モトローラが方針転換「おサイフ対応SIMフリースマホ」投入の背景は?(2/3 ページ)
モトローラは6月3日、割安なフラグシップモデル「motorola edge 30 PRO」と日本市場に特化した「moto g52j 5G」の2モデルを発売する。新モデルの投入の狙いを松原丈太社長が語った
おサイフケータイ“1台1万円説”は否定
日本のニーズへの対応は、モトローラの弱点となっていた。過去のモデルをふり返ると、防水対応は2016年のMoto G(第3世代)で実現していたものの、近年はほとんどのモデルで非対応となっている。また、おサイフケータイは2012年にソフトバンク向けに投入した「RAZR M 201M」で対応した限りで、SIMロックフリースマホとして全モデルで非対応を貫いていた。
SIMフリー市場でおサイフケータイへの対応に後ろ向きだった理由は、モトローラが中~低価格帯に注力していたためだ。グローバルモデルをカスタマイズせずに日本に投入する戦略を主軸としており、コストの上乗せ要因になるおサイフケータイ対応には否定的な立場を取っていた。2019年のインタビューでダニー・アダモポウロス社長(当時)は「FeliCaを搭載すると、販売価格が1台1万円の上乗せになる」と説明していた。ただし、現社長の松原氏によると「2019年の時点でも、おサイフケータイへの対応は日本法人として強く要望していた」という。
ただし、おサイフケータイ対応を巡る「1台1万円」という“相場”については異論もあった。2019年時点でも、競合メーカーのOPPOのトウ社長がインタビューで「だまされているのではないか」とコメントしている。
30日の説明会でこの“相場”について松原社長に確認すると「現状では、必ずしも1台1万円とはいえない」という見解を示した。
松原氏は「過去のインタビューの中でこういったやりとりが行われたことは承知している。ただし、『おサイフケータイに対応すると販売価格がどの程度上乗せされるか』という質問は、実は一様な答えが難しい質問だ。スマートフォンの開発は一般的に、部材費や開発費を販売予定台数で割り算して、ビジネスケースを組み立てるという流れで行う。また、設計においても、端末の構造や採用しているNFCチップによって、FeliCaへの追加対応の難易度は変わってくる。一概に1台1万円かかるとも言えない」とコメントした。
moto g52j 5Gでの防水やおサイフケータイへの対応については、ベースモデルに相当する「moto g52 5G」から本体サイズなどは維持しつつ、内部の基板設計については大幅な変更を加えているという。
こうした設計上の事情もあり、おサイフケータイ対応モデルを今後も拡大できるかという問に対しては「現時点で明確に示すのは難しい」(松原氏)と明言を避けた。一方で、松原氏は「moto g52 5Gの開発を通じて、FeliCa対応にかかるコストやリスクなどを把握することができた」として、今後の製品開発において対応がより容易になる可能性を示唆している。
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