競合ひしめく中、ゲオが1000円台からの“激安ワイヤレスイヤフォン”を販売する理由(1/2 ページ)
今やその市場は多種多様なメーカーが続々と参入しているワイヤレスイヤフォン市場。そんな中、ゲオHDは格安のワイヤレスイヤフォンを販売している。その狙いや意義を聞いた。
Appleやソニーに代表されるワイヤレスイヤフォン。今やその市場は多種多様なメーカーが続々と参入を遂げ、まさにレッドオーシャンである。
そんな中、ゲーム販売、DVD・CDレンタル、買取で有名なGEOを展開しているゲオHDは、格安のワイヤレスイヤフォンを販売している。そのどれもが税込みでも1万円を下回るもので、安いものだと2178円、高くても6578円と、学生がアルバイトをすれば手が届きそうな低価格だ。
なぜ低価格のワイヤレスイヤフォンにチャレンジし続けているのか、その狙いや意義をゲオ リテール商品部 リテール商品1課 宮下直樹氏と、オンラインで取材に応じてくださったリテール商品部 廣常秀明氏に聞いた。
ゲオHDはイヤフォンだけでなく家電なども取り扱っている。ゲオHDがイヤフォンの販売を始めたのはいまから5年前のこと。その際の初号機はGRAMO-BTH01(2017年12月発売)。より価値のあるものを安価で提供すべく、製品の販売を始めたと宮下氏はいう。
だが、これらはSB(ストアブランド)品であり、NB(ナショナルブランド)品ではない。SB(ストアブランド)とは小売業の独自ブランド。一方、NB(ナショナルブランド)とはメーカーが商品に付けたブランド、サービスの名を指す。商品構成比率はSB品の完全ワイヤレスイヤフォンが9割、残りの1割は過去のNB品だという。「NB品はいまではほぼなく、多くがSB品となっている」(宮下氏)
もともとは今のようなブランドがハッキリとしておらず、SB品のイヤフォンや黒物家電などが増えてきたタイミングでゲオブランド(ゲオセレクション)を掲げたという。
中国からゲオが直接輸入して販売することで、低価格を実現
なぜSB品が多いのだろうか? その理由を宮下氏はこう話す。
「われわれがレンタル業態であるし、お客さま単価で捉えた場合、均一ショップに近い単価になる。1枚100円のDVDをレンタルしに来たお客さまにNB品である他社の高級アクティブノイズキャンセリング付きワイヤレスイヤフォンを2万3000円などで衝動買いしてもらえるか? というと首を縦に振れない」
「なので、ある程度の数を発注し、原価を抑えることにした。中国で生産したものを日本市場向けにローカライズして、ゲオが直接輸入してゲオオンラインショップと実店舗で販売している。通常だと、その間にマージンが入ってしまうのを、なるべく削除している」
ゲオHDが低コストで製品を販売できる理由は他にもある。
その1つが製品の機能である。前述のようにいまや完全ワイヤレスイヤフォン市場はこの2~3年でメーカー数、製品数ともに増えてきた。その中でも特にハイエンドイヤフォンを中心に多機能で対応コーデックが多い傾向にある。
だが、機能を詰め込み過ぎたり、スペックを満たし過ぎたりすると、コストアップの要因の1つとなってしまう。
そこでゲオHDは無駄な機能を極力そぎ落とし、必要最低限の機能とスペックにとどめたのだ。実際、ゲオブランドの製品はハイレゾ認証を受けていないし、対応コーデックも少ない。それにソニーやBOSEのようにアプリ連携で付加価値を高めるような製品もない。
「いまの家電製品は要らない機能が増えている。イヤフォンにも同じことがいえる。必要最低限の機能(ノイズキャンセリング)があれば十分だと考える。が、輸入した製品のNCを削ったり、われわれで加えたりできないので、そこはあえてカスタマイズしない」(宮下氏)
「一部にaptXに対応した製品も存在するが、基本的にはあまり手を加えないようにしている。メーカーからオプション(付加機能)の提案があるが、それをすると原価が上がってしまうので、極力それをやらないようにしている」(廣常氏)
宮下氏はコストダウンを図れた理由として、完全ワイヤレスイヤフォンのパッケージも挙げた。実は安いからといって簡素なパッケージかというと決してそうではない。箱の表には製品の特徴や実際の利用シーンを想定したイラスト、裏には製品のスペックが明記されている。
これを宮下氏は「家電量販店などのように店員がわざわざ接客しなくても、商品を手に取り即買いしてもらえるような工夫でもある」とアピールする。結果的に「接客目的で人員を増やさずに済む」というわけだ。
さらに、「1100店舗を自前で展開しているため、スケールメリットがある」(宮下氏)こともコストダウンにつながる理由の1つだ。ある程度大量に注文をすることで、結果的に原価を抑えられるためだ。
品質はどこまで担保しているのか
コストダウンを図る一方で、品質(音質)も重要だろう。
コロナ禍で度外視できない抗菌仕様は、素材そのものに混ぜ込んだり、コーティングしたりすること(いわゆる後付け)で実現しているという。
音質については、多くの耳で聞くことが大切なので、開発課にとどまらず、プロモーション、企画に携わる人で音質をチェックしていると宮下氏はいう。「コストダウンを図る反面、いいものを低価格で売るべく、納得するまでサンプルを改善することはある」(宮下氏)
一方で、音質の監修を他社へ依頼することは、コストアップにつながる要因の1つとなってしまうため、行っていないという。
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