Y!mobileも主戦場は20GB、楽天モバイル対抗の側面も 新料金プランの狙いを読み解く:石野純也のMobile Eye(1/3 ページ)
Y!mobileの新料金プラン「シンプル2」は、S/M/Lの3本立てにした料金体系は変えず、トラフィックのトレンドに合わせてデータ容量を増加させた。実質値下げともいえるが、割引サービスへ依存度は増している。他社対抗の意味合いも強く、楽天モバイルも意識していることが分かる。
ソフトバンクは、10月以降にY!mobile(ワイモバイル)の新料金プランを導入する。S/M/Lの3本立てにした料金体系は変えず、トラフィックのトレンドに合わせてデータ容量を増加させた。割引などはあるものの、その条件が比較的分かりやすいこともあり、プラン名は「シンプル2」と銘打っている。2023年3月時点で契約数が1000万を超えたY!mobileだが、この新料金で勢いに弾みをつける方針だ。
【訂正:2023年9月5日10時15分 初出時、「シンプル2」の提供開始時期を「10月1日」としていましたが、正しくは「10月以降」です。おわびして訂正いたします。】
一方で、割引適用前の“素の料金”を見ると、金額的には値上げになっている部分もある。割引で条件をそろえると、大きな差にはならず、1GBあたりの“ギガ単価”は下がっているものの、お得になるかどうかはユーザー次第だ。この料金体系の狙いはどこにあるのか。ソフトバンクで3ブランドを統括する専務執行役員の寺尾洋幸氏に話を聞きつつ、同社の狙いを探った。
分かりやすい3本立ての料金体系は継承しつつ、データ容量を増量
Y!mobileのシンプル2は、現行プランの「シンプル」と同様、S/M/Lの3本立て。楽天モバイルが導入している「Rakuten最強プラン」のように、使ったデータ容量で自動的に料金が決まるのではなく、ユーザーがあらかじめ使いたいデータ容量を選ぶ仕組みだ。こうしたコンセプトは、Y!mobileがスタートした当初からほぼ変わっていない。段階制の料金プランはシンプルな反面、予想以上に請求が来てしまうリスクもあるからだ。寺尾氏は、「3つのプランにこだわってきた」としながら、次のように語る。
「お客さまには予算やお小遣いがあり、使っているときに予想しない料金にならないようにしたい。(携帯電話の料金プランは)毎月1000円なら1000円、3000円なら3000円と決められるべきだ」
シンプル2でもこの考え方を踏襲しており、遠目で料金表を眺めていると、現行のシンプルから大きく変わっていないように思える。ただし、そのデータ容量は大きく変更している。準音声定額をセットにした「スマホベーシックプラン」を改定し、シンプルを導入した2021年と比べても、ユーザー側のトラフィックが大きく伸びているのがその背景にある。寺尾氏によると、2020年から約3年間で「倍以上にトラフィックが伸びている」という。平均を取ると「Sプランの3GBという数値をはるかに超える形になってきた」。
そこで、シンプル2は、Sプランを4GB、Mプランを20GB、Lプランを30GBに増量。それぞれSプランは1GB、残り2プランは5GBを現行プランに上乗せした。また、データ容量を増やす月額550円(税込み、以下同)の「データ増量オプション」も継続提供するため、よりデータ通信を使いたい人はそれを選択することも可能だ。データ増量オプションで増えるデータ容量はSプランが2GB、M/Lプランが5GB。シンプル2のM/Lプランに関しては、現行の料金プランにデータ増量オプションを組み込んだ容量と同じだ。
寺尾氏は、「データ増量オプションに入ると上限が上がるが、その分だけデータ使用量が上がっていた。データ増量オプションを提供してみて、(データ容量を増やす)ニーズは十分あるが、今までは料金の関係でお客さまが我慢していることが分かった」と語る。一方で、「1カ月間丸々海外に行っていて、使わないのに3000円も取られるのかという方もいる」ため、M/Lプランには、実際のデータ使用量が1GB以下だったときの割引を導入。各種割引適用後の料金が、1078円になるような仕組みも入れた。
現行のシンプルで導入されたサービスだが、料金プラン変更の予約を入れると、データ容量を“先取り”することも可能になる。料金プラン自体は当月適用での変更にはならないが、上位プランとの差分の料金を支払うだけで同量のデータ量をチャージできる。実質的に、プラン変更したのと同じように使えるというわけだ。さらに、「ものすごくARPU(1ユーザーあたりの平均収入)を落とすので、正直僕は反対だった」というデータのくりこしも踏襲。ユーザーニーズが高い仕組みは、基本的に引き継がれている。
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