「MVNOが停滞している」データのカラクリ 今、格安スマホ市場で何が起きているのか(2/3 ページ)
MMD研究所は4月6日、「MVNO市場の“今まで”と“これから”の話をしよう」と題したイベントを開催した。コンシューマーのMVNO回線シェアは2019年から2020年をピークに下がっているが、実は「カラクリがある」という。パネルディスカッションでは、コロナ禍以降の動向や副回線サービスについての見解も話し合われた。
ユーザーの満足度、利用データ量、ARPUは?
ユーザーのMVNOに対する満足度やNPS(ネット・プロモーター・スコア)も調査している。総合満足度調査でMVNOはユーザーから軒並み高い評価を得ている。NPSについてはahamoが高い。MVNOはユーザーニーズを捉え、ユーザーからの評価も高いが、「競争が激しくなっているので今後の戦略が重要になってくる」と吉本氏は分析している。
「アンケート調査なので、実態とは離れている可能性もある」前置きしながら、契約しているプランのデータ容量とARPUも公開した。MNO、オンライン専用ブランド、サブブランド、MVNOの契約している料金プランのデータ容量と、実際に利用している容量を表にしている。緑色が契約プラン、オレンジ色は1カ月間使っているデータ量を選択で回答してもらったものだ。なお、調査したのが2022年2月なので、ahamo大盛りのデータは取れていない。
最近はデータ無制限や大容量プランが増えているが、メインブランドでも低容量ユーザーはまだ多い。このあたりを契約するユーザーは、MVNOが獲得を狙える層になる。また、大容量プランを提供しているMVNOもある。安く大容量を使いたいというニーズにいかに応えるかがキーとなってきそうだ。
LINEMOに関しては、3GBのミニプランと20GBのスマホプランが、だいたい6:4の割合で契約されており、契約数の多いミニプランはMVNOと真っ向勝負となっている。
サブブランドとMVNOを利用しているユーザーは低容量の需要が高い。吉本氏は「サブブランドを契約したユーザーの中から、キャンペーンが終わるなどして、じわじわ料金が高くなってくる人も出てくる。もっと安くリーズナブルに使いたいという層がMVNOに移行する流れも出てくると思う。スイッチングコストが安くなっているのでMVNOが拾えるのでは」と予想した。
「アンケートで調査するのは難しい」というARPUも公表された。データ通信と通話で1カ月どれくらいの金額を払っているかを調査している。「分からない」という人もいたが、分かる人の回答をもとに金額と利用者の割合を出した。
決算会見などでキャリア自らARPU(1ユーザーあたりの売り上げ)を発表しており、ドコモは2021年度~2022年度にかけて、4600円台~4700円台を維持している。MMD研究所の調査ではドコモが4897円、ahamoが3471円で平均値は4200円程度と近いデータが出ている。
楽天モバイルが自ら発表しているARPUは「エコシステムARPUアップリフト」というプラスαが載っているものになっているので分かりにくいが、0円廃止直後のARPUは1400円強だった。MMD研究所の調査では1721円と少し上振れているが、大きな差はなさそうだ。
さまざまな変化があった2020年と2023年のARPUを比較すると、大手3キャリアは8312円から5150円に。20年当時のサブブランドはY!mobileだけだったが4424円で、現在、UQ mobileも加えたARPUは2468円。MVNOも3771円から1567円に下がった。当時の菅総理大臣の「4割程度下げる余地がある」発言から一気に低価格化が進んだことが、データからも裏付けられた。
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