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無料だけどスマホでプロ級の写真を撮れる モバイル版「Adobe Lightroom」を試す(1/2 ページ)

アドビがスマートフォン向けに基本無料で配信しているアプリ「Adobe Lightroom」が非常に便利だ。「スマホで手軽に、こだわったきれいな写真を撮りたい」というわがままに応え、プロレベルの設定が豊富な画像編集ソフトとしても機能する。

 「スマホで手軽に、こだわったきれいな写真を撮りたい」というわがままな要望をかなえてくれるアプリがある。アドビがスマートフォン向けに「基本無料」で配信しているアプリ「Adobe Lightroom」を使えば、シャッタースピードやISO感度はもちろん、アドビのAIを使った高度なフォーカス機能や色補正を利用できる。

 「基本無料」なのはスマートフォン単体で利用した場合のみで、PCとの連携やクラウドストレージを利用したい場合は、「Creative Cloud」の月額1078円(税込み、以下同)で利用できる「フォトプラン」や、月額6248円の「Creative Cloudコンプリートプラン」を契約する必要がある。PCとクラウドで連携して編集にこだわりたい、という場合にはこちらをおすすめする。


スマホ上で撮影から色調整までを行った写真。コントラストの調整などはLightroomで行うのが楽だ

 今回は日々の記録に使う風景や、プラモデルの撮影などでLightroomを利用する筆者が思うおすすめポイントを紹介したい。撮影は「iPhone XS」で、下部を右側にして横に持って行っている。

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本来は「画像編集ソフト」だが撮影も可能

 本来、Lightroomはカメラで撮影したRAWファイルの色味や光の度合いなどを調整して出力(現像)するソフトだ。スマホ版ではそれらの機能に加え、「写真を追加する」「写真を撮影する」ボタンが備えられている。オプションのように配置されているボタンだが、スマホ版ではこれがメインの機能といえる。


青いボタンの左が写真の追加、右が写真撮影になる

 例えば黒い毛のペットや、紺色など暗い色のものを標準のカメラアプリで撮影しようとすると、スマホ側で「暗い部分だ」と判断してISO感度を上げたり、シャッタースピードを落として手ブレが発生しやすくなる。


標準のカメラアプリで撮影した黒い犬の写真。データを見るとシャッタースピードは1/4秒だった

 Lightroomでは、細かい設定が可能な「プロフェッショナル」で必要な部分を設定して残りの部分を自動にすれば、きれいに撮影できる。この他にもLightroomには全ての撮影を自動で行う「AUTO」、HDR画像を撮影できる「HDR」、iPhoneのみで可能な深度マップを作成できる「深度撮影」の4種を使える。シャッタースピード、ISO感度を設定した上で撮影してみよう。


別の日のほぼ同時刻、シャッタースピードを1/11秒にした状態で撮影。ISO感度は320だ

 シャッタースピードは速いほど手ブレが減り、撮影しやすくなる。ISO感度が高いと暗い部分を明るく撮影できるが、高すぎると画像にノイズが生まれて鮮明さが失われる。三脚などでスマホを固定できるなら別だが、基本的にシャッタースピードは速めでISO感度も低い方がきれいな写真を撮りやすい。

 他のUI(ユーザーインタフェース)を見てみよう。UI自体はシンプルで、「Exp」が露光量補正、「Sec」がシャッタースピード、「ISO」がISO感度。「WB」がホワイトバランス(色温度)、「[+]」が焦点で、「初期化」は全ての設定を元に戻す。それぞれのスライダーは選択している状態なら画面内のどこをスワイプしても調整でき、項目をダブルタップするとそれだけ初期化できる。


スライダーを出した状態。最下部までスワイプすると自動になる

 焦点は画面内をタップすることでロックできる他、長めにタップするとフォーカスをロックした上でアドビのAIが輪郭を緑色で強調する。小さなミニチュアやプラモデルなどにカメラを寄せてボケ感を出したいとき、複数の人物撮影でカメラとの距離を合わせたいときに便利な機能だ。


画面手前に焦点を合わせた状態

画面手前に焦点を合わせた写真。撮影はコトブキヤのキットブロックシリーズ「ヘキサギア」の「ガバナー」シリーズと「オルタナティブ クロスレイダー」を使用している

画面奥に焦点を合わせた状態

画面奥に焦点を合わせた写真。前の写真と比べると手前がボケているのが分かる

 シャッタースピードが速すぎると、人工照明の下で撮影する場合に点滅するような現象が起きるので注意したい。これはLED照明が流れる電気の周波数にあわせて点滅しているから(東日本で50Hz、西日本で60Hz)で、シャッタースピードを自動にするか1/100もしくは1/120にすることでおよそ避けられる。

 色温度は被写体に当たっている照明の色に左右される。白熱灯や昼光色の蛍光灯なら赤く、日光や曇天下なら青い。この他、撮影する写真で出したい色味で変えることもできる。


「タングステン」(白熱灯)は赤めの光を出すため、色味を青くする。晴天を青く撮りたいときなどに使う

「曇天」では日光の赤い光が抑えられて青く見えるとして、色味を赤く補正する。このあたりの設定が固定されているものの自由なのが魅力的だ

 また、グレーを写して色温度を補正する「スポイト」機能も備える。厳密に設定すると塗料を塗った板を使うそうだが、現地で手早く設定するならアスファルトではない地面の灰色、打ちっぱなしのコンクリートなど、グレーに見える部分を使うのも手だ。


スポイトは少し濃いめのグレーを写してシャッターボタンを押す

 この他にも南京錠のマークで露光量ロック、白黒の丸マークでカラーフィルター、レンズマークで広角/望遠の切り替えができる。

補助機能も充実

 画面左側にはイン/アウトカメラの切り替えにAdobe DNG(RAW)/jpg形式の切り替え、フラッシュのオン/オフを設定できる他、「…」でさらに詳しい設定ができる。歯車マークは画面の明るさやジオタグ、「HDR」モードで撮影した際の未処理画像の保存可否を設定できる。

 ピラミッドのようなマークは「ハイライトのクリッピング」で、白飛びした部分をシマで表示する。これに合わせて、被写体が白飛びしていないかを手軽に確かめられる。


シャッタースピードが遅すぎて白飛びした空とビル

 網目のマークはグリッドと水準器を表示する。グリッドは2x2、3x3、黄金比を表示でき、水準器は水平、垂直それぞれが合った場合にiPhoneが振動する。Androidの場合、「Xperia 5 II」では振動しなかった。


薄くグリッドと水準器を表示した状態。中央の図形と白い四角を合わせると垂直、水平が合う

 この他、2/5/10秒のセルフタイマーを備えアスペクト比を16:9/3:2/4:3/1:1に変更可能。タイマーはオンにするとシャッターボタンに秒数が表示されるのが面白い。

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