KDDIとソニーが「5G SA」の技術検証 デモで分かったゲーム体験の違い(1/2 ページ)
KDDIとソニーは、次世代通信技術「5G SA」を活用したゲームストリーミング技術の実証実験を公開した。実証実験では、5G SAのPSリモートプレイに特化したスライス(仮想的な専用回線)を作成。混雑する5Gエリアでも、PS5/PS4のリモートプレイを快適に実施する様子を見られた。
KDDIとソニーは、次世代通信技術「5G SA」を活用したゲームストリーミング技術の実証実験を公開した。混雑する5Gエリアでも、PS5/PS4のリモートプレイを快適に実施する様子を披露した。
PS4やPS5では、自宅に置いたゲーム機にスマホで接続する「リモートプレイ」という機能が提供されている。5G SAで安定した通信を提供して、リモートプレイ機能を改善させるというのが、今回の実証実験の趣旨だ。
5G SAサービスの特性を生かせる用途は、産業分野向けのものが多いが、KDDIでは「個人向けの5G SAサービス」を2022年8月以降に提供する方針を示している。
「ゲーム専用のプレミアム通信」の可能性
個人向けの5G SAサービスで最も有望と思われるのが、クラウドゲーム・ゲームストリーミング分野での活用だ。例えば家庭用ゲーム機のPS4/PS5では、スマホから自宅に置いたゲーム機に接続して、家庭用ゲームを遊べる「リモートプレイ」機能を搭載している。このリモートプレイは4G LTE回線でも遊べるが、格闘ゲームのような応答速度の高さを求められるゲームはラグ(遅延)が生じて遊びづらいといった課題を抱えている。
そこで両社の実証実験では、5G SAのPSリモートプレイに特化したスライス(仮想的な専用回線)を作成した。他のスマートフォンユーザーがいるような混雑した場所でも、5G通信で安定したリモートプレイができる仕組みを作ったというわけだ。
報道陣に公開されたデモンストレーションでは、2台の5G SAスマートフォンを同じ5G基地局に接続。1台はリモートプレイ用のスライスに接続し、もう1台を混雑した状況を再現した通常スライスに接続して、反応速度を比較した。
実際にプレイする様子を観察してみると、プレイ体験に顕著な差があることが分かる。一般的な5G環境でプレイしているユーザーは、しばしば入力にラグが発生し、時折画面表示も遅れる状況が見られた。それに対して、「リモートプレイ用スライス」で接続している場合は、遅延を感じず快適にプレイしているように見える。
デモンストレーションで使われたゲームは「ストリートファイターV」。PSリモートプレイの仕様は商用版と同等で、上下15Mbps程度の通信が確保できていれば快適にプレイできるとされている。
実施場所は東京・有楽町の国際フォーラムの広場(屋外)。5G基地局は5G NSA/4G LTEの商用サービスを提供中の基地局を利用している。具体的には、会場の東京国際フォーラム北側から有楽町駅を挟んで向かいにある有楽町イトシアの屋根に設置された基地局と接続しているという。基地局との距離は直線距離で約160mだ。
5G SAで何が変わるのか
5G SA(Stand Alone)とは、2021年以降に携帯各社が順次導入を進めている、5Gコアネットワークの新仕様のこと。現状の5G網は4G LTE時代の設備をユーザー認証などに使用する「NSA(Non Stand Alone)」という仕様で提供されているが、今後は全ての設備が5G向けに最適化された5A SAサービスへ順次移行すると見込まれている。
5G SA化において重要なのは「ネットワークスライシング」という新機能の追加だ。ネットワークを仮想的に“切り分ける”技術で、例えばスマホ向けの通信サービスはそのまま提供しつつ、「スポーツ中継の映像伝送に必要な大容量の通信」や、「自動運転に必要なレスポンスの良い通信」や、「膨大な産業用センサーを管理できる低速通信」などの機能を持つ通信サービス(スライス)を確保することができる。
なお、このデモンストレーションで作成された「リモートプレイ用のスライス」は、割り当てた端末に高速通信用の帯域を確保するというもので、5Gの超低遅延性能に最適化したものではないという。また、リモートプレイ用の通信だけで専用帯域を使用するわけではなく、割り当てたスマートフォンでWebブラウザを開くと、その通信にも専用帯域が適用される。ただ、ゲームプレイに支障となるジッター(遅延の波)への対処は実施しているとのこと。
要するに「ゲームの通信時のみ高速スライスを適用する」という特徴を持っているわけではない。こうした点はKDDIでは、5G SAサービスの開発における技術課題と考えている。
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