフォンの使い勝手が退化することはない。2021年6月以降発売のHuaweiスマートフォンはHarmonyOS 2がプリインストールされ、これからHuawei製品を買うユーザーは知らず知らずのうちに同OSを体験することになる。
そもそも中国では、各スマートフォンメーカーがAndroidをベースに“独自UIを統合したOS”を展開しているが、スマートフォン上で利用するサービスの多くはOSと切り離された国内企業のものを利用している。古くはBAT+J(Baidu、Alibaba、Tencent、Jindong)、最近ではTMMD(Jinri Toutiao、Meituan、Xiaomi、DiDi)が利用できればユーザーが困ることはない。このあたりはAndroidならGoogle、iPhoneならAppleのエコシステムから逃れにくい諸外国とは様相が異なっている。
Huaweiは異なる端末間でのデータ・操作の連携にHarmonyOSを使いつつ、アプリは従来通りAndroidを利用するという、いいとこ取りをすることでHarmonyOSのエコシステムを拡大していきたいところだろう。自宅の家電に全てHarmonyOSが搭載されれば、Huaweiのスマートフォンを選ぶことで快適なスマートライフが得られるようになる。しかしそんな夢の生活を提案しようにも、HarmonyOSの入り口となるスマートフォンの開発・販売に急ブレーキがかかっていることがアキレス腱となっている。
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