楽天モバイル「最強プラン」は優良誤認? ソフトバンク宮川社長が懸念を示す
ソフトバンクが4日に実施した2023年第1四半期決算説明会の質疑応答では、競合の楽天モバイルの動きについて、宮川潤一社長に見解が問われた。
ソフトバンクが4日に実施した2023年第1四半期決算説明会の質疑応答では、競合の楽天モバイルの動きについて、宮川潤一社長が苦言を呈する場面もあった。
楽天モバイルは2020年に“第4のキャリア”として新規参入した。参入当初は限定的だった4G LTEのカバーエリアを2年で急速に拡大し、2023年4月時点で4G LTEの人口カバー率は98.4%に達している。ただし、基地局の整備費用は当初の見込みを超えた大きな負担となり、他社の料金値下げにより、加入者数の伸び悩みも見せている状況にある。
そこで楽天モバイルはKDDIとの連携強化を選択した。楽天モバイルはKDDIに対して、エリア整備が進んでいないエリアを補完するローミング協定を結んでいる。この協定の改定により、楽天モバイルが自前で整備する方針としていた東京23区や大阪市、名古屋市もローミング提供の対象となった。ビルの屋内などの整備が困難な場所で、KDDI網を借り受けてサービスを提供できるようになった。楽天はこの協定を受けて新プラン「Rakuten最強プラン」を6月から提供している。
Rakuten最強プランの発表時、同社の三木谷浩史会長は、au網のローミング利用も含めると人口カバー率99%を達成したとアピールしていた。一方で「新しいローミング協定により、可及的速やかにネットワークを構築する必要はなくなった」と基地局整備をペースダウンする方針も示唆していた。
8月4日のソフトバンク決算説明会で記者から「Rakuten最強プラン」についての受け止めを問われた宮川氏は、「今のところ実害はないため、静観していた」とコメント。言葉を選びながらも、優良誤認に相当する恐れがあるのではないかという懸念を示した。
――(記者)ローミング協定を変えて「最強プラン」と名乗っているキャリアがある。コメントを。
ソフトバンク 宮川潤一社長:なかなかお答えがしづらい話なんですが、今のところ実害があるかというと、私どものところはないので、静観していたところです。ただし、やっぱりお客さまに誤認をされるようなものはまずかろうということで、私どもの現場の方が、総務省さんと打ち合わせしています。
プランのお名前を付けられるのはその企業のご自由ですし、他社の話ですから私どもがコメントする立場ではないかもしれませんが、ちょっとなかなか……「しびれるな」という感覚で見ておりました。
700MHz帯を巡って楽天に念押し「電波の有効活用を」
楽天モバイルを巡っては、プラチナバンドに関する動向も注目されている。プラチナバンドと呼ばれる700〜900MHz帯は、ビルや森林などの障害物に遮られづらいため、携帯電話の“つながりやすさ”を確保するために重要な周波数帯とされている。楽天モバイルは、プラチナバンドの割り当てを求めて総務省への働きかけを強めてきた。
再割り当てを巡る議論の中で浮上したのが、「狭帯域プラチナバンド」と呼ばれる帯域の活用だ。700MHz帯の大部分は3キャリアに割り当てられているが、他の無線通信システムとの干渉を避けるために未割当となっている「ガードバンド」と呼ばれる帯域が存在する。このガードバンドの一部を削り、3MHz幅という狭い帯域を4G通信で活用する議論が進められている。
そして、総務省は6月21日に示した狭帯域プラチナバンド帯域の割り当ての指針案を公表した。その審査基準では、複数の通信事業者が提案してきた場合に「プラチナバンドを保有していない」という評価項目の配点の比重が高く設定されている。これは実質的に楽天モバイルを利する審査基準といえる。
この新周波数帯の獲得についての意向を問われたソフトバンクの宮川社長は、獲得競争から一歩引いた立場にあることを明らかにしつつ、楽天モバイルに対して「電波の有効利用の責務をまっとう」するよう“念押し”した。
――(記者)700MHz帯の狭帯域プラチナバンドの割り当てについて。総務省の示した開設計画は楽天モバイルに有利な配点基準となっているが、他キャリアにも獲得のチャンスはある基準となっている。ソフトバンクは割り当てを申請するのか、見解をうかがいたい。
宮川社長:そうは言っても、配点方式を見ますと、なかなか私どもが取れるという確率は非常に低いのかなと思います。
楽天さんが悲願に思われているプラチナバンドの獲得ですから、この配点方式だと恐らく取られることになるかと思いますけども、取られたら「おめでとう」と言って、引こうかなと思っています。私どもが申請するかどうかは検討中ではありますが、確率は非常に低いかもしれません。
ただし、キャリアの先輩としてひと言申し上げたい。プラチナバンドは本当に電波がよく届くので、地方のエリアカバーにおいて非常に有効であります。ですから、全国をくまなく整備されていくのではなないかと思います。それで、楽天さんも頑張られるのであればそれで良しと思います。
一方で、電波の有効利用という通信キャリアという責務がありますから、この責務をまっとうしていただけると期待をしています。「届きやすいから少しの基地局で良いだろう」というのは無しで、獲得したらそれなりにしっかりと設備投資をしていただきたいと考えております。
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