「料金値下げ」がドコモ、KDDI、ソフトバンクを直撃 それでも収益改善に前向きな理由:石野純也のMobile Eye(1/3 ページ)
5月11日から13日にかけ、NTT、KDDI、ソフトバンクの3社が通期の決算を発表した。政府の意向に沿った形で進んだ料金値下げの影響を受け、通信料収入が減少する。一方で、手薄だった法人事業の強化や、上位レイヤーのサービス、特に金融事業を伸ばしてそれを補うというのは3社の共通項だ。
5月11日から13日にかけ、NTT、KDDI、ソフトバンクの3社が通期の決算を発表した。売上高や営業利益の規模感は異なるが、方向性は近い。政府の意向に沿った形で進んだ料金値下げの影響を受け、通信料収入が減少する一方で、手薄だった法人事業の強化や、上位レイヤーのサービス、特に金融事業を伸ばしてそれを補うというのは3社の共通項だ。
その基盤ともいえる5Gの展開も加速させている。一方で、ある意味本業である通信事業をどう伸ばしていくのか、少々戦略が異なっている。3社ともサービスとのシナジーを狙い、規模は追求していくが、ドコモやソフトバンクは現状維持を表明しているのに対し、KDDIは「ARPUの最大化に取り組む」(代表取締役社長、高橋誠氏)と前のめりだ。では、それをどのように実現するのか。決算から見えてきた3社の違いを読み解いていこう。
料金値下げの影響を色濃く受けた3社決算、端末売上は拡大
2021年2月から4月にかけて導入された新料金プランやオンライン専用プラン/ブランドの影響は、大手3キャリアの収益を直撃した。ドコモは売上高が4兆7138億円(NTTコミュニケーションズを含まない旧ドコモとして)で114億円の減収、KDDIやソフトバンクは増収を維持したものの、内訳を見ると、通信料収入自体は減少していることが分かる。
KDDIのモバイル通信料収入は1兆7104億円と、1兆7220億円だった前々年度から落ち込んでおり、ソフトバンクもモバイル回線の売上高は1兆6775億円から1兆6081円に低下した。ドコモの代表取締役社長、井伊基之氏は「ドコモは戦略的な値下げをしたが、その減収効果が非常に大きかった」と前期を振り返る。ソフトバンクの代表取締役社長兼CEO、宮川潤一氏も「新料金の影響を受けている」と語った。
新料金プランが好評だったこともあり、値下げ影響は当初より拡大しているという。高橋氏は、「当初は600億円程度と予想していたが、実際に(より)お客さまの移動があり、結果として872億円になった」と語る。値下げ前はauの比率が90%だったのに対し、2021年度は80%程度まで低下し、UQ mobileやpovo、povo2.0に移行が進んでいる。ソフトバンクもこれは同じで、「ソフトバンクのユーザーが多かったところが、だんだんとY!mobileが増え、全体で言うと減収につながっている」(宮川氏)という。
UQ mobileやY!mobileに相当するブランドがないドコモも、ahamoは好調で、「中(ドコモ内)からの移行もあるし、外(他社)からも取れている。狙っていた層は、着実に入っている」(井伊氏)という。一方で、ahamoは「5Gギガホ プレミア」などの料金プランに比べると、料金が安いため、減収要因につながる。他の料金プランでの値下げも含め、「今年と来年はまだ影響が残る」(井伊氏)という状況だ。
ただし、コロナ禍で店舗への来店が大幅に減った前々年度と比較すると、端末の販売収入は増加。iPhone 13シリーズやAndroidの高機能端末も比較的好調で、収入を支えている構図だ。ソフトバンクの代表取締役副社長執行役員兼COOの榛葉淳氏は「iPhone 13を中心に売れている。前半はコロナの影響もあり、営業活動がなかなかできなかったが月を追うごとにiPhoneが堅調になり、AndroidでもPixelのような端末がお客さまの需要にこたえることができた」と語る。
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