三木谷氏、楽天モバイルを「0円でずっと使われても困る」と本音 赤字から反転へ(1/2 ページ)
楽天グループの三木谷浩史会長が、同社の決算について説明し、2030年に向けての戦略「Vision2030」や楽天モバイルの新サービスについて語った。質疑応答では、同日午前に発表された新料金プラン「Rakuten UN-LIMIT VII」についての質問が集中した。今期(2022年第1四半期)が赤字のボトムとし、「黒字化していくシナリオが見えてきた」という。
楽天グループは5月13日、2022年12月期 第1四半期決算説明会を開催した。代表取締役会長 兼 社長の三木谷浩史氏が、決算について説明した他、2030年に向けての戦略「Vision2030」や楽天モバイルの新サービスについて語った。質疑応答では、同日午前に発表された新料金プラン「Rakuten UN-LIMIT VII」についての質問が集中し、三木谷社長の本音も飛び出した。この記事ではモバイル関連について抜粋して紹介する。
「2000万に到達できる」「今期が赤字のボトム」
楽天モバイル事業は、MNO事業、楽天市場を中心とする楽天グループのさまざまなサービスとのシナジー、そしてソフトウェア・プラットフォーム事業である楽天シンフォニーのグローバル展開、この3つの「一石三鳥」戦略を狙っている。4Gの屋外基地局は2022年4月末の段階で4万4000局に到達。また、屋内はフェムトセルのRakuten Casaを約8万台設置。電波の届きにくい家やビル奥の店舗など、「隅の隅まで届く」ことを目指している。
2022年4月25日時点で楽天回線比率は90%を超え、当初30%強あったKDDIローミングは10%を切っている。これによってローミングコストが大幅に下がるとともに、自前のネットワークでの高速通信、インターネットアクセスが実現されていくことから、ユーザビリティが改善され、楽天モバイルへの申込数が加速しているという。
ユーザー数の伸びの速さを、三木谷氏は楽天カード会員数と比較して紹介。楽天カードの会員数が500万人に到達するまでには73カ月かかったが、楽天モバイルの契約数は25カ月、つまり約3倍以上のスピードで500万に達したという。楽天カード会員の2000万人到達は15年かかったとのことだが、「(楽天モバイルの契約は)このカーブがキープできれば、大幅に早く2000万に到達できる」と自信を見せた。
三木谷氏がこう考えるのは、楽天エコシステムユーザー(楽天サービスの利用者)のうち、楽天モバイルのユーザーはまだ11.3%しかいないというデータがあるからだ。「逆に言えば、88%の人は今後、楽天モバイルに入ってくる可能性がある」(三木谷氏)。もちろん、楽天エコシステムユーザー以外も入ってくるので、ユーザーの獲得については「比較的楽観的に考えている」という。
現状、モバイルセグメントの業績は、基地局などの先行投資が続いているため大幅な赤字となっているが、新しい料金プラン「Rakuten UN-LIMIT VII」、ローミングの順次終了によるコストカットから、「今期(2022年第1四半期)が赤字のボトム」と見る。第2四半期以降は業績が回復し、「黒字化していくシナリオが見えてきた」としている。
楽天回線のエリアで利用するユーザーは、1年前の2021年3月に比べて、データの平均使用量が40.8%増えているそうだ。データ通信料金は3278円(税込み、以下同)のキャップがあるが、通話かけ放題などのオプションサービスやサポートサービスを使い始めることで、「ARPUもどんどん上がってくる」との考えだ。
「Rakuten UN-LIMIT VII」のメリットを強調
新しい料金プラン「Rakuten UN-LIMIT VII」についても説明した。
三木谷氏は、1GBまで0円で提供していた既存のRakuten UN-LIMIT VIについて、「正直申し上げて、(0円については)マーケティング戦略、また、コロナで苦しんでいる人々を助けようということでやっていた」「モバイルサービスの民主化、携帯市場の民主化、高すぎるのは良くない、ということがわれわれのポリシーなので」と説明。その一方で、ネットワーク品質が向上し、「カバレッジもほぼ完成」しつつあり、楽天モバイルを高評価する声が多くなってきた。「併用していた方も他社を解約し、楽天モバイルをメインにする、楽天モバイルだけにする人がどんどん増えている」(三木谷氏)。
また、5G時代は100GB、200GBと大容量を使う人が増えてくると予想。そのときに、UN-LIMIT VIIは「大きな大きなコストアドバンテージ、価格的な魅力が高い」とアピールした。
Rakuten UN-LIMIT VIIは、3GBまで月額1078円、3GBから20GBまでは月額2178円。それ以降は無制限で月額3278円となり、7月1日から自動的に適用される。ただ、UN-LIMIT VIのユーザーは1GB以下の場合、7月、8月はプラン料金が無料、9月、10月はプラン料金分がポイントバックされ、実質4カ月は無料になる。
また、「エクストラな良いサービス」も提供。楽天市場の買い物が最大ポイント6倍、Rakuten Linkではない、標準電話アプリを使った「15分通話かけ放題」の利用料が3カ月無料、さまざまなコンテンツサービスも無料期間が設けられ、その後も価格の割引やポイント還元が受けられる。
さらに、非常にニーズの声が多かったというキャリアメール、「楽天メール」も7月1日に提供開始する。メールアドレスのポータビリティについては8月から対応予定だ。
近年、他キャリアが注力する法人向けサービスを、楽天モバイルも開始する。楽天グループで取引のある企業は40万社。「皆さんに聞くと、『少なくとも4分の1は楽天モバイルにするよ』と答えてくれる、少なくは僕に対しては」(三木谷氏)とのことで、法人マーケットにも期待する。無料で通話できる法人向けのRakuten Linkなどを訴求していくという。
また、「本当に、日本のみならず、アメリカ、世界各国から最大の注目を集めている」楽天シンフォニーでは、3500人のエンジニアを抱える。「携帯電話という、国のインフラに近いものを作っていけるハイレベルの人材」がそろっていると胸を張った。楽天シンフォニーがビジネスする市場は巨大で、潜在需要は2025年に1200億ドル、約15兆円を見込んでいるという。
最後の総括の中で三木谷氏は、「新プランでは、無料で提供していた人から980円(税別)ということで応分の負担をしていただく。それによってわれわれの収益が改善し、その収益をベースにさらにネットワークのクオリティーを上げていく再投資ができていく」と理解を求めた。
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