「Rakuten Turbo」を実際に使って分かったメリット “想定外”なデメリットもある?:5分で知るモバイルデータ通信活用術(2/2 ページ)
以前、楽天モバイルのワイヤレスホームルーター「Rakuten Turbo」を紹介しました。パッと見の数値だけでは分からないこともあると考え、実際に契約して使ってみた上でメリット/デメリットを検討してみましょう。
分かりやすい管理画面 快適な通信
さて、Rakuten Turbo 5Gの管理画面ですが、初期設定を含めて比較的分かりやすい構成となっています。Webブラウザベースですが、スマホに最適化されているのでPCがない環境でも設定はやりやすいと思います。
ただ、「ステータス表示」のモバイル通信の電波強度の一部表示が専門用語になっているので、もうちょっと分かりやすくするか、あえて省いてしまってもいいような気もしました。
本体の上部にはLEDインジケーターも付いています。管理画面にアクセスしなくても通信状況、異常の有無やファームウェア更新の有無などをチェック可能です。
管理画面はWebブラウザからアクセスします。表示はオーソドックスで比較的分かりやすいのですが、一部の表示が専門用語になっています。モバイル通信に詳しい人には有益な情報なのですが、一般的なユーザーのことを考えると、もっと分かりやすい表記にするか、いっそのこと省いてしまった方がいいのではないかと思いました
5G基地局の近傍で通信してみた所、実測で下り467Mbps、上り99.2Mbpsと良好な通信速度を記録しました。モバイル回線を利用するためPING(応答速度)はどうしても遅くなりがちですが、条件次第では固定回線の代わりとしても十分に使えそうです。
基本的な使い勝手は問題ないが……
Rakuten Turboと専用端末であるRakuten Turbo 5Gは、“普通に”使う分には結構いい感じのサービスです。以前の記事でも触れた通り、Rakuten UN-LIMIT VIIとのセット割がないことが弱みですが、それでも、特に5Gエリアであれば“普通に”快適に使えそうです。
ただ、Rakuten TurboとRakuten Turbo 5Gには見逃せない“弱点”があります。普通にFWAサービスとして使う分には全く問題ないのですが、しっかりと触れておきたいと思います。
弱点その1:Rakuten Turboが「Rakuten Turbo 5G専用」であること
Rakuten TurboのnanoSIMカードは、同サービス専用端末でのみ利用できます。つまり、現時点ではRakuten Turbo 5G専用ということになります。
Rakuten Turbo 5Gは、税込みで4万1580円です。中古やSIMロックフリーの新品を含めると、もっと手頃に入手できるモバイルルーター/ワイヤレスホームルーターは存在しますが、それにRakuten TurboのSIMカードを入れても使えません。もっといえば、認識して電波をキャッチしたとしても、APN(データ通信の接続先)情報が公開されていないので、通信はできません。
もっとも、「専用端末でのみ通信できる」という措置は、他の大手キャリアが提供している5G対応FWA(ホームルーター)サービスも同様で、利用場所を特定(≒制限)する機構を考えると致し方ない面もあります。
左が筆者手持ちのRakuten UN-LIMIT VIIのSIMカード、右がRakuten TurboのSIMカード。Rakuten TurboのSIMカードは専用端末(≒Rakuten Turbo 5G)でのみ利用できる
弱点その2:Rakuten Turbo 5GでAPNを設定できない
各種割引を勘案に入れても、使い方によってはRakuten UN-LIMIT VIIを契約して、Rakuten Turbo 5Gと組み合わせた方が手頃に使えるかもしれません。結論からいうと、Rakuten Turbo 5Gは、Rakuten Turbo用SIMカード以外での通信ができないようになっています。
他の大手キャリアのワイヤレスホームルーターを見てみると、例えばNTTドコモの「home 5G HR01」は「5Gギガホ プレミア」を契約したSIMカードでも通信可能です。APNは同じ「spモード(spmode.ne.jp)」なので、特に設定の必要はありません。
また、au(KDDI/沖縄セルラー電話)やUQコミュニケーションズが発売している「Speed Wi-Fi HOME 5G L11 ZTR01」なども、APNを設定すれば(ここポイント)保証外ながらpovo2.0のSIMカードでも通信できます。
しかし、Rakuten Turbo 5Gには、そもそもAPN設定がありません。Rakuten UN-LIMIT VIIのSIMカード“は”認識するものの、APNが異なるようでデータ通信を開始できません。Rakuten UN-LIMIT VIIのAPNは公開されているので、APNを手動設定できれば通信できるかもしれなかったのですが……。
実は、今回Rakuten Turboを契約(Rakuten Turbo 5Gを購入)したのは、「料金プランを解約したとしても、端末はRakuten UN-LIMIT VIIのSIMカードで継続して使えるだろう」と考えていたからです。もっというと、固定回線をRakuten UN-LIMIT VIIでリプレースした実家に置こうと考えていました。
この“もくろみ”は、残念ながら外れてしまったことになります。
楽天モバイルは、他キャリアが販売する携帯電話端末について「SIMロックを行うすべきではない」「他社が使う周波数帯を利用できなくするのは良くない」という旨の主張をしてきました。その成果もあってか、特にハイエンド端末では、楽天モバイルを含む大手キャリアの主要周波数帯(バンド)を網羅的に対応する機種が増えてきました。
しかし、Rakuten Turbo 5Gを仕様を見ると、同社の従来からの主張からの“矛盾”を感じざるを得ません。携帯電話(モバイル端末)ではなくてFWA用機器なので、自社ネットワークに特化した仕様にすること自体は責められない部分もあるのですが、自社の通信サービスも封じてしまうのはどうかと思います(この問題はソフトバンクの「SoftBank Air」にも当てはまるのですが……)。
総務省の意見募集時に楽天モバイルが寄せた意見。Rakuten Turbo 5G自体はSIMロックフリーで、携帯電話ではなくFWA端末なのですが、SIMロックに近い効果がある「APNを設定できない」という事実を目の当たりにすると複雑な気持ちになります
現時点におけるRakuten Turboの大きなメリットは、グローバルIPアドレスが付与されるということです。グローバルIPアドレスがないと正常に動作しない一部のネットサービス(特に企業向けVPNサービスやネットゲーム)を使う機会が多いなら、Rakuten UN-LIMIT VIIを使うよりも安心感が高いことは間違いないです。
ただ、それ以外の面では、Rakuten UN-LIMIT VIIとの違いが見いだしづらいのも正直な所です。Rakuten UN-LIMIT VIIであれば、市販のものも含めて、いろいろなモバイルルーターやワイヤレスホームルーターと組み合わせられる上、出張先や旅行先でも利用できます。
ともあれ、どちらも「自社エリアなら容量無制限」をうたっているだけに、それぞれに明確な“違い”のあるメリットを打ち出せるかどうかが1つの試金石になりそうです。
関連記事
最後発のワイヤレスホームルーター「Rakuten Turbo」 死角はないのか?
楽天モバイルが1月から提供しているワイヤレスホームルーター「Rakuten Turbo」。この3月からは店頭での販売を受け付けていますが、この分野で先行する他社と比べるとどうなのでしょうか。その長短を見つめてみようと思います。楽天モバイルの「1日当たりの容量制限」が“こっそりと”撤廃された? 試してみよう
楽天モバイルの「Rakuten UN-LIMIT」では、公然の秘密として「1日当たり10GBの容量制限」の存在が知られていました。しかしこの10月、その制限が突如として撤廃されたとの情報がSNSで流れました。真偽を確かめると共に、その背景を考察してみましょう。5Gホームルーターの「セット割引」と「家族割引」を解説! ドコモ、au/UQ、ソフトバンク、楽天モバイルの違いは?
5G対応のワイヤレスホームルーターが各キャリアから出そろいました。固定インターネット回線代わりに使われることもあり、スマホやケータイの回線との「セット割引」も充実する傾向にあるのですが、条件などが意外と違ったりします。まとめてチェックしてみましょう。緊急時や遠出の際のインターネット回線を「24時間330円」で確保! povo2.0で「非常用ルーター」を改めて作ってみた
KDDIと沖縄セルラー電話の「povo2.0」は「24時間330円」のトッピングで容量制限なく通信できます。以前は一部のルーターでの利用に難があったのですが、それがなくなったようなので改めてpovo2.0を使った「非常用ルーター」の構築を試してみようと思います。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.