値上げだが、PayPayでお得になるソフトバンク新料金「ペイトク」 ただし“無制限”プランには疑問も:石野純也のMobile Eye(2/3 ページ)
ソフトバンクが大容量を改定し、新たに「ペイトク」を提供する。選択したデータ容量に応じて、PayPay決済時の還元率が最大5%までアップ。一方で「無制限」と銘打つプラン名には疑問も残る。
経済圏とのシナジーをより強固にしながら、データ容量の選択肢を拡大
ただし、メリハリ無制限も廃止にするのではなく、「メリハリ無制限+」に衣替えをした上で継続する。「それでもPayPayを使わないという方もいる。お父さんは使うが、お子さんは使わないという方もいるので、メリハリ無制限+は残した」(同)というのが、その理由だ。PayPayカード割が加わった分、素の料金は187円高くなっているが、後述する容量制限を除けば、ほぼ同様のスペックで利用できる。
こうしたサービスの仕様から、単純に値上げで通信料収入を上げるためというより、PayPayを含めた経済圏の拡大を強く意図していることが読み取れる。「5000数百万というところまでPayPayの利用が進んできたが、そこをしっかり生かしていったところに大きな市場がある」(同)というのが、ソフトバンクグループ全体での狙いだ。
このシナジー効果を加速させるため、10月3日にキャンペーンも開始し、ポイント還元率を各プラン3倍に増加させる。ペイトク無制限であれば、還元率が15%になるため、2万7000円の決済で上限額の4000ポイントを受け取ることが可能だ。寺尾氏によると、PayPayユーザーの平均月間決済額は約3万5000円。「ほぼほぼみんなが最大のポイントを得ることができる」(同)。
ソフトバンクは、メリハリ無制限などの料金プランでも、「ソフトバンクプレミアム」として還元率が大きく向上するPayPayクーポンを配布している。PayPayカードやPayPayゴールドカードで通信料を支払うと、ポイント還元される仕組みも導入済み。さらに、「エンタメ特典」を利用すると、NetflixやHulu、DAZNといったサービスをソフトバンク経由で契約するとPayPayポイントが還元される。既にシナジー効果を出すための取り組みは、導入されていたといえる。
一方で、寺尾氏には、「取り組んでいる内容がうまく伝わっていない」危機感があった。確かに、PayPayクーポンはお得さがある半面、ユーザーが自ら取得する必要があり、見逃してしまえば還元を受けられない。その他のポイント還元も、サービスが分散しているため、トータルでどの程度お得になっているのかが分かりづらい。「料金に(ポイント還元を)組み込むことで、より分かりやすいサービスができるのではないか」(同)と考えたのが、ペイトクの導入に至った経緯だ。
料金自体は上がっているが、寺尾氏は「今までの無制限(メリハリ無制限+)は残しているため、(新規獲得に)マイナスの影響はほとんどないと思う」(同)と語る。無制限プラン一本だった大容量プランに30GB、50GBの選択肢を設けたのは、Y!mobileなどの低・中容量とソフトバンクの無制限が「極端に離れすぎていた」(同)からだ。PayPayとの連携と合わせて「中容量から大容量までをしっかり取れるようにしたい」(同)といい、Y!mobileとの差別化を図る狙いも透けて見える。
関連記事
ソフトバンクが新料金プラン「ペイトク」10月3日提供 PayPay利用で最大+5倍還元に
ソフトバンクが、新料金プラン「ペイトク」を10月3日から提供する。PayPayの利用状況などに応じてポイント付与率や容量が異なる3つのプランを用意。データ容量は30GB、50GB、無制限。ソフトバンク新料金「ペイトク」を徹底解剖 PayPayを使うほどお得だが制限も
ソフトバンクは、SoftBankブランドの新料金プラン「ペイトク」を発表した。10月3日より提供を開始する新プランの特徴は、PayPayで多く決済するユーザーほどお得に利用できることだ。新プランを解剖する。ソフトバンクが大容量プラン「メリハリ無制限+」を提供 200GB超過で4.5Mbpsに速度制限
ソフトバンクが、10月3日から料金プラン「メリハリ無制限+」を提供する。現行の「メリハリ無制限」を改訂したプラン。200GBを超えると4.5Mbpsに通信速度が制限されるが、テザリングは50GBまで利用できる。Y!mobileも主戦場は20GB、楽天モバイル対抗の側面も 新料金プランの狙いを読み解く
Y!mobileの新料金プラン「シンプル2」は、S/M/Lの3本立てにした料金体系は変えず、トラフィックのトレンドに合わせてデータ容量を増加させた。実質値下げともいえるが、割引サービスへ依存度は増している。他社対抗の意味合いも強く、楽天モバイルも意識していることが分かる。ドコモとソフトバンクの“パケ詰まり”対策 明暗を分けた差はどこにあったのか
主に都市部の“パケ詰まり”に悩まされているドコモだが、同じ環境でも、他社は安定した品質で通信できることが多い。特にKDDIやソフトバンクは、SNSなどでも不満を訴える声を見かける機会が少ない。なぜ他社の通信品質は比較的安定しているのか。ソフトバンクが19日に開催したネットワーク品質に関する説明会で、その答えの一端が見えてきた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.