iOS 16で対応する「Matter」とは? スマートホームに与える影響は?
Appleが6月に開催した年次開発者会議WWDC 2022において、次期iOS 16では「Matter」をサポートすると発表しました。GoogleのAndroidやNestシリーズも今秋、Matterをサポートする予定です。Matterが広く普及すれば、スマート家電の相互利用が可能になっていくのです。
Appleが6月に開催した年次開発者会議WWDC 2022において、次期iOS 16では「Matter」をサポートすると発表しました。AppleのMatter対応自体は2021年のWWDCでHomeKitからMatter対応製品を操作できるようになると表明されていましたが、あらためて今秋リリースのiOS 16でサポートとあきらかにした形です。
Googleも2021年のGoogle I/OでAndroidやNestシリーズでMatterをサポートすると発表、2022年のGoogle I/Oでは、Appleと同じく今秋サポート予定としていました。
このMatterについて、聞きなれない・聞いたことがないという人もいるかもしれません。これはGoogleやApple、Amazon、SmartThings(Samsung)、Connectivity Standards Alliance(CSA、旧称ZigBee Alliance)らが中心となって、2019年から策定が進められているスマートホームの共通規格です。
現在、さまざまなスマートホーム製品が登場しており、それらを利用するプラットフォームとしてもAppleのHomeKit(Siri)やGoogleアシスタント、Alexaなどがあります。このため、スマートホーム製品によっては、HomeKitには対応しているもののAlexaでは利用できない、AlexaとGoogleアシスタントからは使えるがHomeKitは未対応といったことも起こり得ます。
また、スマートホーム製品の中には、製品自体とは別に、音声アシスタント対応を含むネットワーク対応のためにハブ(コントローラー)を用意しなければいけないこともありますが、これも各製品・メーカーによって異なっているのが現状です。家の中にスマートホーム製品が増えると、それに合わせて複数のハブを設置しなければならない、といったことも起こりがちです。こうした状況を改善するため、スマートホームの共通規格を策定し、利用するプラットフォーム(HomeKitやGoogleアシスタント、Alexaなど)を気にする必要がないようにしようというのがMatterの目指すところです。
Matterの前身ともいえる規格としてはZigBeeがあり、こちらは聞いたことがある人も多いかもしれません。AmazonのEchoシリーズには「スマートホームハブ機能」としてZigBeeに対応しているものがあります。これでどのようなことができるのかというと、例えばPhilipsのスマート照明「Hue」は、スマートフォンからBluetooth接続で操作できる他、別途「Hueブリッジ」を追加すれば、ネットワーク経由での操作も可能となります。
このHueはZigBeeに対応しているので、EchoがあればHueブリッジを使わなくてもHueの操作を行えます。同様に、IKEAのスマート照明「トロードフリ」もネットワーク経由での操作には別途ゲートウェイの追加が必要ですが、こちらもZigBeeに対応しているので、Echoからの操作が可能。Echoがなくても、Hueブリッジを既に利用しているなら、それをトロードフリのゲートウェイとしても利用できます。
Matterが広く普及すれば、こうした相互利用が可能になっていくわけです。実際、GoogleはNest MiniやNest Hubなどのスマートスピーカーやスマートディスプレイが、Matterのコントローラーとして利用可能になると発表しており、Matterに対応したスマートホーム製品であれば、別途ハブを用意することなくNestシリーズを介して操作可能になります。
とはいえ、本当に便利になるかどうかは、Matter対応のスマートホームデバイスがどれだけリリースされるかにかかっています。Matterにはスマートホームデバイスを手掛ける主要メーカーを含め、既に300社近くのメーカーが参加していますが、それらのメーカーが今後どれだけのMatter対応デバイスをリリースするのかは未知数です。また、既存デバイスの一部はMatterに対応できる可能性もありますが、基本的にはMatter対応デバイスへの買い替えが必要になるでしょう。
そうしたことを考えると、今秋にAppleやGoogleがMatterに対応したとしても、普及するにはしばらく時間がかかりそうです。
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