楽天モバイルの「月額0円」廃止、なぜ既存ユーザーにも適用? 三木谷氏が釈明(1/2 ページ)
楽天モバイルは新料金プラン「Rakuten UN-LIMIT VII」を発表した。従来の段階制プランを踏襲しつつ、月間1GB以下の「月額0円」は廃止された。
楽天モバイルは5月13日、新料金プラン「Rakuten UN-LIMIT VII」を発表した。従来の段階制プランを踏襲するが、1GB以下の“月額0円”の料金が廃止された。新プランは7月1日に開始予定で、既存ユーザーも自動で新プランに移行する。一部のユーザーにとっては実質的に値上げとなる一方で、楽天グループのサービスでの還元が拡充される。
新料金プラン「Rakuten UN-LIMIT VII」の概要
Rakuten UN-LIMIT VIIは利用データ容量に応じて料金が3段階に変動する。月0〜3GBの場合は1078円(税込み、以下同)、3GB〜20GBは月額2178円、20GBを超過した場合は月額3278円。現行プランの「Rakuten UN-LIMIT VII」では月間容量が1GBのユーザーは月額0円となっていたが、今回のプラン改定でこれを撤廃。最低料金は1078円となった。
音声通話料金は30秒あたり22円。「Rakuten Link」アプリを使ったIP電話については国内通話料が無料となる。
月間データ容量の上限は設定されておらず、楽天モバイルの自社回線エリアでは月額上限2980円で無制限のデータ利用が可能。ただし、極端にデータ利用が多い場合などは、公平にサービスを提供するため通信速度の制御を行う場合があるとしている。
なお、KDDI網のローミング利用で月5GB以上を利用した場合、1Mbpsの速度に制限がかかる。容量追加は1GBあたり660円。海外ローミングでのデータ通信は2GBまで月額料金に含まれており、超過後は128kbpsに制限される。容量追加1GBあたり500円(不課税)で追加可能。
既存ユーザーにも自動適用
今回の楽天モバイルの料金改定で注意すべき点は、既存ユーザーにも自動で「Rakuten UN-LIMIT VII」に移行してしまうことだ。つまり、月間データ通信を1GB以下で使っていたユーザーにとっては、実質的な値上げとなる。
既存ユーザーに対しては移行措置として、7月1日の新プラン提供開始から4カ月間は「月1GB以下は実質無料」となる還元策を実施する。具体的には、7〜8月請求分に対しては月間1GB以下のユーザーは無料という従来の料金を適用する。9〜10月の請求分については、「(ユニバーサルサービス料と電話リレーサービス料の3円を含む)1081円分の楽天ポイントでの還元」が実施される予定だ。
既存ユーザーも「0円廃止」の理由は?
楽天モバイルの三木谷会長は、モバイル事業の黒字化のため、「0円」で利用するユーザーを減少させる方針について、これまでも表明していた。2021年5月の決算説明会では「どこかのタイミングでやめていただく(強制的に解約する)ことになる可能性もあります」と言及しており、実際に、契約約款の改定で「180日間利用のない回線について、利用停止できるようにする」という条項を加える変更も実施している。そうした背景から推測するに、今回の「1GBまで0円」廃止は“規定路線”だったともいえる。
一方で、既存契約についても1GB0円を廃止する変更は、データ容量を抑えて使っているユーザーに対しては不利益変更となる可能性もある。その点について三木谷氏は「当初は既存ユーザーは0円を継続する方針でいたが、電気通信事業法により“ダメ”だと分かった」と釈明している。
三木谷氏の説明によると、電気通信事業法27条の3が規定する「行き過ぎた囲い込みの禁止」という規制により「既存ユーザーは0円を維持したまま、新規ユーザーは980円から」という条件でのサービス提供が不可能だと判明したという。
楽天モバイルの矢澤俊介社長は「関係各所に相談した上で、この条件での提供は問題ないと確認した」と説明する。移行措置については「夏休み・お盆休みを含む期間で実質0円を継続するため、そこまで急がず(解約か継続かを)判断できる」という理由で、4カ月間と設定したという。
プラン改定の既存ユーザーへの影響については「ほとんどのユーザーが残っていただけると思っている。データ容量が少ないユーザーでも、楽天市場での利用は非常に多い。ポイント付与など特典がすごく大きいため、契約を続ける理由となっている」(矢澤氏)と見解を述べた。
屋外人口カバー率は97.2%に
2020年に商用MNOサービスを開始した楽天モバイル。当初は“1年間無料”のキャンペーンを実施し、ユーザーを集めていた。その後、2021年7月に現行プラン「Rakuten UN-LIMIT VI」へ移行し、月額0円からの段階制の料金体系となった。
サービス開始当初はエリア展開も限られていたため、KDDI網からのローミングが大部分を占めていたが、4G LTE基地局の整備を進めており、屋外での人口カバー率は97.2%(2022年4月時点)に到達。基地局開設数は4万4000局超へと達するという。
2022年4月移行は全都道府県でKDDI網へのローミングを段階的に停止しており、楽天回線でのデータ使用量は全体の90%に達したとしている。
基地局整備において課題となるのは、屋内でのエリア整備だ。現状では、大規模なオフィスビルや地下街ではKDDIのローミングに依存している場所も存在しており、楽天モバイルでは屋外エリアを中心にエリア整備を進めているという。
また、5Gエリアの展開についても、現状では競合他社に後れを取っている。楽天モバイルでは4G LTE基地局に5Gアンテナを追加して5Gエリア化するという方針で進めているが、半導体の調達難により5Gサービスの拡大が遅れた他、実際に高速通信できるエリアも限定されている状況にある。
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