インタビュー

ドコモに聞く「d払い」の店舗向け戦略 カギを握る「決済手数料」と「メルペイ」モバイル決済で店舗改革(2/2 ページ)

NTTドコモのd払いの戦略について、同社ウォレットビジネス部長の田原務氏に話を聞いた。ドコモは9月1日以降に加盟した場合は13カ月間、手数料を無料にする施策を打ち出した。加盟店が急拡大している背景の1つとして、メルペイとの共同展開が挙げられる。

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三菱UFJ銀行との協業で金融サービス強化へ

 新規ユーザーの獲得に加え、利用頻度の拡大も重要だ。各社とも、アプリ内で利用できる機能を拡張することで、日々のアプリ起動を目指している。ミニアプリ、スーパーアプリといわれるような戦略で、決済で使わないときでも、別の理由でアプリを起動してもらうことが重要という判断だ。

 ドコモもそうした戦略を描いているが、「使いやすさとの両立が重要」と田原氏。単純に機能を追加してアイコンを増やしていくだけでは、ユーザー側も何を使えばいいのか分からなくなる。アイコンが増えると、「使いにくさも感じるようになることは分かっている」ため、機能と使いやすさのバランスを取りながら、「使いやすいアプリをいかに実現するか考えている」という。

 当然中心となるのは決済サービスだが、コード決済に加えて、ネットサービスと連携することも検討。オフラインだけでなく、オンラインへの導線も構築していきたい考えだ。

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 加えて、サービス拡大で各社が取り組んでいるのが金融サービスだ。ドコモでもこの方向性は同様で、2021年2月からはd払い上でポイント投資を開始。「利用者は非常に増えた」と田原氏。決済サービスとポイント投資の親和性の高さを確認できたとしており、田原氏は金融サービスとの連携を今後も拡大してきたい考えを示す。

 金融サービスの本丸ともいえる銀行業だが、ドコモでは直接銀行免許を取得することはせず、三菱UFJ銀行との協業を選択している。2021年度中にも合弁会社を設立、新しいデジタル口座サービスを2022年中に提供する計画。三菱UFJ銀行口座からのd払いのチャージや住宅ローンなどの金融サービス提供を検討していくという。


NTTドコモと三菱UFJ銀行は、デジタル金融サービス提供に向けた業務提携契約を締結し、2022年中にdポイントがたまる「デジタル口座サービス」の提供を開始する予定

 こうした取り組みについて田原氏は、「三菱UFJ銀行は銀行業やセキュリティのノウハウも持っている。ドコモとしてもしっかりと銀行という機能を提供していきたい」とコメント。ドコモでは銀行業に関係する機能を持っていなかったため、この協業によってBaaS(Banking as a Service)の仕組みを初めて活用した取り組みになるという。

 収益を拡大させる上で、この金融サービスが重要になってくるだろう。三菱UFJ銀行と組んでの金融サービスが、他社に対してどれだけの差別化を打ち出せるか、ポイント還元でユーザーを集めるだけでない、新サービスの登場が今後のカギを握ることになりそうだ。

 d払いはドコモ口座との統合も果たし、ミニアプリも少しずつ増えたことで、機能拡張が続いている。懸案だったアプリの起動の遅さに関しては、改善を図っているとしている。現時点で、ライバルのPayPayには及んでいない印象だが、こうした基本的な使い勝手の部分は今後も向上が必要だろう。

 加盟店、利用者にとって、無料やポイント還元だけではない、有効な施策を打ち続けられるか。今後のドコモのかじ取りが注目される。

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