0円廃止騒動から1年、成長基調に乗った楽天モバイルの動向を占う 新たな懸念材料は?:石野純也のMobile Eye(2/3 ページ)
6月に「Rakuten最強プラン」を導入した楽天モバイルが、ユーザー数やARPUを順調に伸ばしている。秋までに東京23区や名古屋市、大阪市でのKDDIローミングを提供し、エリア品質を向上させる。成長基調に乗った楽天モバイルだが、死角はないのか。“Rakuten最強プラン後”の同社の動向をまとめた。
音声SIMの簡易契約や東名阪ローミングの強化で、さらなる拡大を狙う
楽天モバイルは、こうした新料金プラン導入の勢いをさらに加速させていく構えだ。1つ目の武器は、ネットワークの強化だ。Rakuten最強プランの導入にあたり、楽天モバイルとKDDIは新たなローミング協定を結んだが、その中にあった東京23区や名古屋市、大阪市といった都市部でのローミングは、まだ実施していない。楽天モバイルの代表取締役 共同CEOを務める鈴木和洋氏は、「今、最終の詰めをしている段階で、間もなくこれが始まり、秋ぐらいにはかなりの改善が見られる」と語る。
東京23区や名古屋、大阪などの大都市圏では、当初からKDDIのローミングに頼らず、自前でエリア整備を続けてきた一方で、プラチナバンドを持たない楽天モバイルは、どうしてもエリアの穴があった。ビルの高層階や地下にある店舗など、エリアマップには表れていない“圏外”が残っているのが実態だ。こうした穴を、KDDIのプラチナバンドで埋めることができる。
また、鈴木氏によると、「全国ベースでは継続的に(ローミングを)使用しているが、この中でもパラメーターの変更や設定の変更で改善をしている」という。また、楽天モバイル自身も、プラチナバンドを獲得できるめどが立ちつつある。総務省が、700MHz帯の狭帯域LTEを秋ごろに割り当てるからだ。審査基準では、新規参入事業者に配点が手厚くなっており、仮に他社が手を挙げたとしても楽天モバイルを逆転するのは難しい。
ソフトバンクの代表取締役 社長執行役員兼CEOの宮川潤一氏も、8月4日に開催された決算説明会で、「私どもが取れる確率は非常に低いように思える」とコメント。「この配点だと、楽天(モバイル)が取ることになると思うが、取れたときには素直に『おめでとう』と言って引こうと思っている」(同)と語っている。KDDIの代表取締役社長、高橋誠氏も「審査基準を見たら、楽天にかなり有利だと思った」と率直な感想を漏らす。
楽天モバイルは、秋に割り当てを受けた場合、急ピッチで基地局を整備した上で、2023年末から2024年の年初にプラチナバンドの電波を発射する方針を示している。既存の基地局を活用しつつ、プラチナバンドのアンテナを取り付け、ソフトウェアアップデートにより低コストで展開していく方針だ。
ユーザー獲得やAPRU向上を目指す楽天モバイルだが、その一方でコストの削減も進めている。楽天モバイルは、「外注費用や物流、人件費など、細かなところを積み上げ、テレビCMを少し控えたり、不採算のショップをシャットダウンしたりながら、コスト削減を強力に進めている」(鈴木氏)。楽天グループの代表取締役会長兼社長の三木谷浩史氏によると、「すでに129億円、86%のコストセーブ目標を達成しており、残り21億円の見込みも立っている」という。
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