新機軸が乏しかった2022年のスマートフォン 端末価格の高騰で“長く使う”機運も高まる:石野純也のMobile Eye(1/3 ページ)
今回はスマートフォンをはじめとした端末やその売り方に関するトレンドをまとめていきたい。2022年は、スマートフォンに大きな革新がない1年だったといえる。ハイエンド側ではAIの活用や、フォルダブルといったトレンドを引き継ぎつつも、正統進化のモデルが多かった印象だ。
2022年も、残すところあとわずか。前回の連載では、1年間の業界動向を振り返っていったが、それに続く第2弾として、今回はスマートフォンをはじめとした端末やその売り方に関するトレンドをまとめていきたい。改めて1年を俯瞰(ふかん)してみると、2022年は、スマートフォンに大きな革新がない1年だったといえる。ハイエンド側ではAIの活用や、フォルダブルといったトレンドを引き継ぎつつも、正統進化のモデルが多かった印象だ。
一方で、その価格は円安ドル高を受け高騰。年末にはやや円高に戻っているものの、スマートフォンの価格が大きく上がった1年だと総括できる。このような中、コストパフォーマンスの高さを発揮していたのが、グーグルだ。特に同社の廉価モデルである「Pixel 6a」は、その処理能力の高さに反し、価格が抑えられていたこともあり、人気を博した。
また、端末価格が高騰した結果、ユーザーの平均利用年数も伸びている。この状況で注目されたのが、修理サービスだ。本連載でも取り上げたが、iCrackedがソフトバンクとタッグを組み、保証サービス内でPixelの即日修理に対応した他、同社はAQUOSシリーズの修理にも参入。対するサムスンも、Galaxyの即日修理を拡充している。ドコモが補償サービスを改定するなど、アフターサポートの観点では大きな動きがあった。ここでは、そんな2022年を振り返っていきたい。
フラグシップモデルの進化は踊り場状態、求められる新機軸
本誌主催の「スマートフォン・オブ・ザ・イヤー2022」でも言及した通り、2022年は“カイゼンの1年”だった。特に、ハイエンドモデルではその傾向が強い。カメラ重視や、端末の処理能力を生かしたオンデバイスAI、ディスプレイを折り曲げられるフォルダブルといった要素は、あらかた過去に出尽くしていたものだ。もっとも、発売された端末は、確実にブラッシュアップされ、使い勝手や機能性は高くなっている。
例えば、シャープの「AQUOS R7」。1型センサー自体を搭載したのは2021年に発売された「AQUOS R6」からだが、AQUOS R7はセンサーをスマートフォン向けのものに刷新しており、「全画素Octa PD AF方式」に対応した。その結果として、オートフォーカスが格段に速くなった。ディスプレイがフラットになり、撮影時の操作もしやすくなっている。スペックの目立った数値を見ると、前モデルに近い一方で、使い勝手は大きく変わっている。
同様に、Googleの「Pixel 7」「Pixel 7 Pro」も、大きな意味ではコンセプトを維持している。同社の開発したソフトウェアやAIを生かし、ハードウェアと融合させている点は「Pixel 6」や「Pixel 6 Pro」と同じだ。その反面、特にPixel 7 Proは、ズームの性能が大きく上がった。光学5倍の望遠カメラを搭載しており、高画素センサーからの切り出しや超解像ズームを組み合わせることで、最大30倍のズームを実現している。
マーケティングの要素としてズームの高い倍率をうたうメーカーも多い中、Pixel 7 Proの30倍ズームは実用的な画質で撮影可能。2つのセンサーを組み合わせた2倍から5倍までのズームも、単なるデジタルズームより高画質。Googleが自身で設計した「Tensor G2」や、その処理能力を生かすことで、指紋認証だけでなく、セキュアな顔認証にも対応した。こちらも、斬新といえるほど目新しい要素はないものの、着実に実用性を高める進化を遂げた端末といえる。
フォルダブルスマートフォンであるGalaxy Z Fold、Z Flipも4世代目に入り、目新しさはなくなったものの、ディスプレイ比率の見直しで使い勝手が向上。ハイエンドモデルとしては弱点だったカメラも、フラグシップモデルである「Galaxy S22」にそろえ、画質が向上している。こうした要素に加え、日本版はフラグシップのGalaxyとして、初めてeSIM、デュアルSIMに対応。総務省の有識者会議で議論されていた“バンド問題”も解消し、発売元であるドコモやau以外のキャリアでも使いやすくなった。Galaxyシリーズに関しては、「Galaxy S22 Ultra」として、Galaxy Noteが復活したこともトピックの1つだ。
年末が近づく12月には、ソフトバンクとXiaomiがタッグを組み、「神ジューデン」をコンセプトに掲げた「Xiaomi 12T Pro」を発売。120Wでの急速充電を訴求している。一方で、120W充電自体は、1年前にXiaomiが発売した「Xiaomi 11T Pro」にも採用されている技術だ。どちらかといえば、Xiaomiのスマートフォンが一般的な市場では、2億画素のセンサーを採用したカメラの方が注目度は高い。Xiaomiの得意とする充電技術をフィーチャーしつつ、マーケティングを強化したといえる。その意味で、同モデルも進化はしている一方で、新機軸を打ち出すには至っていない。
iPhone 14シリーズも、無印には大画面版の「iPhone 14 Plus」が加わったものの、iPhone 13との違いが少なかった。プロセッサが「A15 Bionic」に据え置かれたのも、初めてのことだ。一方で、「iPhone 14 Pro」や「iPhone 14 Pro Max」は、その大きさを揶揄(やゆ)されることもあった“ノッチ”を「ダイナミックアイランド」としてユーザーインタフェースに昇華させたことで新味を打ち出せた。カメラも、iPhoneとして初めて5000万画素センサーを搭載し、ピクセルビニングにも対応した。
実際、iPhone 14シリーズは、Proモデルの評価が高い。中国のゼロコロナ政策のあおりを受ける形で生産体制が縮小したこともあり、品薄状態が続いている。今、Apple Storeで注文しても、到着は1月中旬から下旬になる他、Amazonでは抽選販売を実施している。Apple自身がプレスリリースで供給状況をアナウンスしたのも、異例だった。フルモデルチェンジを果たしたProモデルに需要が集中しているのは、ユーザーがハイエンドモデルに変化や新機軸を求めているからだろう。やや停滞感もあった2022年だったが、2023年はメーカー各社の創意工夫に期待したい。
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