国内での「Wi-Fi 6E」実現に向けて大きな前進 総務省の審議会が「6GHz帯無線LANの導入のための技術的条件」を答申(1/2 ページ)
スマートフォン、タブレットやスマートフォンで対応機種が増えている「Wi-Fi 6E」だが、日本では法制度が整備されていない影響で利用できない。そんな中、総務省の情報通信審議会がWi-Fi 6Eに関する技術的要件を総務大臣に答申した。今後、国内でのWi-Fi 6E利用を“合法”とするための手続きが進むことになる。【更新】
総務省の情報通信審議会は4月19日、金子恭之総務大臣に対して「6GHz帯無線LANの導入のための技術的条件」に関する答申を行った。この答申を元に、同省は「Wi-Fi 6E」を始めとする6GHz帯の無線LANを日本国内で利用できるようにするための法令整備を進める方針だ。
【更新:4月22日9時】一部表記を改めました
そもそも「Wi-Fi 6E」って何?
最近、「Wi-Fi 6E」への対応をうたうスマートフォン、タブレットやノートPCが増えている。「『Wi-Fi 6』とは何が違うの?」と疑問に思う人もいると思うので、Wi-Fi 6Eとは何なのか、確認しよう。
Wi-Fi 6Eの「E」は「Extended」、つまり「拡張」という意味である。簡単にいうと、2.4GHz帯や5GHz帯に加えて6GHz帯のアンライセンスバンド(免許を取得せずに通信できる周波数帯域)の電波でも通信できるWi-Fi 6のことだ。Wi-Fi 6は、無線LANの業界団体「Wi-Fi Alliance」が「IEEE 802.11ax」という無線LAN規格に付けた“愛称”である。
IEEE 802.11axの規格自体は、既存の無線LAN規格で使われてきた2.4GHz帯、5GHz帯に加えて6GHz帯(5925~7125MHz)でも通信を行うことを想定して策定された。しかし、各国において6GHz帯をアンライセンスバンドとして使うための法令整備が進んでいなかったことから、既に利用可能な2.4GHz帯と5GHz帯に対応する製品が先行して登場したという経緯がある。
- →スマホやパソコンで対応が進む「Wi-Fi 6」って何? メリットは?(Fav-Log)
6GHz帯の電波は、2020年4月に米国においてアンライセンスバンドとしての割り当てを行う方針が示され(参考リンク)、その後中南米、ヨーロッパ、中東、オセアニア、日本と韓国などでもアンライセンスバンドとしての運用を検討、または開始している。
6GHz帯をアンライセンスバンドとして運用することを検討、あるいは運用を開始している国/地域の一覧。日本の近隣では韓国が既に運用を開始している(2022年3月15日現在、出典:Wi-Fi Alliance)
なぜ6GHz帯に注目?
「2.4GHz帯や5GHz帯に加えて6GHz帯も無線LANで利用(運用)することにメリットがあるの?」と思うかもしれないが、メリットはそれなりに大きい。
まず2.4GHz帯の電波は、無線LANだけでなくBluetoothでも使われている。さらに独自のドングル(無線アダプター)を使って通信をする無線キーボード、無線マウスや無線ヘッドセットなどでの通信にも利用されている。加えて、電子レンジが発する電磁波の帯域でもある。簡単にいうといろいろな用途に使われている上、機器が相互に干渉しやすく、スループット(実効通信速度)の改善が難しい状態にある。
5GHz帯の電波は、2.4GHz帯と比べると用途が限られているため、電波干渉に伴う問題は起こりづらい。しかし、この帯域に対応する無線LAN機器が広く普及した結果、集合住宅などアクセスポイント(無線LANルーター)が多く設置されている場所では干渉回避の仕組みによってスループットが低下する問題が生じている。
IEEE 802.11axでは、従来規格から電波の変調方式や伝送方法を変更することで、スループットを改善している。加えて、通信で利用できる周波数の幅をより広く取ることでさらにスループットを向上できるようにもしてある。しかし、先述の通り2.4GHz帯や5GHz帯は既に機器が多いため、帯域幅を広く取ってもスループットの抜本的な改善が難しいという問題を抱えている。
日本では2400~2497MHzの帯域がいわゆる「2.4GHz帯」として確保されている。約100MHzの帯域をいろいろな無線機器が共用することになるため「帯域を広く確保してスループット向上」という手段を取りづらい。電子レンジを使うと極端に通信が不安定になるという問題もある(総務省資料を一部加工)
日本における5GHz帯は少し複雑で、無線LAN用に確保されている帯域は「W52/J52(5150~5250MHz)」「W53(5250~5350MHz)」「W56(5470~5725MHz)」の3つに分かれている。W53/W56帯域は気象レーダーが利用する帯域と重複または近接しているため、干渉抑止機能(DFS:動的周波数スキャン)が作動することで通信が一時的に途切れることもある(総務省資料を一部加工)
そこで注目されたのが6GHz帯である。現時点では用途がある程度限られていることもあり、この周波数帯を無線LAN向けに転用できれば、帯域幅を広く取ることによるスループット改善を図りやすい。IEEE 802.11axが6GHz帯の利用を想定したのは、この事実を踏まえた判断でもある。
現在、米IEEEは無線LANの新規格「IEEE 802.11be」の策定を進めている。この規格は2024年を目標に確定される予定で、6GHz帯の利用を前提として利用できる帯域幅をさらに拡大し(最大160MHz→最大320MHz)、最大通信速度をさらに向上する計画となっている。
無線LANの高度化を進める上で、6GHz帯のアンライセンスバンド化は避けられない状況にあるのだ。
Wi-Fi 6E対応機器自体は、既に出荷が始まっている。IEEE 802.11ax規格が定める最大帯域幅(160MHz)を活用するには“ほとんど手が入っていない”6GHz帯が欠かせない(総務省資料より)
既に6GHz帯をアンライセンスバンドとして供用している米国、ヨーロッパ、韓国の状況。米国と韓国は1200MHz幅をフルに割り当てているが、ヨーロッパでは次世代の移動通信システムへの電波割り当てを想定して、6GHz帯のうち前方の500MHz幅のみを割り当てている(総務省資料より)
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